王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

文字の大きさ
63 / 105
第三章 戴冠式は波乱含み

60.※パーティーの後で Side.ディオ

しおりを挟む
暗部にディアの様子をしっかり気にかけておくよう指示を出しパーティー会場へと戻ると、そこは特に問題なく、変わらぬ光景が広がっていた。
それもこれも迅速にディアの救出が行われた故のことだ。
ルーセウスには感謝しかない。

ブラン皇子が挨拶に来た際にすぐさまおかしいと気づき、後を追ってくれた。
ディアが攫われたと気付いた後も、俺には思いつかなかった場所を指摘し、且つ見つけ出すのにも力を貸してくれた。
これほど早くディアを見つけ出し、救出できたのはルーセウスのお手柄以外の何ものでもないし、そんなルーセウスにディアが惚れてしまう気持ちもわからなくはない。
誰だって惚れるだろう。
あんなに頼りになるルーセウスに惚れない方がおかしい。

だから────正直カリン父様が言っていた結婚して初夜を済ませるまで会うなという話には心臓が凍りつくかと思った。
だってそんな事になったらルーセウスの心が離れていく気がして怖かったんだ。

双子の兄妹だから、万が一にでもルーセウスが惹かれないとも限らない。
俺と会わず、ディアとだけ過ごし、結婚して初夜を迎えて────どうして心変わりしないと言い切れるだろう?
定期的に顔を合わせていれば大丈夫かもしれないが、そうでないならどうやってその心を掴み続けられる?

そう思ったからこそ俺はカリン父様の言葉をいかに回避するかを即考えた。

カリン父様は裏の皆からそんなによく思われていないし、ちょっと頼めばフォルティエンヌの屋敷に強制移動させられる。
後はロキ父様に丸投げすれば軟禁状態の完成だ。
それでいこう。
文句は言わせない。
その為にこの日での発表が必然だったのだから。

誰に憚ることなくルーセウスが俺のものだと周知できる日。
それが今日だったのに。

俺がニッヒガング国とバロン国の二国を抑えきれなかったせいで、ディアを危険な目に合わせてしまった。
今回は間に合ったものの、自分が情けなくて嫌になる。

(……反省して次に活かさないと)

まだまだ半人前なのだと実感した事だし、ディアにちゃんと謝って、次の手もしっかり打とう。

自信喪失しそうなそんな中でも前を向けるのは、隣にルーセウスが立っていてくれるお陰だ。
大丈夫だと…そう言ってしっかり支えてくれるルーセウスは、俺の中でもうなくてはならないほど大きな存在になっていた。


***


「はッ、んぅっ…!」

パーティーを終え部屋に戻ったら、どちらからともなく唇を重ねて、そのまま夢中で口づけ合う。
俺はディアに取られるかもしれないという不安からだったけど、ルーセウスの瞳にあるのはひたすらに俺が好きという感情ばかり。
こういうわかりやすさが、どこまでも俺を安心させてくれる。

「はぁ…ルーセウス」
「ディオ。可愛い」

ついうっとり見つめていたら、そんな言葉が返された。
俺を可愛いなんて言えるのはルーセウスだけだ。
暗部のシグも『油断したらグサッと刺してきそうなディオ様に、よく言えますよね』とかなんとか言っていたっけ。
俺がルーセウスを攻撃するはずがないのに、失礼な話だ。

「今すぐ抱きたい」
「ふふっ。立ったまま?」
「それもアリかも」

少し心に余裕ができて笑って答えたら、あっさり頷かれてしまう。

「ディオが俺にすっぽり抱かれて、腕の中で溺れてるのを見るのも可愛くて好きだ」
「……それは、もう堕ちきってる時だろう?」
「堕ちきる前の誘い受けも大好物だな」
「つまり?」
「どんなディオも全部好きってこと」

『だからこのまま抱きたい』と甘く誘われて、断るなんて選択肢は俺にはなかった。

「ルーセウス。もっと俺に堕ちきって、余所見なんてできなくなって欲しい」

ディアに心奪われないで────。
そんな思いで囁くと、クスリと笑われ『とっくにディオに堕ちきってるから、何も心配しなくていい』って言ってもらえた。

「ディオは自分の価値をわかってないな」
「んっ、はっ…」
「取られるかもって心配するなら、それは俺の方なのに」

婚約者候補が沢山いて、国としてもずっと大きくて、ついでに即位したから権力も増した。
見目もいいし知も武も兼ね備えてるのに、どうしてそんなに自信がないんだと優しく笑って言われるけど、そんなものは無意味なんだと言いたくなる。

「でも…」
「ロクサーヌ嬢が原因か?俺は絶対に離れていかない。俺の執着心が人一倍強いのはディオが一番知ってるだろう?」

俺を手に入れる前も手に入れた後も、ずっとルーセウスは変わらなかった。
ずっと俺だけを見て愛してくれている。

「身も心も完全に俺に堕ちきってるのにそんな不安にさせたなら俺の落ち度だな。不安になる隙なんてなくなるくらい、もっと愛したい」

ルーセウスはそう言って俺の服を剥いでいき、弱いところをゆっくりと撫で上げて、俺から官能を引き出していく。
そして耳朶を喰みながら耳元で甘く愛を囁いてくれる。

「ディオ。愛してる。俺が好きなのはディオだけだ」
「んっ…ルーセウス」
「不安なんて消し飛ぶくらい、今日もいっぱい溺れような?」
「ふ…ぁ…っ」

思考がゆっくりと溶けていく。
不安もそれと共に霧散して、ルーセウスの愛に包まれ全ての責務から解き放たれるように身も心も丸裸にされていく。
簡単に言ってるように聞こえるかもしれないが、こんなことができるのはルーセウスだからこそだろう。

「んぅ…ルー。早く挿れて…」

腰を抱かれ、少し持ち上げられながら胸を舌で転がされ、後ろをグチュグチュかき混ぜられるもどかしさに、おねだりの言葉がこぼれ落ちてしまう。

「んー…もうちょっと」
「アッアッ…!」

敏感に育てられた胸の突起が刺激を受けて甘い痺れに襲われる。

「このまま胸でイかせたいけど…」
「焦らしたら、やだ…っ」
「やっぱり可愛いからすぐ挿れたい」
「あっ、ルーセウス…」
「今日は俺も早く繋がりたいから、挿れてもいいか?」

嬉しい。
早くルーセウスと繋がりたい。

「早く、いっぱい擦って、奥もグズグズになるまで可愛がってっ」

そう素直にねだった途端、ルーセウスは俺を持ち上げピタリと俺の後孔の入り口へと熱杭を押し当てて、口づけながらググッと中へと入ってきた。

「んぅううっ!」

自分とは違う熱を感じながら、それがたまらなく愛おしくて思わずキュッと締めつけてしまう。

「ハァッ…ディオ。こんなに俺を欲しがって。好き好きって言ってくれてるみたいですごく嬉しい」
「ルー…」
「その表情も、ふっ、すごく可愛い」

チュッ。

「あっ、ルーセウス…」

立ったまま繋がってユサユサと揺さぶられ、気持ち良いところを何度も擦り上げられ、気持ち良くて幸せな気持ちに満たされていく。

「あ…あぁ…。ルー…っ」
「ディオ。可愛過ぎだ!」
「あぁっ!そこ、イイッ!気持ちいいっ!」
「中が熱くて…ヤバい。やっぱりベッドでシたくなってきた。これじゃあ足りない。ディオ。ディオがもっと欲しいからいいよな?」

ルーセウスは待てないって抱こうとする割に、足りないって言ってすぐにベッドに攫っていくからちょっとそこだけは困るんだ。
だって────いつもそのまま移動されるから。

「一回抜いてっ、ルーセウス!お願いだからっ!」
「今日もちゃんと奥に嵌まらないよう気をつけるから、大丈夫」
「良過ぎてダメなんだっていつも言ってるのに…っ、んぅうっ!ひゃっ、あっ、気持ちいっ!好きっ好きっ!そこ、ダメッ!すごくイイッ、からぁ!イクッ、イクッ!我慢できないぃっ!あぁっ!」

なんとか我慢しようとするけど、そのまま追い上げられてイかされた。

「あ…やぁ…っ」
「本気でたまらなく可愛い」

チュッ。

そしてそのまま嬉しそうにベッドまで運ばれて、息も絶え絶えに思い切り愛される。

「ディオ。実はさっきいい事を考えついたんだ。だから明日また相談させてくれ」

どうせ今は何を言っても頭が回らないだろうから明日でいいと言われたけど、確かにこの状況で言われても何も判断出来そうにない。

(いい事ってなんだろう?)

ふとそう考えた途端、膝立ちになってるルーセウスに腰を引き寄せられて奥を一際強く突き上げられた。
仰向けになってる状態で腰だけ逃がさないとばかりにしっかり掴まれ、奥をゴツゴツと突かれて身体がもっとと求め始めてしまう。

「ぁんっ!ふぁっ!ルーっ、ルーっ!そこっ、ダメッ!ぁんっ!」
「ダメ?本当に?」
「良過ぎてダメ…っ!早く奥までハメてっ!」

今日もいっぱい、孕むほど子種を注がれたい。

(夢で見たように、ルーセウスの子が本当にできればいいのにな…)

「くっ…すごいなディオッ。メチャクチャ食い締めてくる…っ」

望み通りにハメてやると男らしく笑い、ルーセウスの動きが速く、力強くなって、最奥をこじ開けにかかる。

「あっ、んん────ッ!」
「ディオ…俺のディオ」

潮を噴き出し放心する俺に、ルーセウスのご機嫌な声が降ってくる。

「もう誰憚る事なく夫婦になれたんだ。これからは一切隠さなくていいし、もっといっぱい愛し合おう?ディオは俺の正妃だって、皆にしっかりアピールして、もう不安になんてさせないからな」

そしてもっと俺が欲しいとばかりに求められ、熱い子種が奥へと注がれた。
俺との子作りセックスが好きって言いながら優しく腹を撫でてくるルーセウスを見て、俺が子を作ってやれたらいいのにと胸が痛む。

(ディアなら産んであげられるのに…)

双子なのに、ディアにはできて俺にはできない。
それが悲しかった。

「ディオ?」
「なんでもない。ルーセウス。もっと」
「明日もあるのに、寝なくていいのか?」
「今日は気絶するまでルーセウスに愛されたい気分なんだ。だから…抱き潰して?」
「ディオッ!」

ルーセウスが眩しいくらいの笑顔で俺を抱き寄せ、愛おしそうに真っ直ぐに愛情のこもったキスをしてくれる。
真っ直ぐに注がれる愛情に包まれて、さっきまであった不安やモヤモヤした気持ちが霧散していく。

「ディオは色々考え過ぎるからな。今日は色々あったし特にだろう?俺がきっちり寝かしつけてやる」

それからルーセウスの手で何も考えられないくらい蹂躙されて、俺は身も心も深く満たされながら意識を手放した。



****************

※『夢で見たような────』のお話を閑話で次に上げる予定ですが、時系列的に三章に入る前になるので、二章のラストにくっつける形でアップしようと思います。
前後して申し訳ありませんが、宜しくお願いします。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...