仮想空間に探偵は何人必要か?

崎田毅駿

文字の大きさ
6 / 21

6.二択の積み重ね

しおりを挟む
 そうして時間を目一杯使った検討の末、ある種目に決めた桐生達は、無事に問題として適当だと認められて、ほっとした。


<なるほどなるほど。いいところをついていると思うね。ただし、先ほどの人名と違って、数がかなり限られた中から選んだ一つだから、一撃で当てられる可能性も充分にあるかもね>
 司会者テーリン吹田のおしゃべりがそのまま他チームへのヒントになりやしないか、多少はらはらしながら聞いた。
(これならまあセーフかな)
 桐生は胸をなで下ろす気分で、それでも緊張を保ちつつ、最初の質問を待った。
 出題チームからは、質問するのが誰なのか分かる仕組みになっている。分かっても駆け引きのしようがないので、勝敗に影響はない。馳、高田、石倉、螢川と同じチームの二人が連続にならず、ジグザグになっているのはよい傾向だと言えるかもしれない。不安があるとしたら、この顔ぶれの中ではより知識量が多いであろう男二人が後半の順番になった点か。


  1.その種目は夏季オリンピックにありますか?


 やはり、夏と冬の両方があることは想定済みか。桐生はボタンを押して返答した。


  1.その種目は夏季オリンピックにありますか?-イエス


             *           *


  1.その種目は夏季オリンピックにありますか?-イエス


 表示された文字に、次の質問者である高田鈴子は思案げにうなずいた。
(大きな分類から絞っていく。常道ですね。では私もその流れに沿うとしましょう。夏季オリンピックの競技種目で大きな分類といえば、陸上か体操か水泳、格闘技や球技……この辺りになるのかしら。あるいは、個人競技か団体競技か。日本人が金メダルを獲得したことがあるか否かでも分けられる)
 ここでルールの補足説明をしておくと、出題チームが正確な答を知らないような質問が出た場合は、司会者に対してサポートを求めることができる。主催者側が速やかに調べて正しい返答をしてくれるというわけ。
 もちろん、出題チームが思い込みで正しい解答をしたつもりでも間違えている場合はあり得る。これを見越して、ゲームのシステム上、出題チームがイエス・ノーをボタンで返答してから三十秒ほどのタイムラグが設けられている。主催者側はこの短時間でチェックを入れるのだ。未だかつて事例はないが、出題チームが返答を間違えると、二度目でそのゲームは負けとされる。だから自信のない場合はサポート頼みの連発になる。


  2.その種目は個人競技ですか?


 高田はこの質問を選択した。


             *           *


  2.その種目は個人競技ですか?-イエス


 三番目の質問者、石倉隆司は返答を見て軽く唸った。
(ノーだったらありがたかったんだけどな。個人競技だと武道や格闘技の類が丸々残って、まだまだ絞れない)
 石倉は最初にカテゴリーテーマを聞いた時点で、ありそうな意外な種目は何があったかを考えていた。
(柔道団体は今度の東京からだし、マラソン団体は世界陸上にはあるけど、オリンピックにはなかったかな。となると卓球団体辺りが盲点かも)
 などと検討していたのだけれども、個人競技と言われて当てが外れた格好である。
 まだ質問できる回数はあるんだし、もうしばらくはセオリー通りで行くと決めた。しばらく沈思黙考した果てに、よい質問を思い付いたとほくそ笑んだ。


  3.その種目は次の東京五輪でも実施される予定ですか?


 つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

籠の鳥はそれでも鳴き続ける

崎田毅駿
ミステリー
あまり流行っているとは言えない、熱心でもない探偵・相原克のもとを、珍しく依頼人が訪れた。きっちりした身なりのその男は長辺と名乗り、芸能事務所でタレントのマネージャーをやっているという。依頼内容は、お抱えタレントの一人でアイドル・杠葉達也の警護。「芸能の仕事から身を退かねば命の保証はしない」との脅迫文が繰り返し送り付けられ、念のための措置らしい。引き受けた相原は比較的楽な仕事だと思っていたが、そんな彼を嘲笑うかのように杠葉の身辺に危機が迫る。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

サウンド&サイレンス

崎田毅駿
青春
女子小学生の倉越正美は勉強も運動もでき、いわゆる“優等生”で“いい子”。特に音楽が好き。あるとき音楽の歌のテストを翌日に控え、自宅で練習を重ねていたが、風邪をひきかけなのか喉の調子が悪い。ふと、「喉は一週間あれば治るはず。明日、先生が交通事故にでも遭ってテストが延期されないかな」なんてことを願ったが、すぐに打ち消した。翌朝、登校してしばらくすると、先生が出勤途中、事故に遭ったことがクラスに伝えられる。「昨日、私があんなことを願ったせい?」まさかと思いならがらも、自分のせいだという考えが頭から離れなくなった正美は、心理的ショックからか、声を出せなくなった――。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

扉の向こうは不思議な世界

崎田毅駿
ミステリー
小学校の同窓会が初めて開かれ、出席した菱川光莉。久しぶりの再会に旧交を温めていると、遅れてきた最後の一人が姿を見せる。ところが、菱川はその人物のことが全く思い出せなかった。他のみんなは分かっているのに、自分だけが知らない、記憶にないなんて?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...