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第101話 ターニングポイント4
しおりを挟む俺が静香さんを選ぶと宣言した瞬間、黒瀬と鳥丸の表情が一変した。二人とも、まるで世界が終わったかのような落胆の目を俺に向けてくる。
黒瀬はスッとラーメンの丼を押しやり、ため息をつきながら冷たく呟いた。
「……期待して損をした。お前にはもっと見込みがあると思っていたが、結局は凡庸な選択肢に逃げたか。」
――いや、ハーレム王の選択を凡庸って言うなよ!心の中で反論したくなるが、黒瀬のその冷たい視線に、俺は思わずたじろいでしまう。
一方の鳥丸は、俺をじっと見つめたまま、ふと目を閉じて首を振った。
「雷丸君……。君がハーレム王として、もっと大きな夢を抱くかと思っていたよ。巨万の富を手に入れることができたというのに……あぁ、なんともったいない……」
――なんだよ、それ!?勝手に期待して勝手にガッカリすんなよ!俺には俺の道があるんだって!!
二人の落胆の目が俺に重くのしかかる中、静香さんは未だに嬉しそうにしているし。――いや、何だこの妙な空気!
「……まぁ、いいさ。これからもせいぜい、その選択肢で頑張ってくれよ、飯田雷丸。」
黒瀬は軽く肩をすくめ、ため息をつきながら立ち上がった。
鳥丸も、「君の選択は尊重するけど……私が望んだ道ではなかったようだね」と残念そうに言いながら、席を立って行った。
――俺の選択が、こんなにガッカリされるとは思ってなかったんだけど!?
俺は静香さんを選んで、ハーレム王として堂々と宣言したけど――なんだろう、この微妙な胸の痛みは。
黒瀬と鳥丸、あの二人が店を出て行く姿を見送って、なんか心がキュッと締め付けられるような気分になっていた。
――結構仲良くなってたんだよな、あの二人とは。まぁ、考え方は違えど、なんだかんだで一緒に時間を過ごして、少しずつお互いを理解してきた気がしてた。
黒瀬は確かに冷たいヤツだけど、理論的で真剣に物事に取り組んでる姿勢はカッコよかったし、鳥丸は鳥丸で、やたらとテンション高いけど、根は悪いヤツじゃないんだよな。あのふざけたテンションの裏にも、何か真摯なものがあるのは感じてたし……。
「雷丸君、大丈夫?」
静香が心配そうに尋ねてくる。俺は、ちょっと笑ってごまかした。
「あぁ、いや、なんでもねぇよ。ただ、なんかさ……ちょっと心が痛いっていうかさ……」
すると静香はニヤリとしながら、「ふふ、仲良くなりすぎたんじゃないの?あの二人と」と冗談めかして言ってくる。
「ま、まぁな……。でも、なんかこう……あっさりさよならするのも、寂しいっていうかさ……」
――いや、こういうのって普通の別れじゃなくて、もっと熱く、絆を感じるものじゃないのか?勝手に俺の中で期待してたのかもしれないが、やっぱり友情って複雑だよな。
静香さんは俺の気持ちを察したのか、優しく微笑んで言った。
「雷丸君、あの二人もきっとあなたのことを忘れないわ。これから先、どこかでまた道が交わるかもしれない。その時、今日のことが無駄ではなかったと、きっと気づくはずよ。」
――そうか。もしかしたら、またあの二人と分かり合える日が来るかもしれない。俺はちょっとだけ元気を取り戻して、最後にラーメンをすすった。
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