王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第三章 戴冠式は波乱含み

61.経過報告

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ディオに求められるまま抱き、いっぱいその身を堪能して寝かしつけた後、身を清めてガウンを着せて、そっと腕の中へと閉じ込める。

やっと俺のだと皆に言えると思ったら、嬉しくて仕方がない。
そんな俺にディオの暗部が珍しく声を掛けてきた。

「ルーセウス陛下。王配となった貴方に改めてご挨拶させていただきます」

その暗部はシグと名乗った。
どうやらディオの筆頭暗部らしい。

(それにしても、王子じゃなく陛下って呼ばれるなんて思わなかったな)

でもディオの伴侶として認められたようで嬉しかった。

「宜しく頼む」
「はい。んじゃ、挨拶は終わったんで、いつも通り話させてもらいます!」

ニカッと笑って急に軽い口調に変わられたが、どうやら普段はこちらが標準仕様らしい。

「取り敢えず現時点で判明したアレコレを報告書にまとめてきたので、朝起きたらディオ様に渡しておいてほしいっす。朝のイチャイチャに割り込んだらナイフが飛んできそうなんで、宜しくお願いしますね!」

そう言って結構な量の紙束をバサッと渡された。

「これ、全部ディア王女の件か?」
「いえ。ニッヒガングの襲撃の件。ミラルカのブラン皇子の企みの全容。バロンのディア王女拉致に至るまでの件。後はそれぞれの国内事情とか含めての報告っす。よかったらルーセウス陛下も目を通してください」

もう身内だしガンガン目を通して構わないですよと言われたから、俺も一通り目を通してみる。

「…酷いな」

ニッヒガングは完全な逆恨みだが、亡くなった王弟ヴィレの配下達がこちらに復讐のため来ていたらしい。
他の王弟達は様子見も兼ねて水面下で探り合いもしているようで、国内は荒れているようだ。
残党は今回戴冠式に参加しているニッヒガングの外務大臣が密かに匿っているようで、この後どうすべきかはディオの指示待ち状態の様子。

ミラルカのブラン皇子の方は、鉱山ホテルの一室を密かに改装して監禁部屋を作っていたと書かれてある。
ベッドに鎖をつけて、媚薬やら好みの下着やらを用意していたんだとか。
孕ませて結婚に持ち込む気満々だったらしく、城の自室の隣には既にディア王女の好みに合わせた皇太子妃の部屋まで用意していたらしい。
これは明日ディオだけじゃなくディア王女も怒り狂いそうだ。

バロンの方はと言うと、ニッヒガングが王弟ヴィレ始め軍務卿やら商人達がディオに粛清されていたのと同様に、ニッヒガングと組んでいた王と第一騎士団長が時を置かずして病死。それを受けて第一王子が近衛騎士団長に相談したのが事の発端のようだ。
国王の喪に服すためバロンは今回の戴冠式には出席していないようだが、暗部を放って一矢報おうとしていた様子。
そこへ偶々ブラン皇子に攫われそうになっていたディア王女を発見。
拉致に至ったと言うことらしい。

ちなみにバロン国の国王の葬儀にうちは出ていない。
ディア王女から、ニッヒガングの情勢も良くないから念には念を入れてお悔やみ状だけで済ますべきと言われ、父はそれを受けてニッヒガング国とバロン国の状況を調べさせて、結局行かない方向に決めたという経緯がある。

でもその時でも戦争になりそうな気配はなかったようだから、余程上手くディオが指示を出していたんだろう。
本当に頭が下がる思いだ。

(守りたいのに守られてるっていうのが悔しいな)

もっと頼られるくらい成長したい。

「んじゃ、ディオ様のこと宜しくお願いしますね?」

そう言って下がっていったシグを見送り、そっとディオを抱きしめる。

「俺よりも年下なのに、もうこの両肩に国を背負ってるんだよな」

俺の腕にすっぽり収まるくらいの身体で、その表情はまだまだあどけなさが抜けきらない。
なのにもう王としての重責を負わされたのだ。
出来るだけ支えてやりたい気持ちがより一層強くなる。
庇護欲が掻き立てられて居ても立っても居られない。

「うん。絶対側にいよう」

ダメだと言われても絶対に説得してみせる。
そう強く決意しながら、俺はスヤスヤと眠るディオの頭をそっと優しく撫でたのだった。




そして翌朝────。

「朝よ!ディオ!起きて!」

昨日のしおらしさは吹き飛んで、すっかり元気になったディア王女が部屋へとやってくる。

「ん…ディア?」
「ちょっとディオ?!どどど、どうしたの?!」
「え?」
「首周りが凄いことになってるわよ?!」
「あ…」

思い当たる節があり過ぎて、思わずそろっと目を逸らす。

「ルーセウス…?」
「いや、その、な?抱き潰していいって言われたから、つい…」

抱き潰しにかかるとついついキスマークをつけまくるクセが出るのをすっかり忘れていた。
見えてるのは首筋だけだけど、割と身体中につけまくった気がする。
もう夫婦だって周知されたしいいかって感じで、どこかでリミッターが外れてしまったようだ。

「ディオが好き過ぎてついついつけ過ぎた!今度からはもう少し自重するから、許してくれ!」

先手必勝。
潔く謝ろう。

「はぁ…しょうがない。ディア。首周りだけでも隠したい。コンシーラーを貸してくれないか?」
「いいわよ。全く覚えたての猿じゃないんですから、ルーセウス王子にはもうちょっと自制してほしいですわ」

その言葉に『おや?』と思う。
最近は割とディオと話す時のように素を見せることが多くなっていたのに、わざわざ丁寧な口調に戻して何かを誤魔化した気がしたのだ。

もしかして昨日の事を思い出させてしまったんだろうか?
昨日の今日だし、彼女に閨を連想させるような姿を見せたのは失敗だったかもしれない。

「じゃあすぐに取ってくるわね」

ディオにそう言ってディア王女はあっさりと部屋を出ていく。
その姿を見送って、俺はディオへと口添えすることに。

「ディオ。昨日の件、ディア王女は傷ついてると思うから気にかけてやってくれるか?俺よりディオの方が安心できるだろうし、頼む」
「勿論。昨日ディアの暗部達にも様子を見ておくよう伝えておいたから抜かりはないよ。何かあればすぐに連絡が入るはずだ」

そう言ってベッドから降りるディオにチュッとキスをして、昨日シグから受け取った報告書の束を忘れないうちにと手渡した。

「これ、昨日ディオが寝た後にシグから預かっておいた。一応目を通させてもらったが、よかったか?」
「別に構わないよ。シグもルーセウスも見るべきと判断して渡したんだろうし」

そうじゃなければわざわざ手渡したりはしないと言ってくれる。

「……これ、ディアは知ってるのかな?」

ざっと目を通して、幾つか暗部に指示を出し終えたディオが不意にそんな事を言ってくる。

「ブラン皇子の件か?」
「そう。昨日の件と合わせて、下手したら半殺しにしかねないなと思って」
「ディオ的にはどうする気なんだ?」
「え?去勢…かな?」

冷たい声でサラッと怖い事を聞かされて、ひゃっと思わず股間を隠したくなった。
とても他人事とは思えない。

「まあそこまでしたらミラルカから恨まれそうだし、レオナルド陛下の顔を立てて、廃太子で手打ちかな。ローズマリー皇女を皇太女に指名してもらうことができればもうこっちにゴリ押しもしてこないだろうし」
「なるほど」

どうやら冗談だったようでホッとした。
落とし所として、ブラン皇子の皇太子としての地位を剥奪してもらうようこれから交渉するということのようだ。

言ってみればバロン国がディア王女を攫って痛めつけたのであって、ブラン皇子の罪はと言うと王女誘拐と凌辱未遂だけだ。
衣服を剥ぎ取った点から考えて、そこは免れないはず。
そう考えれば廃太子でも厳刑と言えるのかもしれない。

でもそれでディア王女は納得するんだろうか?

「ディアがもしその処断は甘いって言うなら、他にも候補はあるし、一応聞いては見るけど」
「へぇ。どんな?」
「強制労働として、うちの変態騎士達の指導に三年間従事。ルーセウスには変態化しないけど、あの騎士達は本当に懲りないから十分罰になるんじゃないかって思うんだ」
「さっきより随分優しい罰だな」
「いや。これは正直泣きたくなるくらい嫌な罰だ。俺なら一日で逃げ出したくなるから、三年なんて言われたら絶望しかない」
「そ、そうか?」

ディオがコクリと頷く。

「後は一番厳しい暗部育成施設に強制的に放り込むとか。あそこはスキルを得るまで外には出れないし訓練も凄く厳しいから、ある種幽閉と強制労働を兼ねた形の罰になると思う」
「え?!すっごい楽しそうだな?!ただで使えるスキルを得られるなんて最高じゃないか?!」

全然罰になってないぞと思ってそう言ったけど、そう言える俺の方が変わっているらしい。
そこの施設は、あまりの厳しさに途中脱落者が後をたたないそうだ。

「勿体ないな。折角の修行の場を有効活用しないなんて」
「ルーセウスが規格外なだけだから、一緒にしたら可哀想だ」
「そうか?」

自分では普通だと思ってるが、ディオから見ると違うらしい。

「逆にルーセウスが考える相応の罰は?」
「んー…やっぱり二度と悪さができないようにどこかに幽閉するか、ディア王女が受けた恐怖を追体験させるか、その辺りじゃないか?」
「そっちの方が罰が軽い気がするけどな。ただの幽閉だと休暇を与えたようなものだし、追体験はアリかもしれないけど、ブラン皇子はちょっとMっ気があるから、下手をしたらご褒美になりかねないと思う。一番有効そうなのはロキ父様の調教だけど、カリン父様との新生活に浮かれてる今話を持ち込んでも、片手間に終わらせられるか、全く聞いてもらえない可能性の方が高いと思う」
「そうか」

厳刑と言ってもなかなか難しい。
かと言って他国の皇太子を去勢したら、そっちの方が問題視されてしまいそうだし、困ったな。

「あ、そうだ。それならうちの父に相談してみたらどうだ?詳細を伏せて聞いたら案外無難な落とし所が聞けるかも」
「なるほど」

早速思いついたままツンナガールで父へと相談したら、ニッヒガング国なら鞭打ち刑、バロン国なら爪剥ぎ刑、ゴッドハルトなら馬引きの刑かなと言われた。
ちなみにブルーグレイなら即死刑じゃないかと言っていた。
どこも結構シビアだ。
王族にも容赦がない。

「へぇ。勉強になるな」

ディオもこれには興味津々だ。

「ちなみにガヴァムの法では何か決まってないのか?」
「うちはロキ父様の気分次第で刑も変わるから、その辺が曖昧なんだ。あの人は殺すより甚振った方が反省するよって言って、結構酷いドS調教をして変態を量産してたから、あんまり参考にならない」
「そ、そうか」

それは確かに真似できそうにないな。

「それ以前もガヴァムは『王の意思は神の意思』とか言われてたみたいで、絶対的に王の意見が通ってたみたいなんだ」

どうやら元々少々特殊なお国柄だった様子。
法の整備についてはこれからしっかりしていかないとダメみたいだ。
ディオの苦労が忍ばれる。

「取り敢えずディアの意思を尊重して決めようか」

ここはやっぱり被害者の意見が一番大事だということで結論を出し、サクッと身支度を整え、ディア王女が戻ってくるのを待つ事にした。


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