8 / 21
8.斜め上からの一撃
しおりを挟む* *
7.解答します。その種目とはシンクロナイズドスイミングのソロですか?-ノー
耳障りなブザー音を伴った誤答の宣告に、解答した当人のみならず、他の三名も大なり小なり衝撃を受けた。それだけ七番目の質問(解答)は納得できる答に思えたのだ。
(今、間違えたのは一体誰なんだろう? 高田さんじゃないことを祈るばかりだ)
頭の中でそう唱えて、実際に手を組み合わせる螢川。時間に余裕がもしあったら何かおまじないの言葉でも吐きそうだ。
(さあ、困ったことになった。誤答したのが誰なのか分からないと、思い切って解答するのがやりづらくなる。高田さんだった場合、僕らのチームでは僕しか答える権利は残っていないんだからな。最悪なのは、今のが高田さんで、今度僕が誤答して、二人とも解答権を失ったケースだ。チームとして負けが決まったあとも、順番が回ってくれば真っ当な質問をしなければいけない。つまり敵の石倉&馳チームに貢献してしまう可能性が高い。こんな屈辱は嫌だ)
高校一年生と若い割に高いプライドの持ち主である螢川は、これ以降、消極的になってしまった。本人が無自覚のままそうなったのだから、勝ち目は限りなく薄くなった。
8.その種目は日本人がメダルを取ったことがありますか?
* *
この八番目の質問に、桐生と片薙のチームは答えるだけの知識がなく、司会の吹田にサポートを求めた。サポートを求めたことは解答者達に伝えられるので、場合によってはそれ自体がヒントになるかもしれない。
とにもかくにも速やかに調べられ――といっても単なるネット検索だが――、ダブルチェックを経て結果が表示される。
8.その種目は日本人がメダルを取ったことがありますか?-イエス
馳千波はこの答を見て、眉間にしわを寄せ、鼻の頭をこすった。
(役に立つような立たないような中途半端な質問だと思ったけれども、サポートを求めたということは、日本人選手とは縁がなさそうな種目ということ? でも、メダルは取っている……つまり、メダルを獲得したのが大昔のことで、桐生君達もその事実を知らなかった?)
確かにヒントは得られたが、だったらこれねという種目が思い浮かばない。
(だめだわ。質問さえ思い付かない。小説家の孫だからっていうのとは関係なしに、運動は得意じゃなかったし、興味もあんまりなかったもんね。文学問題が、せめて芸術問題ならもうちょっとましな――)
心の中で愚痴をこぼしていた馳だったが、突然、閃きが舞い降りてきた。
(もしかして! 迷っている時間はない。制限時間を過ぎない内にっ)
このとき彼女の文字入力のスピードは電光石火のごとくだった。さすが小説家の孫とすべきか、それとも運動神経結構いいじゃないかと言うべきか。
9.解答します。その種目とは芸術ですか?
* *
質問を見て、桐生と片薙は顔を見合わせ、苦笑を浮かべた。
「とうとうやられたわね」
「ああ。でもまあ、粘った方だよ。僕らの方が少し早く正解できたんだから、充分に満足の行く結果だ」
9.解答します。その種目とは芸術ですか?-イエス
つづく
0
あなたにおすすめの小説
籠の鳥はそれでも鳴き続ける
崎田毅駿
ミステリー
あまり流行っているとは言えない、熱心でもない探偵・相原克のもとを、珍しく依頼人が訪れた。きっちりした身なりのその男は長辺と名乗り、芸能事務所でタレントのマネージャーをやっているという。依頼内容は、お抱えタレントの一人でアイドル・杠葉達也の警護。「芸能の仕事から身を退かねば命の保証はしない」との脅迫文が繰り返し送り付けられ、念のための措置らしい。引き受けた相原は比較的楽な仕事だと思っていたが、そんな彼を嘲笑うかのように杠葉の身辺に危機が迫る。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
サウンド&サイレンス
崎田毅駿
青春
女子小学生の倉越正美は勉強も運動もでき、いわゆる“優等生”で“いい子”。特に音楽が好き。あるとき音楽の歌のテストを翌日に控え、自宅で練習を重ねていたが、風邪をひきかけなのか喉の調子が悪い。ふと、「喉は一週間あれば治るはず。明日、先生が交通事故にでも遭ってテストが延期されないかな」なんてことを願ったが、すぐに打ち消した。翌朝、登校してしばらくすると、先生が出勤途中、事故に遭ったことがクラスに伝えられる。「昨日、私があんなことを願ったせい?」まさかと思いならがらも、自分のせいだという考えが頭から離れなくなった正美は、心理的ショックからか、声を出せなくなった――。
扉の向こうは不思議な世界
崎田毅駿
ミステリー
小学校の同窓会が初めて開かれ、出席した菱川光莉。久しぶりの再会に旧交を温めていると、遅れてきた最後の一人が姿を見せる。ところが、菱川はその人物のことが全く思い出せなかった。他のみんなは分かっているのに、自分だけが知らない、記憶にないなんて?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる