68 / 78
67《決闘の結末》
しおりを挟む
「大泊瀬、さすがのお前でもだいぶ疲れてきてるようだな……」
市辺皇子がいうように、大泊瀬皇子の体力もういよいよ限界に来ていた。
「ふん、それはお互い様だろう」
そういって大泊瀬皇子は、市辺皇子の剣を跳ね返した。
彼らは従兄弟とはいっても年齢的には一回り以上離れている。
それでもまだ10代の自分と、ここまでやりあえる市辺皇子は本当に凄まじいと大泊瀬皇子は思った。
(恐らく市辺皇子は、今回相当な覚悟でここまで来たのだろう。俺はきっとその気迫に押されているんだ……)
市辺皇子は一瞬韓媛と阿佐津姫を見た後に、再び大泊瀬皇子に声をかける。
「俺はもうこれ以上大事な者を失いたくないんだ。家族に恵まれ、昔から恋い焦がれていた娘さえ手に入れたお前に、俺の気持ちなど分かりはしない!」
そういって再び市辺皇子は大泊瀬皇子に飛びかかっていく。
(うん、大事な者を失いたくない……あいつの両親の話しか。それとも今でも想いを寄せているであろう彼女のことか)
大泊瀬皇子は一瞬そんなことを脳裏に浮かべた。
するとその隙を見て市辺皇子が大泊瀬皇子の肩に剣で切りつけた。
「う、うわー!!」
大泊瀬皇子の肩に物凄い激痛が走った。
そして彼は思わず後ろに後退する。彼の肩からは血がどんどんと流れ出した。
こうなると、彼も中々思うように剣を振るえない。
(う、うそよね。大泊瀬皇子が負けてしまうの……)
「お、大泊瀬皇子!!いやー!!」
韓媛は思わずそう叫んで、がたがたと体を震えだす。
そして目から沢山の涙が溢れだした。
「大泊瀬、悪いが止めを刺せてもらう。これが今後の大和の為だ!」
そういって市辺皇子は、剣を振りかざそうとした。
それを見た阿佐津姫は「お願いよ市辺、もう止めて!!」と叫んで、思わず2人の元にかけよっていこうとした。
その阿佐津姫の行動を見た市辺皇子は、そんな彼女に一瞬気を取られてしまい、思わず彼の手が止まる。
大泊瀬皇子はそんな彼を見て、反射的に剣を前に出して市辺皇子の腹を刺した。
市辺皇子は自身の体に剣を打ち込まれると、口から血を吐き出す。
そしてそのまま彼はその場に崩れ落ちていった。
「い、市辺皇子……う、うそだろ」
大泊瀬皇子は余りのことに訳が分からない状態になった。自分が市辺皇子を刺したことですら、全く自覚が持てていない。
(お、俺が市辺皇子を刺してしまったのか)
その光景を間近で見ていた阿佐津姫も思わずその場で叫んだ。
「市辺皇子、 い、いやー!!」
阿佐津姫はそのまま市辺皇子の元に駆け寄る。だがこれだけの傷を受けてしまっては、恐らく彼は助からない。
「市辺、あなたどうしてこんなことをするのよ。あなたは人を殺すなんて出来ない人でしょう!」
阿佐津姫はそういいながら、彼を自身の膝に乗せた。もう彼が助からないことを彼女も理解している。
韓媛は急いで大泊瀬皇子の元に駆け寄った。彼は肩に傷を受けてしまったが、命の別状はないだろう。
そして大泊瀬皇子は韓媛に支えられながら、市辺皇子に近寄った。
「おい、市辺皇子。どうして最後にあんな油断をするんだ。俺だって本当はこんなことしたくはなかったんだ!」
大泊瀬皇子の目からも少し涙が流れてきていた。
そんな時だった、どこからか馬の声が聞こえてきた。韓媛がその音のする方向を見る。どうやら忍坂姫達もやってきたようだ。
そして忍坂姫は馬から降りるなり、急いで彼女らの元にかけよる。そして市辺皇子の状態を見て、全てを悟ってしまったようだ。
それから阿佐津姫の横に座り、思わず市辺皇子の頭を撫でる。
市辺皇子ももうとっくに成人しているが、忍坂姫は彼からしてみれば母親替わりのような存在だった為か、特に抵抗することなく、大人しく撫でられていた。
「市辺皇子、あなたは昔から人思いでとても優しい子だったわ。私にも凄く懐いてくれて、本当に可愛い皇子だったの……」
そういって彼女も思わず涙を浮かべる。
そんな彼女を見て市辺皇子は、苦しいのを必死で我慢して話しだす。
「忍坂姫、あなたと雄朝津間大王には本当に感謝してます。幼くして両親を亡くした私にとって、お二人は本当に親のような存在でした。あなた達と一緒にいられて本当に幸せでした……」
市辺皇子はこんな状況でも笑みを見せてそう話した。
「市辺皇子、私もあなたのことは本当の息子のように思っていたわ。あなたと初めて会った時のこと、今でもしっかりと覚えてる……」
忍坂姫は涙を必死でこらえて、笑ってそういった。
市辺皇子はそんな忍坂姫を見終わると、今度は阿佐津姫に目を向けた。
阿佐津姫も彼を膝に乗せた状態のまま真っ直ぐ彼を見つめていた。
「阿佐津姫、俺は自身の生い立ちのこともあって、中々本音で話しをするのが苦手だった。それでお前にも中々素直になれなくて……
ただそれでも、俺にとってお前は1番大切な女性だった。例え別の姫を妻にし、子を成したとはいえ、それでもずっとその想いは変わらない」
これは阿佐津姫のみならず、他の者も意外に思えた。まさか市辺皇子の口からこんな話しが出るとは思いもしていなかった。
だが何故か大泊瀬皇子だけは薄々気付いていたようで「全く、そんなの俺はとうに気付いていた。お前の態度を見ていたら分かることだ」
(え、大泊瀬皇子は気付いていたの?でもそのことをずっと誰にもいわずにいたということかしら……)
韓媛はもしかすると、これは大泊瀬皇子の優しさだったのかもしれないと思った。
市辺皇子がいうように、大泊瀬皇子の体力もういよいよ限界に来ていた。
「ふん、それはお互い様だろう」
そういって大泊瀬皇子は、市辺皇子の剣を跳ね返した。
彼らは従兄弟とはいっても年齢的には一回り以上離れている。
それでもまだ10代の自分と、ここまでやりあえる市辺皇子は本当に凄まじいと大泊瀬皇子は思った。
(恐らく市辺皇子は、今回相当な覚悟でここまで来たのだろう。俺はきっとその気迫に押されているんだ……)
市辺皇子は一瞬韓媛と阿佐津姫を見た後に、再び大泊瀬皇子に声をかける。
「俺はもうこれ以上大事な者を失いたくないんだ。家族に恵まれ、昔から恋い焦がれていた娘さえ手に入れたお前に、俺の気持ちなど分かりはしない!」
そういって再び市辺皇子は大泊瀬皇子に飛びかかっていく。
(うん、大事な者を失いたくない……あいつの両親の話しか。それとも今でも想いを寄せているであろう彼女のことか)
大泊瀬皇子は一瞬そんなことを脳裏に浮かべた。
するとその隙を見て市辺皇子が大泊瀬皇子の肩に剣で切りつけた。
「う、うわー!!」
大泊瀬皇子の肩に物凄い激痛が走った。
そして彼は思わず後ろに後退する。彼の肩からは血がどんどんと流れ出した。
こうなると、彼も中々思うように剣を振るえない。
(う、うそよね。大泊瀬皇子が負けてしまうの……)
「お、大泊瀬皇子!!いやー!!」
韓媛は思わずそう叫んで、がたがたと体を震えだす。
そして目から沢山の涙が溢れだした。
「大泊瀬、悪いが止めを刺せてもらう。これが今後の大和の為だ!」
そういって市辺皇子は、剣を振りかざそうとした。
それを見た阿佐津姫は「お願いよ市辺、もう止めて!!」と叫んで、思わず2人の元にかけよっていこうとした。
その阿佐津姫の行動を見た市辺皇子は、そんな彼女に一瞬気を取られてしまい、思わず彼の手が止まる。
大泊瀬皇子はそんな彼を見て、反射的に剣を前に出して市辺皇子の腹を刺した。
市辺皇子は自身の体に剣を打ち込まれると、口から血を吐き出す。
そしてそのまま彼はその場に崩れ落ちていった。
「い、市辺皇子……う、うそだろ」
大泊瀬皇子は余りのことに訳が分からない状態になった。自分が市辺皇子を刺したことですら、全く自覚が持てていない。
(お、俺が市辺皇子を刺してしまったのか)
その光景を間近で見ていた阿佐津姫も思わずその場で叫んだ。
「市辺皇子、 い、いやー!!」
阿佐津姫はそのまま市辺皇子の元に駆け寄る。だがこれだけの傷を受けてしまっては、恐らく彼は助からない。
「市辺、あなたどうしてこんなことをするのよ。あなたは人を殺すなんて出来ない人でしょう!」
阿佐津姫はそういいながら、彼を自身の膝に乗せた。もう彼が助からないことを彼女も理解している。
韓媛は急いで大泊瀬皇子の元に駆け寄った。彼は肩に傷を受けてしまったが、命の別状はないだろう。
そして大泊瀬皇子は韓媛に支えられながら、市辺皇子に近寄った。
「おい、市辺皇子。どうして最後にあんな油断をするんだ。俺だって本当はこんなことしたくはなかったんだ!」
大泊瀬皇子の目からも少し涙が流れてきていた。
そんな時だった、どこからか馬の声が聞こえてきた。韓媛がその音のする方向を見る。どうやら忍坂姫達もやってきたようだ。
そして忍坂姫は馬から降りるなり、急いで彼女らの元にかけよる。そして市辺皇子の状態を見て、全てを悟ってしまったようだ。
それから阿佐津姫の横に座り、思わず市辺皇子の頭を撫でる。
市辺皇子ももうとっくに成人しているが、忍坂姫は彼からしてみれば母親替わりのような存在だった為か、特に抵抗することなく、大人しく撫でられていた。
「市辺皇子、あなたは昔から人思いでとても優しい子だったわ。私にも凄く懐いてくれて、本当に可愛い皇子だったの……」
そういって彼女も思わず涙を浮かべる。
そんな彼女を見て市辺皇子は、苦しいのを必死で我慢して話しだす。
「忍坂姫、あなたと雄朝津間大王には本当に感謝してます。幼くして両親を亡くした私にとって、お二人は本当に親のような存在でした。あなた達と一緒にいられて本当に幸せでした……」
市辺皇子はこんな状況でも笑みを見せてそう話した。
「市辺皇子、私もあなたのことは本当の息子のように思っていたわ。あなたと初めて会った時のこと、今でもしっかりと覚えてる……」
忍坂姫は涙を必死でこらえて、笑ってそういった。
市辺皇子はそんな忍坂姫を見終わると、今度は阿佐津姫に目を向けた。
阿佐津姫も彼を膝に乗せた状態のまま真っ直ぐ彼を見つめていた。
「阿佐津姫、俺は自身の生い立ちのこともあって、中々本音で話しをするのが苦手だった。それでお前にも中々素直になれなくて……
ただそれでも、俺にとってお前は1番大切な女性だった。例え別の姫を妻にし、子を成したとはいえ、それでもずっとその想いは変わらない」
これは阿佐津姫のみならず、他の者も意外に思えた。まさか市辺皇子の口からこんな話しが出るとは思いもしていなかった。
だが何故か大泊瀬皇子だけは薄々気付いていたようで「全く、そんなの俺はとうに気付いていた。お前の態度を見ていたら分かることだ」
(え、大泊瀬皇子は気付いていたの?でもそのことをずっと誰にもいわずにいたということかしら……)
韓媛はもしかすると、これは大泊瀬皇子の優しさだったのかもしれないと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる