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韓媛が自身の住居の外を歩いている時の事である。
この家の使用人達の話し声が聞こえて来た。
「穴穂皇子が大王になって、とりあえず一安心したわ」
「本当にそうよね。それでだいぶ政り事の体制も落ち着いたようで、最近大泊瀬皇子の妃選びが本格的に始まったそうよ」
(え、大泊瀬皇子の妃選び?)
韓媛は意外な会話が聞こえて来たので思わず足を止めた。
それから慌てて隠れ、使用人達の話しを聞き入る事にした。
「え、あなたどうしてそんな話し知ってるのよ?」
「この間円様が、大和の使いから帰ってきた者から聞いているのを、偶然耳にしたのよ。それで円様も、ついに始まったかとおっしゃっていたわ」
(え、この件はお父様の耳にも入ってるの……)
韓媛はこの話しを聞いて思った。
もしかするとこの件は、彼女の父親も以前に大泊瀬皇子から何か聞いていたのかもしれない。
さすがに大和の皇子の婚姻の絡んだ話しだ、娘の韓媛に話す事でもないと思ったのだろうか。
「まだ大王自身も正妃を娶ってないのに、弟皇子の妃を先に見つけたいなんて……
やっぱり大泊瀬皇子には、それだけ早く落ち着いて貰いたいと思ってるんでしょうね」
(でもそうすると、大泊瀬皇子の相手ってもう決まったのかしら)
韓媛はそこが一番重要な気がして、さらに身を乗り出した。
「それでその候補が誰かは聞いてないの?」
「一応候補は決まってるみたいだけど、相手が誰なのかは円様も確認出来なかったみたい。
なので、今回の候補に韓媛様は入ってなさそうね。もしそうなら、円様の元に大泊瀬皇子から話しが来るでしょうし」
とりあえず、韓媛が確認出来たのはそこまでだった。その後彼女は使用人の人達に気付かれないよう、そっとその場から離れた。
(以前、軽大娘皇女は私が大泊瀬皇子の相手なのではと言っていたけど、どうも違ったみたいね)
韓媛はとぼとぼ歩きながら、先程の話しを思い返していた。
最近大泊瀬皇子は、父親の円の元に来ると必ず韓媛にも会いに来ていた。そんな彼の事を、韓媛も少なからず心待にしていた所もある。
だが先程の話しからすると、彼は別の女性を妃に考えているようだ。
「いやだわ。これだと私、まるで皇子に期待していたようになる……
ううん、きっと彼が幼馴染みだから少し寂しく思ってるのだわ」
韓媛は自分にそう言い聞かせる事にした。
大泊瀬皇子は元々少し傲慢な所があり、その性格で人から恐がられたり、相手と対立しやすい所がある。だが韓媛に対しては割りと優しく接してくれていた。
それも彼からしてみれば、気心のしれた数少ない人間だったからなのだろうか。
数日後、今日は大泊瀬皇子が葛城円の元に来る話しになっていた。
今の大和王権において、大連は物部伊莒弗に代わり大伴室屋と言う人物が担い、大臣は韓媛の父親の葛城円が引き続き担っている。
それで葛城円とのやり取りは、ひとまず今まで通り、大泊瀬皇子が葛城に出向いて行う事になっていた。
「今日は余り大泊瀬皇子に会いたい気分じゃない……気分転換も兼ねて、家の外に出て散歩でもしてみようかしら」
韓媛は、先日の大泊瀬皇子の妃選びの件をかなり気にしていた。先日の使用人達の話だと、父親の円も相手が誰かまでは確認出来なかったようだ。
(お父様にも、この話しはその後中々聞けないでいる。本人に聞くのが一番早いのだけれど、それも何となく気が重いわ)
「とりあえず、1人でいても色々考えてしまうから、散歩に行って時間をつぶしましょう」
韓媛はそう思い立つと、部屋を出て外に向かう事にした。
だが今回は使用人には言わないで行くつもりだ。
今日は大泊瀬皇子が来る事になっているので、そんな中外に行くとなると、変に思われても困るからだ。
そして彼女が部屋を出て、家の外に向かっている時だった。いきなり自分の名前を誰かに呼ばれた。
「おい、韓媛。お前どこに行くつもりだ」
韓媛は思わずビクッとした。そして恐る恐る後ろを振り返ると、そこには大泊瀬皇子本人が立っていた。
「あら、大泊瀬皇子来られてたのですね。丁度気分転換に、少し外に出てみようと思っていたの」
韓媛はとりあえず、彼に普段通りに挨拶をした。
大泊瀬皇子の方も、特に不思議がる感じでもなく、彼女の側に近付いてきた。
「あぁ、悪いな。今日もここに来ていて、円とは今話しが済んだところだ。これからお前の元にも寄ろうとしたが、丁度目の前にいたのでな」
そんな彼の話しを聞いて、彼女は中々自分の思うようには行かないなと思った。
「本当にそれは済みませんでした。大王も変わられた事ですし、皇子も色々と大変なのではないですか?」
とりあえず彼女は、今の大和の現状を聞いてみる事にした。これはこれで丁度気になっていた所である。
「あぁ、穴穂の兄上も最近は少し落ち着いて来た感じだ。そのため、今は政り事以外にも目を向けるようになってきている」
(政り事以外……それってもしかして大泊瀬皇子の件も含まれてるのかしら)
韓媛は、もうここまで来たら観念して、彼に直接聞いてみようと思った。
これは恐らく、いずれ自分も知る事になる話しなのだから。
この家の使用人達の話し声が聞こえて来た。
「穴穂皇子が大王になって、とりあえず一安心したわ」
「本当にそうよね。それでだいぶ政り事の体制も落ち着いたようで、最近大泊瀬皇子の妃選びが本格的に始まったそうよ」
(え、大泊瀬皇子の妃選び?)
韓媛は意外な会話が聞こえて来たので思わず足を止めた。
それから慌てて隠れ、使用人達の話しを聞き入る事にした。
「え、あなたどうしてそんな話し知ってるのよ?」
「この間円様が、大和の使いから帰ってきた者から聞いているのを、偶然耳にしたのよ。それで円様も、ついに始まったかとおっしゃっていたわ」
(え、この件はお父様の耳にも入ってるの……)
韓媛はこの話しを聞いて思った。
もしかするとこの件は、彼女の父親も以前に大泊瀬皇子から何か聞いていたのかもしれない。
さすがに大和の皇子の婚姻の絡んだ話しだ、娘の韓媛に話す事でもないと思ったのだろうか。
「まだ大王自身も正妃を娶ってないのに、弟皇子の妃を先に見つけたいなんて……
やっぱり大泊瀬皇子には、それだけ早く落ち着いて貰いたいと思ってるんでしょうね」
(でもそうすると、大泊瀬皇子の相手ってもう決まったのかしら)
韓媛はそこが一番重要な気がして、さらに身を乗り出した。
「それでその候補が誰かは聞いてないの?」
「一応候補は決まってるみたいだけど、相手が誰なのかは円様も確認出来なかったみたい。
なので、今回の候補に韓媛様は入ってなさそうね。もしそうなら、円様の元に大泊瀬皇子から話しが来るでしょうし」
とりあえず、韓媛が確認出来たのはそこまでだった。その後彼女は使用人の人達に気付かれないよう、そっとその場から離れた。
(以前、軽大娘皇女は私が大泊瀬皇子の相手なのではと言っていたけど、どうも違ったみたいね)
韓媛はとぼとぼ歩きながら、先程の話しを思い返していた。
最近大泊瀬皇子は、父親の円の元に来ると必ず韓媛にも会いに来ていた。そんな彼の事を、韓媛も少なからず心待にしていた所もある。
だが先程の話しからすると、彼は別の女性を妃に考えているようだ。
「いやだわ。これだと私、まるで皇子に期待していたようになる……
ううん、きっと彼が幼馴染みだから少し寂しく思ってるのだわ」
韓媛は自分にそう言い聞かせる事にした。
大泊瀬皇子は元々少し傲慢な所があり、その性格で人から恐がられたり、相手と対立しやすい所がある。だが韓媛に対しては割りと優しく接してくれていた。
それも彼からしてみれば、気心のしれた数少ない人間だったからなのだろうか。
数日後、今日は大泊瀬皇子が葛城円の元に来る話しになっていた。
今の大和王権において、大連は物部伊莒弗に代わり大伴室屋と言う人物が担い、大臣は韓媛の父親の葛城円が引き続き担っている。
それで葛城円とのやり取りは、ひとまず今まで通り、大泊瀬皇子が葛城に出向いて行う事になっていた。
「今日は余り大泊瀬皇子に会いたい気分じゃない……気分転換も兼ねて、家の外に出て散歩でもしてみようかしら」
韓媛は、先日の大泊瀬皇子の妃選びの件をかなり気にしていた。先日の使用人達の話だと、父親の円も相手が誰かまでは確認出来なかったようだ。
(お父様にも、この話しはその後中々聞けないでいる。本人に聞くのが一番早いのだけれど、それも何となく気が重いわ)
「とりあえず、1人でいても色々考えてしまうから、散歩に行って時間をつぶしましょう」
韓媛はそう思い立つと、部屋を出て外に向かう事にした。
だが今回は使用人には言わないで行くつもりだ。
今日は大泊瀬皇子が来る事になっているので、そんな中外に行くとなると、変に思われても困るからだ。
そして彼女が部屋を出て、家の外に向かっている時だった。いきなり自分の名前を誰かに呼ばれた。
「おい、韓媛。お前どこに行くつもりだ」
韓媛は思わずビクッとした。そして恐る恐る後ろを振り返ると、そこには大泊瀬皇子本人が立っていた。
「あら、大泊瀬皇子来られてたのですね。丁度気分転換に、少し外に出てみようと思っていたの」
韓媛はとりあえず、彼に普段通りに挨拶をした。
大泊瀬皇子の方も、特に不思議がる感じでもなく、彼女の側に近付いてきた。
「あぁ、悪いな。今日もここに来ていて、円とは今話しが済んだところだ。これからお前の元にも寄ろうとしたが、丁度目の前にいたのでな」
そんな彼の話しを聞いて、彼女は中々自分の思うようには行かないなと思った。
「本当にそれは済みませんでした。大王も変わられた事ですし、皇子も色々と大変なのではないですか?」
とりあえず彼女は、今の大和の現状を聞いてみる事にした。これはこれで丁度気になっていた所である。
「あぁ、穴穂の兄上も最近は少し落ち着いて来た感じだ。そのため、今は政り事以外にも目を向けるようになってきている」
(政り事以外……それってもしかして大泊瀬皇子の件も含まれてるのかしら)
韓媛は、もうここまで来たら観念して、彼に直接聞いてみようと思った。
これは恐らく、いずれ自分も知る事になる話しなのだから。
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