仮想空間に探偵は何人必要か?

崎田毅駿

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7.紆余曲折

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  3.その種目は次の東京五輪でも実施される予定ですか?-ノー


 四番手の螢川は、前の質問をした者に感謝した。
(誰だか知らないが、これはグッジョブ&ナイスアシストだ。恐らく問題を決めたのは桐生だろう。マイナーどころを狙うあまり、墓穴を掘ったな。一気に絞り込めた)
 螢川は頭の中で知識のページを繰った。
 彼に限らず、この大会に参加する選手は探偵の才能、それも推理ゲームでの探偵として活躍できる能力に長けている。言い換えればクイズマニアではないため、知識は基本的には広く浅くだ。それでも東京五輪で実施予定の競技なら、おおよそ頭に入っている。
(今じゃ行われなくなった競技で有名なのは綱引きだけど、個人競技じゃない時点で違う。他には確か、いかにも英国らしい競技があったはず。ポロやクリケットやラクロス……しかし、どれもこれも団体競技だよな?)
 分からなくなってきた。表情から笑みが消える。
(個人競技で、本当にあるのか? ちくしょう、思い付かない)
 一転して質問に窮した螢川。仕方なしに、第一戦で使われた質問のフォーマットをそのまま持って来た。


  4.出題の競技種目を決めたのは桐生さんですか?


             *           *


  4.出題の競技種目を決めたのは桐生さんですか?-イエス


 順番が再び巡ってきた馳千波だったが、正直言って困惑していた。
(途中まではいい感じに絞り込めていたのに、どうしてこんなことに)
 質問が思い付かない。かといって、解答しようにもこれまでに挙がった条件に沿う競技を、馳は知らなかった。
(どうしたらいいんだろう……。無関係な質問は即失格の恐れもあるのよね。前例がある。かといって、これまでの質問の答と相反するような質問をしちゃうのは嫌。自分が馬鹿に見えてしまう)
 メモした質問と答を見直し、考える内に、何がなんだか分からなくなってきた。
(純粋に知識の問題よ、これは。でも、桐生君はそんなマイナー競技を知っていたの?)
 信じられないという思いが強まる。
 結局、彼女が絞り出した質問は、微妙なものになった。


  5.その競技は一対一で競いますか?


             *           *



  5.その競技は一対一で競いますか?-ノー



(えっ、個人競技なのに一対一で競わない?)
 高田は一瞬、質問と答の意味が飲み込めなかった。それだけここまでの成り行きに動揺していたと言えるかもしれない。少し時間を取って、理解できた。
(ああ、そっか。一度に競う種目なんていくらでもあるんだった。マラソンしかり、競泳しかり。こんなことではだめね。頭を切り替えなくては)
 自らの頬をぺちぺちと叩く。それで妙案が浮かぶものでもなかったが、とにかく質問を積み重ねようと心に誓う。
(じっくり絞っていけば、輪郭がはっきりして、ひょっとしたら競技名を思い出せるかもしれない)



  6.その競技は採点競技ですか?



             *           *



  6.その競技は採点競技ですか?-イエス



 これを見た石倉は、とにもかくにも夏季オリンピック種目の中で採点競技を思い浮かべてみた。
(体操と新体操と、それから……トランポリンもだ。あと、シンクロナイズドスイミング、飛び込み)
 そこまで思い付いた段階で、ふと記憶が甦る。
(そういえば、東京大会から名前が変わるんだったな、シンクロナイズドスイミング。確かあれはアートな水泳みたいな名称で……)
 頭を捻って思い出そうと努力すること一分弱。石倉は思い出した瞬間、「あっ」と声を上げた。
(アーティスティックスイミングだ。間違いない……こういう名称が変わっただけの場合はどうなるんだ? シンクロは今度の東京大会では行われないと見なしていいのだろうか。それはおかしい気もする。問題として認められる可能性は低そうだ。それに、個人競技じゃないし――いや、待てよ。昔はシンクロにもソロがあったはず)
 この発見に、石倉は軽い興奮を覚えた。これこそが探し求めていた答なんじゃないか。時間ぎりぎりまで粘って熟考した石倉は思い切ることに決めた。



  7.解答します。その種目とはシンクロナイズドスイミングのソロですか?



 つづく
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