天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

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39.リプルの使い魔は?

天空の魔女 リプルとペブル

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39.リプルの使い魔は?

 最初は、警戒して目を光らせ、背中の毛を逆立てていたファングだったが、リプルが近づくと、クンクンとその匂いをかいで、手をぺろりとなめた。
 ファングのするどい目にとまどいの光が宿る。
その目で、リプルを見つめると小さくつぶやいた。
「この手の匂い。そなた、もしや……いや、いい」

(もしかして、気づかれた! そうだ、相手はオオカミだった)
 少し焦ったリプルは、小さな声で
「お願い、もし気づいたのなら、私のこと黙っていて欲しいの」
 とファングに頼む。

 ファングは、
「さて、何のことやら。小さな魔女よ」
 と答えると、ゆっくりと膝をおり、その場に伏せて目を閉じる。
 
 いっぽう背後からリプルたちの様子を眺めていたロッドは、
「驚いたな、長年ジールと一緒にいる俺ですらあんなになついてくれないのに」
 と、少し悔しそうに言う。

「リプルは、動物が大好きで、誰とでもすぐ仲良くなれちゃんだ」
 後をおってきたペブルが、ちょっと自慢するように言った。

「そういえば、ロッドにも使い魔がいるの?」
「ああ、紹介しよう。来い、ウィング!」
 ロッドはそう言いながら、ピューッとするどい指笛を空に向けて放った。バサバサと羽ばたきの音がして、みんなが頭上を見上げると、鷹が舞い降りてくるところだった。

「うわあ、ロッドの使い魔は鷹」
 みんなのところに戻ってきたリプルは目をキラキラさせている。
 
 ウィングという名の鷹は、空から一気に降下してきた。
 ロッドの肩にとまると、キラリとするどい眼光であたりを油断なく見まもりながら、挨拶をした。



「我が主、ロッドをよろしく頼む。少々、血気はやりがちなところがあるが、根は優しいヤツだ」
「なんだよ、ウィング。その上から目線は」
「それも当然だ。なにせ、いつもロッドのことを俯瞰して見ておるゆえ。鳥だけに、上から目線になるのもしかたなかろう」
 ブスッとした表情になったロッドを見て、みんながはじけるように笑った。

「シズク、出ておいで!」
 ペブルが自分の使い魔をみんなに紹介しようと胸ポケットをのぞき込んだ。
 が、
「ぐ~」といういびきが聞こえてくるだけだった。
「はは、私の使い魔はぜっさん昼寝中だった」
 ペブルが頭をかいた。

「使い主に似てるんだな、きっと」
 ロッドのことばに、ペブルが「なんですってぇ!?」と声をあららげる。
 どうやら、ペブルとロッドは性格的に反発しあう間柄のよう。
 バチバチと火花を散らし、にらみ合うペブルとロッドの間をぐいっと手でおしひろげて、イザベスがジールに近づいた。

「わたくしの使い魔は、コウモリのシッコク。ですが、太陽の光が苦手なので、今はわたくしの結いあげた髪の陰にいますの」
 イザベスは、ジールに自分のうなじを見せる。
「シッシッシ、タイヨウ、キライ、ヤミ、サイコー」
 そんな乾いた声が聞こえてきた。
「よろしくね、シッコク」
 ジールはコウモリにむかって礼儀正しくあいさつした。

「私の使い魔は、黒猫のアンジュ。出ておいで」
 マーサがいつも手にしている小ぶりのカゴの中から黒い子猫がおそるおそる顔を出したが、すぐに「ニー」という声だけ残して顔をひっこめてしまった。
「マーサに似て、恥ずかしがり屋さんなんだね」
 リプルがマーサにほほえむ。
 マーサもこくりとうなずいた。

 そのとき、イザベスが何かを思いついたように「あらっ?」と声をあげた。
 そうして、リプルの体のまわりをぐるぐる回りながら言った。
「そういえば、わたくし、リプルの使い魔を見たことがありませんわ」

「そ、それにはちょっと理由があって……」
 リプルが口ごもった。
 自分に使い魔がいない理由を説明すると、自分に狼の力が宿っていることを説明しなければならない。
 かくしたいわけではなかったが、なんとなく自分が人と違っていることを打ち明けるのは、勇気のいることだった。
 しかも、今日はじめて会ったジールやロッドにまで、その秘密を知られてしまうことがなぜか気が進まなかった。

「いるだろ、リプルの使い魔。コイツだろ?」
 と、ロッドがカップケーキにかぶりついているペブルの頭をガッとつかんだ。
「んぐ、ふぐ」
 とつぜん頭をつかまれたペブルは、カップケーキをのどにつまらせ、目をまわし、へなへなと倒れてしまった。

 おどろいたのはロッドである。
「わ、すまない。おい、大丈夫か、しっかりしろ!」
 ガックリとうなだれるペブルを抱きかかえたロッドが真っ青になった。
 ペブルは、うす目をあけてロッドに訴えた。
「せめて、もうひとつ、だけ、カップケーキを……食べたか……った」
「おい、悪かった。俺の分をやるから、死ぬな!」

 とたんにペブルがピョンと上半身を起こした。
「ありがと! わー、ロッドのはチョコたっぷり味だ。いただきまーす」
 ロッドの皿の上にあったカップケーキを半分にわると、パクっと口にいれたペブル。

「なっ、なんだと。おまえ、だましたな」
「先に手を出したのはそっちでしょ。慰謝料ってヤツだよ」

 ペブルはそう言うと残りの半分もパクっと口にほうり込んでしまった。
「うま、うま~これで許してあげるから、ね。ロッドくん」
「くっそ~」
 ごきげんなペブルとくやしげなロッド。
 その騒ぎのかげでリプルの使い魔の話はすっかり忘れさられていた。 
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