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第102話 ターニングポイント5
しおりを挟む帰り道、俺は完全に静香さんの「張り付き攻撃」をくらっていた。何だこれ!?まるで接着剤でも塗られたかのように俺の腕にべったりだし、ずーっと顔を見つめてくる。おい、静香さん、頼むから前を見てくれ!道をちゃんと見ないと、車に轢かれるぞ!
「本当に私を選んでくれてありがとう、雷丸君」
静香さんが言うたびに、その瞳はキラキラどころか、もう完全にハートマークに変わってる。おい、これ漫画か?リアルでそんな目をする人間がいるとは思わなかったぞ!現実って、こんなに夢みたいなこと起きるのかよ?
「黒瀬につけば総理大臣の後継者としての名声が手に入る。鳥丸につけば、大富豪としての富が得られるのに……それなのに何も無い私を選んでくれた……」
おいおい、名声とか富とかそんなの俺、全然気にしてねぇから!むしろ、今このべったりな状況の方が気になるんだよ!完全にハーレム王としての試練が始まってるんじゃねぇのか、これ?
歩きながらも、静香さんは俺の顔ばかり見つめてる。目をそらしてくれよ、恥ずかしいって!それどころか、夢見る乙女みたいな顔で、甘い声をささやいてくる。
「雷丸君、私にはあの二人のようにあげられるものは無いけれど、せめて私の身も心も、全て貴方に捧げるわ……」
あの、マジで勘弁してください!心臓が爆発しそうだし、背中に冷や汗がじっとりと染みてきてるんだぞ!?しかも、静香さん、どんどん顔が近づいてくるじゃねぇか――
「もう……貴方のことしか考えられないのよ……」
おいおいおい、マジで目がハートじゃねぇか!冗談だと思ってたけど、こんなにリアルに迫られるとどう反応していいか分からねぇ!
「し、静香さん……あの、ちょっと離れても……?」
「ふふ、離れたくないわ……ずっと一緒にいたいの……」
やべぇ!これ完全に俺、静香さんに食べられちまうんじゃねぇのか!?このままだと俺、ハーレム王どころか静香さんの餌だぞ!やべぇ!逃げ場がねぇ!助けて、誰かーーー!!
俺は心の中で叫びながらも、ハート目の静香さんに圧倒されながら、帰り道を歩くしかなかった。
――――――――――――
――俺はただ、静香さんに「こっちの道の方が近道よ」と言われて、素直についてきただけだった。
なのに、今目の前に広がってるのは……
「えーと、静香さん……」
「あら、どうしたの?雷丸君。」
「いや、なんか……この道、ホテル街じゃねぇか?」
そう、目の前に広がるのはズラリと並ぶラブホテル。色とりどりの看板が輝いていて、あまりにも派手すぎる景色が俺の目に飛び込んできた。なんでだよ!?こんなところに来る予定じゃねぇだろ!
「え?えええ!?ここ、絶対家じゃねぇよな!?いや、絶対違うよな!?こ、これは!?」
完全に混乱している俺をよそに、彼女の目はキラキラと輝いていて、妙に色気があふれている。
「どうしたの、雷丸君?気になるの?」
「気になるも何も!ここラブホテルだらけじゃないっすか!?いやいや、さっきのルート説明、何か間違ってますよね!?」
焦りまくる俺に、静香さんは一歩、また一歩と近づいてくる。そして、その顔はまるで何かを企んでいるかのように、妖しい微笑みを浮かべていた。
「もう、我慢できないのよ。気持ちが昂って。貴方にご奉仕したい気持ちでいっぱいなの」
「な、な、な、なんだってぇぇぇぇ!?!?」
完全にパニックだ!なんだよ、この状況!?さすがのハーレム王でも、この状況はさすがに対応しきれねぇ!
「いやいやいや、ちょ、ちょっと待ってください!待て待て待て!昼間!まだ真昼間ですよ!!??」
俺が焦りまくって後退る中、静香さんはさらに一歩、また一歩と優雅に近づいてくる。しかも、妙にセクシーな微笑みを浮かべてる。
その視線はすでに俺を獲物と見ている。もう逃げ場はねぇ……!
「さぁ、雷丸君……私に任せて」
「ええええええええ!?誰か、誰かこのハーレム王を助けてくれーーーー!!」
――――――――――――
俺たちがホテルから出たときには、すでに外は真っ暗だった。
静香さんに喰われました、はい。
いや喰われたというより呑まれたと言うのが適切だ。アナコンダだ。
スマホを取り出して確認してみると、着信件数は――
「着信252件!?三桁!!?」
雪華、焔華、貴音、麗華……。全員からの心配の嵐だ。当然だよな。俺がいきなり行方不明になってたんだから。
「やっべぇ……完全に報連相ミスった!」
俺、完全にハーレム王としての義務を忘れてた。報告・連絡・相談、全部抜け落ちてたぞ……。
一方で、静香さんはというと、満足そうに俺の腕にすり寄ってきてる。「次はもっと積極的にお願いね?」って囁いてるし……。もう、どうしたらいいんだよ!!
「ま、まずは……雪華たちに連絡しないと……」
スマホを握りしめながら、俺は深呼吸した。次のバトルは、ハーレム王として、失態をどう挽回するかってやつだ。
焦りながらスマホを確認していると、遠くから何かが猛スピードで走ってくる音が聞こえた。
「お兄ちゃああああん!!」
え?……貴音?まさか、こんなタイミングで?
次の瞬間、涙を溜めた貴音が俺の方に向かって駆け寄ってきた。しかも、超ダッシュだ。
「お兄ちゃん!!無事だったんだね!!怪我してない!?大丈夫!?!?」
貴音はそのまま俺に飛び込んできて、泣きながら俺の胸に顔を埋める。
「うわぁーーん、お兄ちゃん!!心配したよぉぉぉお!!」
俺はその突然の攻撃に対応するため、急いで貴音を抱きしめる。
「あ、あぁ、大丈夫だよ、貴音。俺、無事だから……」
とりあえず、貴音を安心させることが先決だ。俺も体はボロボロだけど、彼女を安心させなきゃ……と、思ったその時。
……ん?
貴音の抱きつく力が、突然ピタリと止まった。え?なんで急に静かに?
俺の胸に顔をうずめたままの貴音が、ゆっくりと顔を上げて俺を見つめる。その目は、さっきまでの涙目とは完全に別物だ。
「あ、貴音?」
その時、貴音の視線が――俺の首と顔にある、大量のキスマークに向いた。
「……え?」
彼女の視線は次に、俺にべったりくっついて甘えた声でささやく静香さんに移り、そして――
最後に、俺たちが今まさに出てきたばかりのラブホテルの派手なネオンを見つめた。
貴音は静かに、そして非常に無言で、俺を真顔で見つめる。
――完全にフリーズしている貴音。
「あ、あの……貴音?これには深い事情が……!」
「……お兄ちゃん?」
貴音の声が、冷たく低いトーンに変わった。
「……私達が死ぬほど心配してお兄ちゃんを探している間、何してたの?」
「いや、その、これは違うんだ、ほんとに違うんだよ!?」
「……静香さんと、何してたの?」
完全に冷えた空気が漂う。俺はもう説明する間もなく、完全に貴音の修羅モードが発動するのを感じた。
「あ、あの……その……」
まるで氷点下に突っ込まれたかのような静寂。ラブホテルのネオンが、妙に派手に見えるのが痛いほどわかる。俺はもう逃げ場がない!
「お兄ちゃん、後で、話し合おうね。」
「ひぃぃ……!」
――完全に積んだ。
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