大和の風を感じて3~泡沫の恋衣~【大和3部作シリーズ第3弾】

藍原 由麗

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  韓媛からひめは、とりあえず本来の目的に話しを戻す事にした。その為にわざわざ大泊瀬皇子おおはつせのおうじと父を説得して、ここまでやって来たのだから。

軽大娘皇女かるのおおいらつめは、今後もここ大和におられるのですか?その……皇女もまだお若いので、どう考えられてるのかなと」

  それを聞いた軽大娘皇女は、思わず目を丸くした。自分達の関係がここまで大きくなってしまったのだ。やはり今後の事も気になるのであろう。

「そうね。兄上との事は、今でも全然諦めきれてない。今でも彼の事が本当に大好きだから」

  今でも目をつぶると、彼の優しい顔が浮かんで来る。

  そんな彼女の言葉を聞いて、韓媛もとても切なくなってくる。昨日見た光景でも、2人が互いにどれほど想い合っているか、とても伝わって来た。

「軽大娘皇女は、本当に自身のお兄様を想われてるのですね」

(でも、これからどういう展開であの光景のように進むのかしら?この災いをなくすには、彼女が皇子に会いに行くのを止めさせるべきなのかも、正直分からないわ)

  韓媛は少し困ってしまった。大和に来て彼女に会えさえすれば、何か解決策が見つかるのではと考えていた。
  であれば、もう一度あの剣に祈ってみるべきなのだろうか。

  韓媛が1人であれこれ考えていると、軽大娘皇女が続けて言った。

「私は、自分の人生は自分のものだと思っているわ。だから悔いのない生き方をしたい」

「悔いのない生き方ですか……」

  韓媛は、軽大娘皇女が何か強い意思を持って、言っているような気がした。

  それからしばらくして、大泊瀬皇子が戻ってきた。そして韓媛は皇子につれられて軽大娘皇女の部屋を後にする事にした。





  その後韓媛は、遠飛鳥宮とおつあすかのみやで用意された部屋に来ていた。
  軽大娘皇女がここにいる限り、木梨軽皇子きなしのかるのおうじとの心中は無いだろう。だがそれも、いつ起こるのかは全く分からない。

(あの光景の2人は、恐らく今ぐらいの年齢のような気がする。となると、割りと近々に起こる事なのかしら?)

  それから彼女は、腰帯びの中に隠してあった剣を取り出した。

(では、もう1回この剣に祈ってみましょう)

  それから韓媛は剣を握りしめると、再度祈ってみる事にした。

「お願い、今度こそこの災いを断ち切って」

  すると剣が少しづつ熱くなってきて、また不思議な光景が見えてきた。

  すると今度は軽大娘皇女だけが見えた。

  この遠飛鳥宮を出てすぐくらいの所を、彼女は1人、どうやら早歩きで歩いているようだった。
  また光景の中では、今と同じぐらいの夕方にさしかかっている頃のようだ。

(軽大娘皇女はやはりここを抜け出して、木梨軽皇子の元に会いに行こうとしてるのね)

  韓媛がその光景を見ていると、軽大娘皇女の周りからまた薄暗い糸のような物がまとわりついて見えた。
  そしてその1本が彼方遠くへと伸びている。

(もしかしてあの糸が、木梨軽皇子と繋がっているの?と言う事は、あの糸を切れば、2人の災いは断ち切れるかもしれない……)

  韓媛はそう思うと、今度こそこの災いを断ち切る思いで、再び剣を振った。

  すると『パチン!』と音がするような感じがした。

(やった、糸が切れたわ!)

  そこでその光景は消えていき、韓媛が目を開けると、先程の部屋の中だった。

「どうやら、上手く行ったかもしれないわね」

  前回はこの剣を使った後は、父親の元に行こうとして、韓媛能吐と鉢合わせをしていた。そのため今回も、軽大娘皇女の元に再度行ってみてた方が良いかもしれない。

  それから韓媛が部屋を出て、軽大娘皇女の元に向かって歩いていると、ふと宮の使用人達の話し声が聞こえてきた。

「ねぇ、軽大娘皇女を見かけなかった?」

「さぁ、知らないわ。先程は、葛城の韓媛様とお話しされていたと聞いたけど」

  使用人達はその場で、そんな内容の会話をしていた。

(軽大娘皇女がいない?そう言えばさっき見た光景は、今と同じぐらいの時間帯に見えた……ま、まさか)

  韓媛は何やら嫌な予感がしてきた。
もしかすると、軽大娘皇女はもうこの宮を出て、木梨軽皇子の元に向かってるかもしれない。

  韓媛は慌てて、軽大娘皇女を追いかける事にした。

(さっき見た光景はこの宮の近くのようだから、急けばまだ間に合うかもしれない)

  韓媛が宮の人達に見つからないよう、遠飛鳥宮をそっと抜け出し、軽大娘皇女がいるであろう方向に向かって走り出した。


  それからしばらくして、思いの外早く軽大娘皇女を見つける事が出来た。

「軽大娘皇女、待って下さい!!」

  韓媛は必死で軽大娘皇女を呼び止めた。

  軽大娘皇女は、何故彼女が自分を見つけて走って来るのか不思議でならない。

  そして韓媛は、軽大娘皇女の側までくると、ガッチリと彼女の腕をつかんだ。
  そして「はぁーはぁー」と息を吐きながら彼女に言った。

「軽大娘皇女、木梨軽皇子の元に行くつもりですよね?」

  軽大娘皇女はそう言われて、どうしてその事を知られてしまったのかと、とても驚いた表情をした。

「韓媛、どうしてあなたがその事を知ってるの?」

(やはり、あの剣の見せた光景はこの部分だったのね……)
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