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第八章:散るは忠誠、燃ゆるは誇り――約束の交差点、勇者計画の終焉
第149話:アリストの五日目──破軍将軍、最後の道を拓く
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森林エリア。アリストの部隊は川沿いを道として、海岸へ向かっている。
大量の戦車を失ったため、彼らの手持ちの食料と水は多くない。今日中にこの森を抜け出せなければ、確実に遭難してしまうだろう。
「しかし、変だ……太陽が昇り、植物が活性化するはずなのに、ここまで歩いても襲撃がない。」アリストは、この一時的な安寧を不気味に感じていた。彼は幾度も四天王のベノムローズと戦い、彼女が如何に残忍で狡猾であるかを、嫌というほど知っていた。
「どっちにせよ、ここは彼女の庭。どう考えても、我々はその出方に備えることしかできないさ。」伍長はアリストの心配を理解できたが、現状をどうにかする方法はなかった。
「幸い、この進軍速度なら、もうすぐ抜けられると思うぞ。内陸の植物がどんどん減り、塩分耐性の高いマングローブやハママサキが多くなってきた。なにより……」軍曹は深く息を吸った。「この潮風……懐かしい。故郷の港を思い出す。」
「そういえば、軍曹は帝国港出身だったよな。なら海軍に入れば良かったのに、わざわざ俺の陸軍に来てくれて。」
「将軍さま、軍曹殿は金槌だぜ。海に落ちたらそのまま沈むだけさ。」伍長は隣にいる軍曹の秘密を軽くばらした。
「あの港は嫌いだった。飯が不味くて、海賊も多かった。でも……今、もう一度見たいと思うのは不思議なものだ。」
「伍長は?」
「え?俺か?俺は農業の町さ。あそこは小麦畑以外、何もないぜ。それに嫌気がさして家を出て、大都市の帝都に来て軍に入った。色んな新しいものを見られて満足してるさ。だけど、お袋のことは気になる……もう小麦が実る季節だ。婆さん一人でちゃんと回るか……」
「見に行けよ。農民になりたくなくて軍に入りたいって、お袋さんと喧嘩したんだろ?いい加減に仲直りしなよ。心配してくれる親は宝ものだぜ。」アリストは元気づけようと伍長の背中を叩いた。その元気な動作の裏で、彼は一抹の悲しげな表情を隠していた。
「将軍はどうなんです?」
「俺?俺は……」アリストの頭に、なぜかリディアの後ろ姿が浮かんだ。「気になる女の子ができたんだ。もし帰れたら……確かめたいことがある。」
「また女かよ!愛人か?それとも新しい愛人か?このクズ男がなぜそんなにもてるんだ!」軍曹は悔しさと嫉妬の炎を燃やした。
「違う違う!あれはそういうんじゃない!あの娘は恋人って感じより、娘みたいな……いや、なんでもない。忘れてくれ。」
(こんなに女遊びに耽って、娘のことには何の世話もしてこなかった男が、本当の父親だと名乗ったところで……彼女は喜ばないだろう。ならば、ここまででいいのかもしれない。)
「父親の風上にも置けないのに。」自虐のように、アリストは笑った。
(でも、もし本当に彼女が俺の娘なら……いい男に嫁に行く前に、少しは守ってあげたいな。俺みたいなクズ男に騙されないように。)
それぞれの思いを胸に、アリストたちはようやく海岸線を視認した。
「やった!抜けた!後は海軍に信号弾を……!」
皆が歓喜に沸くその時、アリストの気持ちは一気に氷点下まで沈んだ。
(この……牡丹とローズの花が混ざったような匂い。忘れはしない。)
「もうお帰りなのかい?冷たいねぇ……恒温動物なのに。せっかくなら、植物の情熱を見せてあげようか?」
茂みが出口を塞ぎ、そこに現れたのは、一昨日ぶりに再会するベノムローズと──
「……」
アリストの部隊を壊滅的敗北に追いやった元凶、クロムスだった。
*
「あは、いい……その表情。希望が砕け散る瞬間って、そそるわ。ここまで待った甲斐があったっていうものね。」
その言葉で、アリストたちは悟った。今まで生かされていたのは、生きる希望を与え、まさに助かると思った瞬間にそれを踏み躙るためだ。
絶望、恐怖、焦燥──様々な感情が場を満たす。先ほどまで闘志を燃やしていた兵士たちも、二人の四天王を前にすると、本能から湧き上がる怯えに逆らうのは難しい。大半の兵士は手足を震わせ、そのまま地面に崩れ落ちる者も少なくなかった。
「人類の文化に『狩り』ってあるじゃない?さあ、逃げてごらん。あたしにも、その狩りの喜びを教えてちょうだいな。あんたたちの命でね。」
ベノムローズの言葉がトリガーとなり、兵士たちが一斉に背を向け逃げ出そうとしたその時──
「長官の命令なき撤退は、ただの逃亡兵だ!そんな奴はもはや帝国軍の兵士ではない!腰抜けのチンカス野郎だ!」
混乱の真っ只中、アリストが雷のような声を上げた。
「我、帝国軍の勇敢なる兵士よ!死を恐れるか?否!我々が恐れるのは、無意味な死、惨めな死、仁義なき死だ!ならば、この場で逃げることこそ、我々が最も恐れるべきもの!我らの未来は後方ではなく、前方にある!だから──」アリストは剣を天に掲げ、そして前方へと向き直った。「前に進み、生きる道を開け!それで死ねるなら本望だ!今より我が軍は突撃する!逃げる者は帝国軍の恥として、敵に殺される前に、この破軍将軍アリストが散弾銃で撃ち殺してくれるわ!」
彼は片手の散弾銃を、後ろにいる兵士たちに向けた。
「将軍さまは……我々に死を命じるんですか?」軍曹は淡々と問いかけた。
「そうだ。敵の包囲を突破するためには、前方に立つ者は死ぬ。だが、そうしなければ生きる道はない。俺はその命令を下す。そして俺自身も、最前線を行く。」
「やれやれ……貧乏くじを引いたぜ。アリスト将軍……いや、アリストよ。俺は軍曹としてじゃなく、一人の男として、お前に命を預ける。」軍曹は自らの軍服から階級章を引きちぎり捨て、アリストの隣に立った。
それを見て、他の兵士たちも次々と階級章を捨てた。それは、死を覚悟した証だった。
「伍長、お前には待っている家族がいるじゃないか。後ろにいろ。一番先頭は、俺のように帰る場所のない男が務める。」
「ですが、俺は──」
「これは命令だ。我々は帰る場所があるからこそ、命を懸けて戦う。その理由を奪うんじゃない。」
「……畏まりました。将軍……必ず生きてください。」
「お前もな。大丈夫、俺は不死身のアリストだからな。」
陣形を矢鏑の形に整え、アリストを含めた特攻隊が道を開く。その隙に後方の部隊は海岸へ向かう。海岸は塩分濃度が高く、植物のベノムローズとスライムのクロムスにとっては追撃が難しい。つまり、この森を抜ければ勝利だ。
「つまらないわね。クロムスを猟犬代わりに狩りを楽しもうと思ったのに。もういい、あんたたち全員、あたしの盆栽の肥料になってちょうだい。」ベノムローズは、絶望に打ちひしがれた人間の最後を見られなかったことを残念そうにし、緑色の髪をいじった。
「……」
「はいはい、クロムスの分も残してあげるから。」どうやらクロムスが、自分の取り分を主張したらしい。この二人にとって、アリストたちは単なる食料──獲物が捕食者に逆らうのは道化以外の何物でもなかった。
「もういい?最後の遺言も書き終わったんでしょ?あたし優しいでしょ、まとまるまで待ってあげたのよ。」
「ああ、ありがとよ。お礼に、この銃でてめえの脳天をぶっ飛ばしてやる。」
幾度となく対決を重ねてきたアリストとベノムローズ。今回こそ、決着がつく。
「全軍、突撃──!」
アリストの号令と共に、残存する戦車を先頭に、壁となって進路を切り開く。
「学習能力がないの?クロムス、さっさと片付けて。」前回と同じく、クロムスは分裂体を地面に潜ませ、地雷のように戦車を襲わせた。戦車の隙間から車内へ侵入しようとするが、今回は違った。
「スライム野郎、これでも喰らいやがれ!」戦車内には大量のマングローブの枯葉が詰め込まれていた。マングローブの葉には塩腺があり、余分な塩分を排出するため、表面には塩の結晶が付着していることもある。枯葉には老廃物として濃縮された塩分が蓄積されており、周囲の土壌よりもはるかに塩分濃度が高い。
その浸透圧により、クロムスの分裂体はたちまち脱水し、退縮していった。
「よし、成功だ!大将があいつの弱点が塩だと事前に教えてくれて助かった!歩兵たち、カタパルトに詰めた塩を分裂体にぶつけろ!」
「了解!清めよ、ほれっ!」食料を多く運ばなかったのには、もう一つの理由があった。クロムス対策として、塩の確保を最優先したのだ。食塩では分裂体を完全に殺せないが、駆逐するだけなら可能だ。
「助かるぜ!このまま一気に突破するぞ!」
第一の難関、突破。
「なにしてるの、クロムス!役立たず!そんなに後ろの兵士が欲しいの?でも戦車がなければ、あたしの毒花粉と寄生胞子に耐えられるかしらね。」ベノムローズは自らの花を開き、花粉を拡散しようとする。
「発砲!」前列の戦車が、除草剤の砲弾をベノムローズに向けて発射した。これは本来、植物専用に開発されたものだ。当然、花粉や胞子にも同様に作用する。砲弾は空中で炸裂し、ドクター特製の除草剤をばら撒いた。
「なにこれ……痛っ!あたしの自慢のお肌が!」除草剤がベノムローズに降り注ぐと、その表面がみるみる枯れていった。ベノムローズは初めてこれを喰らったが、植物である彼女は、これが何発も当たれば危険だということを直感した。「クロムス、今から太陽光成(たいようこうせい)を撃つから、時間を稼いで!」
「……」
指示を受けたクロムスは、さらに分裂体を放出した。しかし今回は、いつもの青色ではなく──赤色だった。
(赤色分裂体……!見たことのない能力だ。戦車を避けさせると後ろの歩兵が危ない……受けるしかないか?)
赤色分裂体は青色よりも速い。素早く戦車に取り付き、包み込む。
「まさか……脱出しろ──!」
アリストの指示が終わらぬうちに、赤色分裂体が急速に温度を上昇させ──
バン――――――!!!
激しく爆発した。その威力は絶大で、頑丈な戦車も一瞬で鉄屑と化した。当然、中にいた兵士たちが無事であるはずがない。
赤色分裂体は、自身の体温を短時間で極限まで高めることで、体内の水分を大量の水素に変え、その反応を利用した自爆攻撃だった。まさか、まだこんな手を隠し持っていたとは。
爆発が次々と鳴り響く。分裂体の自爆により、前方の戦車特攻隊は次々と殉職していった。しかし、それはまだ終わりではなかった。
「お待たせ~。太陽光成(たいようこうせい)。」ベノムローズもまた、太陽光を蓄えていた。発射する。
「させるかよ──っ!」アリストが兵士たちの前に立ち、その光をまともに受け止めた。
周囲が真っ白に染まる。ベノムローズの光は、すべてを焼き尽くした。ただ一か所を除いて。
「よっ……大丈夫か、俺?……大丈夫に決まってるだろ、不死身のアリストだぜ。」
アリストの後ろにいる兵士たちの場所だけが、焼け残っていた。
「将軍さま!アリスト将軍!」兵士たちが叫ぶ。今、彼らに微笑みかけるアリストは、もはや人の形をしていなかった。
灼熱の光線により、鋼鉄のような肉体は酷く焼け爛れ、大部分が溶けていた。右手は完全に失われ、自慢の金髪はわずかに残るのみ。かつてのハンサムな顔も、瞼と顔の皮に重度の火傷を負い、もはや人相を留めていなかった。
ほんの少し離れた場所に、もう一つの焼死体があった。誰かわかるほどには焼けていないが。
アリストにはわかった。
「軍曹……見事な最後だった。」
アリストは彼に敬礼し、最後の突撃の準備をした。今、先頭の特攻隊は、彼ただ一人となっていた。
「なにをしてる!止まるんじゃない!あと少しで突破できる!俺がそれまで、お前たちの道を開く!」
残った片手で地面に落ちた剣を拾い、それを歯で噛み、散弾銃の装填を片手で済ませる。
「しぶとい……ゴキブリみたいな生命力でキモいわ。さっさとくたばりなさい。」ベノムローズはさらに太陽光成の準備を始めた。クロムスも新たな分裂体をけしかける。
「みんな、行け──!」伍長は涙をこらえ、生き残った兵士を率いて海岸へとダッシュした。
クロムスの分裂体が攻撃を仕掛ける。
バン!
アリストの散弾銃で吹き飛ばされた。アリストは壊れかけた体を引きずりながら、最前線でクロムスの分裂体を倒し続ける。しかし、ベノムローズにはまだ距離がある。彼女の太陽光成は、もはや防ぎようがない。アリストには、それを止める手段がなかった。
「炭になってしまいなさい、蛆虫どもめ。」ベノムローズが光を放とうとしたその時──太陽が消えた。当然、彼女の太陽光成も不発に終わる。
なぜ?なぜこの時に日蝕が?
それは、本陣の戦場でセリナとレンと対峙するノックターンが、「黙示の日蝕」を発動したからだ。彼は、今ベノムローズが何をしているか知らない。だが、その10分間の日蝕が、ベノムローズの太陽光成を一時的に封じた。
ベノムローズとクロムスが一瞬混乱した隙を見逃さず、アリストの部隊は最後のダッシュを決めた。
「しまった!」ベノムローズがようやく気付き、突破しようとする兵士たちを捕らえようとするが、太陽のない闇の中、彼女の動きは鈍く、ほとんど何も見えない。ノックターンのような吸血鬼とは逆に、植物である彼女は夜と闇に弱い。「クロムス!逃がすな!」
「……」クロムスもそうしたいが、アリストの激しい捨て身の攻勢の前では、そんな余裕はなかった。
10分はあっという間に過ぎ、世界に光が戻った。
「おのれ……逃がしたわね。」ベノムローズが活性を取り戻した時、アリストの部隊はもう、見る影もなく海岸線へ消えていた。
残されたのは、クロムスに包まれ、虫の息のアリストただ一人。
「まだ喰っちゃダメよ。よくもまあ、このあたしをこけにしたわね。いっぱい苦しんでから殺してあげる。その残骸はクロムスに食べさせてやるから。」
アリストはほとんど息をしていなかった。最後の意識で、彼は言葉を振り絞った。
「この……アリストの人生に……一片の悔いも……なし」
それを言い終えると、彼は意識を失った。
*
アリストの意識が途切れた。こんな彼が絶体絶命、
その瞬間──影が裂けた。
彼の影から一つのデスサイズが飛びだし彼を飲み込んでいるクロムスを両断した。
「あれ?もしかしてベル寝過ごしたデースか。人間界の時間は速すぎでベルには合わないデース。」
アリストの影から出た一人の黒いローブの赤髪女の子は片手でアリストを持ち上げた。
「まだ生きてよかった、もし死んだらベルが魔王様に怒られるデース。」
クロムスは先の斬撃で断面から黒い炎が燃え始めてみるからに苦しんでいれ。だけどその炎は消えないし、再生の速度も間に合わない。仕方なく燃やされていない部分を切れ捨て、本体を新たに再生した。
「誰がよ、あんた、あたしの楽しみを邪魔する気、殺すわよ。」ベノムローズはいきなり現れた彼女を不快思うっている。だけど、なぜか彼女に近くつたくない、あの人間の皮の下で何か形容し難いなにが潜んでいるように感じだ。
「人の名前を尋ねる時、まず自分が名乗るのが常識デース。でも、ベルは優しい娘なので教えるデース。」アリストを隣の地面に寝かせて。彼女はデスサイズをかまして名乗った
「地獄七十二柱の一つ、王クラス、暴食の悪魔ベリアル。食事に来たデース。」
「なに、それ聞いたことがない。」ベノムローズはコハクとノックターンのような古い時代の魔族ではなく、新世帯の魔族の彼女は悪魔の概念すらしらない。それが彼女の逃げるチャンスを逃れることになる。
クロムスはベリアルが気をベノムローズに取れられた隙に彼女の背後から襲った、デスサイズを避けて彼女だけを呑み込んだ。それを見てベノムローズは蔑むように笑った。
「ははは、なにか王よ、ただの間抜けじゃない、丁度あの男を痛めつける間のクロムスの前菜になるがいい。」
だが、彼女はすぐ異様を感じた、クロムスは苦しんでいる、なにもかも食べる悪食な彼は苦痛を耐えるように震えながら徐々に小さくなり、最後は黒い炎に喰らいつくした。
炎は消えなかにベリアルが現れた。
「美味いデース。食べ物が自らベルの「口」に入るだんで、サービス旺盛デースね。」ベリアルの黒いローブは黒い炎が燃えている。それも彼女の「口」であり進食器官とも言える。外から見てクロムスが彼女を吞み込んだだけど、実際クロムスこそまんまと彼女の口に入ったわけだ。「さって次はサラダを頂こうデース。」
ゆっくり地面に転がるデスサイズを拾上げたベリアルを見て、ベノムローズは始めて恐怖を知った。
クロムスは先でもうベリアルに食われた。言語能力がなくてもクロムスは四天王の一人、再生能力を長けている彼はまさかの死亡。まるで、食卓でデザートのゼリーを平らげたのようにあっさりだった。そんなベリアルはどのくらい強いのかベノムローズは嫌でもわかる。
(まずは毒花粉と寄生胞子で弱らせよ)と考えたベノムローズは花を咲かせ、黄色の粉末を空気に充満させた。この帝国軍を苦しませたものはベリアルから見て
「いい匂いデース。いただきますデース。」
ただのご馳走になれない。ベリアルは大きく息を吸い、空気中の花粉と胞子を全部体内に吸い込んだ。
「まだ足りない、まだ足りない、この日のご馳走のためにベルはご飯を五日も抜いたのに、これだけじゃ物足りないデース。」
狂気
あれだけ毒物を吸い込んで、苦しむどころか、さらに食欲を刺激した。先までハンター側にいるベノムローズは今、獲物になっている。彼女は目の前にいるベリアルの存在を理解できない。
「来るな!来るな!」完全に恐怖に支配されたベノムローズはもう何に振りかまわず、藤、枝、根色んなものを出してベリアルを消そうとしているが、ベリアルはただゆっくりデスサイズを振りかざして自分に向かわれるものをバサバサと薙ぎ払いつづ、ベノムローズに接近する。
「死ね、太陽光成!」彼女は最後の希望に縋る彼女の最強必殺技、この一撃に彼女のすべてを賭けた。光線は今まで以上の勢いででベリアルを撃ってくる。
「Abyss Harvest(アビス・ハーベスト))」
両手をデスサイズを握り、野球選手の打手がバットを振るように大きな斬撃を放った。
その一撃はベノムローズの光線を軽く両断し、その元にいるベノムローズすら、腰から真っ二つした。
大きな大木が切り倒されたように、彼女の上半身は重く地面に倒れた。再生の猶予を与えないように黒い炎は彼女を燃やした。
「ダーク…ソウル…様」
最後の言葉を残して、広がる黒い炎に吞み込また。
「ご馳走さまでした、味は薄かったが、ベルは満足したデース。後は」ベリアルは意識を失ったアリストを片手で引き上げて。「こいつを海にいる船たちに渡せはいいのデース?感謝しろよ、このベルがいなければ、お前はスライムの夜食になったデース。まあ、学園いた時およく菓子くれたし、悪魔として最低限の恩返しはするデース。」
アリストサイド、五日目終了。
大量の戦車を失ったため、彼らの手持ちの食料と水は多くない。今日中にこの森を抜け出せなければ、確実に遭難してしまうだろう。
「しかし、変だ……太陽が昇り、植物が活性化するはずなのに、ここまで歩いても襲撃がない。」アリストは、この一時的な安寧を不気味に感じていた。彼は幾度も四天王のベノムローズと戦い、彼女が如何に残忍で狡猾であるかを、嫌というほど知っていた。
「どっちにせよ、ここは彼女の庭。どう考えても、我々はその出方に備えることしかできないさ。」伍長はアリストの心配を理解できたが、現状をどうにかする方法はなかった。
「幸い、この進軍速度なら、もうすぐ抜けられると思うぞ。内陸の植物がどんどん減り、塩分耐性の高いマングローブやハママサキが多くなってきた。なにより……」軍曹は深く息を吸った。「この潮風……懐かしい。故郷の港を思い出す。」
「そういえば、軍曹は帝国港出身だったよな。なら海軍に入れば良かったのに、わざわざ俺の陸軍に来てくれて。」
「将軍さま、軍曹殿は金槌だぜ。海に落ちたらそのまま沈むだけさ。」伍長は隣にいる軍曹の秘密を軽くばらした。
「あの港は嫌いだった。飯が不味くて、海賊も多かった。でも……今、もう一度見たいと思うのは不思議なものだ。」
「伍長は?」
「え?俺か?俺は農業の町さ。あそこは小麦畑以外、何もないぜ。それに嫌気がさして家を出て、大都市の帝都に来て軍に入った。色んな新しいものを見られて満足してるさ。だけど、お袋のことは気になる……もう小麦が実る季節だ。婆さん一人でちゃんと回るか……」
「見に行けよ。農民になりたくなくて軍に入りたいって、お袋さんと喧嘩したんだろ?いい加減に仲直りしなよ。心配してくれる親は宝ものだぜ。」アリストは元気づけようと伍長の背中を叩いた。その元気な動作の裏で、彼は一抹の悲しげな表情を隠していた。
「将軍はどうなんです?」
「俺?俺は……」アリストの頭に、なぜかリディアの後ろ姿が浮かんだ。「気になる女の子ができたんだ。もし帰れたら……確かめたいことがある。」
「また女かよ!愛人か?それとも新しい愛人か?このクズ男がなぜそんなにもてるんだ!」軍曹は悔しさと嫉妬の炎を燃やした。
「違う違う!あれはそういうんじゃない!あの娘は恋人って感じより、娘みたいな……いや、なんでもない。忘れてくれ。」
(こんなに女遊びに耽って、娘のことには何の世話もしてこなかった男が、本当の父親だと名乗ったところで……彼女は喜ばないだろう。ならば、ここまででいいのかもしれない。)
「父親の風上にも置けないのに。」自虐のように、アリストは笑った。
(でも、もし本当に彼女が俺の娘なら……いい男に嫁に行く前に、少しは守ってあげたいな。俺みたいなクズ男に騙されないように。)
それぞれの思いを胸に、アリストたちはようやく海岸線を視認した。
「やった!抜けた!後は海軍に信号弾を……!」
皆が歓喜に沸くその時、アリストの気持ちは一気に氷点下まで沈んだ。
(この……牡丹とローズの花が混ざったような匂い。忘れはしない。)
「もうお帰りなのかい?冷たいねぇ……恒温動物なのに。せっかくなら、植物の情熱を見せてあげようか?」
茂みが出口を塞ぎ、そこに現れたのは、一昨日ぶりに再会するベノムローズと──
「……」
アリストの部隊を壊滅的敗北に追いやった元凶、クロムスだった。
*
「あは、いい……その表情。希望が砕け散る瞬間って、そそるわ。ここまで待った甲斐があったっていうものね。」
その言葉で、アリストたちは悟った。今まで生かされていたのは、生きる希望を与え、まさに助かると思った瞬間にそれを踏み躙るためだ。
絶望、恐怖、焦燥──様々な感情が場を満たす。先ほどまで闘志を燃やしていた兵士たちも、二人の四天王を前にすると、本能から湧き上がる怯えに逆らうのは難しい。大半の兵士は手足を震わせ、そのまま地面に崩れ落ちる者も少なくなかった。
「人類の文化に『狩り』ってあるじゃない?さあ、逃げてごらん。あたしにも、その狩りの喜びを教えてちょうだいな。あんたたちの命でね。」
ベノムローズの言葉がトリガーとなり、兵士たちが一斉に背を向け逃げ出そうとしたその時──
「長官の命令なき撤退は、ただの逃亡兵だ!そんな奴はもはや帝国軍の兵士ではない!腰抜けのチンカス野郎だ!」
混乱の真っ只中、アリストが雷のような声を上げた。
「我、帝国軍の勇敢なる兵士よ!死を恐れるか?否!我々が恐れるのは、無意味な死、惨めな死、仁義なき死だ!ならば、この場で逃げることこそ、我々が最も恐れるべきもの!我らの未来は後方ではなく、前方にある!だから──」アリストは剣を天に掲げ、そして前方へと向き直った。「前に進み、生きる道を開け!それで死ねるなら本望だ!今より我が軍は突撃する!逃げる者は帝国軍の恥として、敵に殺される前に、この破軍将軍アリストが散弾銃で撃ち殺してくれるわ!」
彼は片手の散弾銃を、後ろにいる兵士たちに向けた。
「将軍さまは……我々に死を命じるんですか?」軍曹は淡々と問いかけた。
「そうだ。敵の包囲を突破するためには、前方に立つ者は死ぬ。だが、そうしなければ生きる道はない。俺はその命令を下す。そして俺自身も、最前線を行く。」
「やれやれ……貧乏くじを引いたぜ。アリスト将軍……いや、アリストよ。俺は軍曹としてじゃなく、一人の男として、お前に命を預ける。」軍曹は自らの軍服から階級章を引きちぎり捨て、アリストの隣に立った。
それを見て、他の兵士たちも次々と階級章を捨てた。それは、死を覚悟した証だった。
「伍長、お前には待っている家族がいるじゃないか。後ろにいろ。一番先頭は、俺のように帰る場所のない男が務める。」
「ですが、俺は──」
「これは命令だ。我々は帰る場所があるからこそ、命を懸けて戦う。その理由を奪うんじゃない。」
「……畏まりました。将軍……必ず生きてください。」
「お前もな。大丈夫、俺は不死身のアリストだからな。」
陣形を矢鏑の形に整え、アリストを含めた特攻隊が道を開く。その隙に後方の部隊は海岸へ向かう。海岸は塩分濃度が高く、植物のベノムローズとスライムのクロムスにとっては追撃が難しい。つまり、この森を抜ければ勝利だ。
「つまらないわね。クロムスを猟犬代わりに狩りを楽しもうと思ったのに。もういい、あんたたち全員、あたしの盆栽の肥料になってちょうだい。」ベノムローズは、絶望に打ちひしがれた人間の最後を見られなかったことを残念そうにし、緑色の髪をいじった。
「……」
「はいはい、クロムスの分も残してあげるから。」どうやらクロムスが、自分の取り分を主張したらしい。この二人にとって、アリストたちは単なる食料──獲物が捕食者に逆らうのは道化以外の何物でもなかった。
「もういい?最後の遺言も書き終わったんでしょ?あたし優しいでしょ、まとまるまで待ってあげたのよ。」
「ああ、ありがとよ。お礼に、この銃でてめえの脳天をぶっ飛ばしてやる。」
幾度となく対決を重ねてきたアリストとベノムローズ。今回こそ、決着がつく。
「全軍、突撃──!」
アリストの号令と共に、残存する戦車を先頭に、壁となって進路を切り開く。
「学習能力がないの?クロムス、さっさと片付けて。」前回と同じく、クロムスは分裂体を地面に潜ませ、地雷のように戦車を襲わせた。戦車の隙間から車内へ侵入しようとするが、今回は違った。
「スライム野郎、これでも喰らいやがれ!」戦車内には大量のマングローブの枯葉が詰め込まれていた。マングローブの葉には塩腺があり、余分な塩分を排出するため、表面には塩の結晶が付着していることもある。枯葉には老廃物として濃縮された塩分が蓄積されており、周囲の土壌よりもはるかに塩分濃度が高い。
その浸透圧により、クロムスの分裂体はたちまち脱水し、退縮していった。
「よし、成功だ!大将があいつの弱点が塩だと事前に教えてくれて助かった!歩兵たち、カタパルトに詰めた塩を分裂体にぶつけろ!」
「了解!清めよ、ほれっ!」食料を多く運ばなかったのには、もう一つの理由があった。クロムス対策として、塩の確保を最優先したのだ。食塩では分裂体を完全に殺せないが、駆逐するだけなら可能だ。
「助かるぜ!このまま一気に突破するぞ!」
第一の難関、突破。
「なにしてるの、クロムス!役立たず!そんなに後ろの兵士が欲しいの?でも戦車がなければ、あたしの毒花粉と寄生胞子に耐えられるかしらね。」ベノムローズは自らの花を開き、花粉を拡散しようとする。
「発砲!」前列の戦車が、除草剤の砲弾をベノムローズに向けて発射した。これは本来、植物専用に開発されたものだ。当然、花粉や胞子にも同様に作用する。砲弾は空中で炸裂し、ドクター特製の除草剤をばら撒いた。
「なにこれ……痛っ!あたしの自慢のお肌が!」除草剤がベノムローズに降り注ぐと、その表面がみるみる枯れていった。ベノムローズは初めてこれを喰らったが、植物である彼女は、これが何発も当たれば危険だということを直感した。「クロムス、今から太陽光成(たいようこうせい)を撃つから、時間を稼いで!」
「……」
指示を受けたクロムスは、さらに分裂体を放出した。しかし今回は、いつもの青色ではなく──赤色だった。
(赤色分裂体……!見たことのない能力だ。戦車を避けさせると後ろの歩兵が危ない……受けるしかないか?)
赤色分裂体は青色よりも速い。素早く戦車に取り付き、包み込む。
「まさか……脱出しろ──!」
アリストの指示が終わらぬうちに、赤色分裂体が急速に温度を上昇させ──
バン――――――!!!
激しく爆発した。その威力は絶大で、頑丈な戦車も一瞬で鉄屑と化した。当然、中にいた兵士たちが無事であるはずがない。
赤色分裂体は、自身の体温を短時間で極限まで高めることで、体内の水分を大量の水素に変え、その反応を利用した自爆攻撃だった。まさか、まだこんな手を隠し持っていたとは。
爆発が次々と鳴り響く。分裂体の自爆により、前方の戦車特攻隊は次々と殉職していった。しかし、それはまだ終わりではなかった。
「お待たせ~。太陽光成(たいようこうせい)。」ベノムローズもまた、太陽光を蓄えていた。発射する。
「させるかよ──っ!」アリストが兵士たちの前に立ち、その光をまともに受け止めた。
周囲が真っ白に染まる。ベノムローズの光は、すべてを焼き尽くした。ただ一か所を除いて。
「よっ……大丈夫か、俺?……大丈夫に決まってるだろ、不死身のアリストだぜ。」
アリストの後ろにいる兵士たちの場所だけが、焼け残っていた。
「将軍さま!アリスト将軍!」兵士たちが叫ぶ。今、彼らに微笑みかけるアリストは、もはや人の形をしていなかった。
灼熱の光線により、鋼鉄のような肉体は酷く焼け爛れ、大部分が溶けていた。右手は完全に失われ、自慢の金髪はわずかに残るのみ。かつてのハンサムな顔も、瞼と顔の皮に重度の火傷を負い、もはや人相を留めていなかった。
ほんの少し離れた場所に、もう一つの焼死体があった。誰かわかるほどには焼けていないが。
アリストにはわかった。
「軍曹……見事な最後だった。」
アリストは彼に敬礼し、最後の突撃の準備をした。今、先頭の特攻隊は、彼ただ一人となっていた。
「なにをしてる!止まるんじゃない!あと少しで突破できる!俺がそれまで、お前たちの道を開く!」
残った片手で地面に落ちた剣を拾い、それを歯で噛み、散弾銃の装填を片手で済ませる。
「しぶとい……ゴキブリみたいな生命力でキモいわ。さっさとくたばりなさい。」ベノムローズはさらに太陽光成の準備を始めた。クロムスも新たな分裂体をけしかける。
「みんな、行け──!」伍長は涙をこらえ、生き残った兵士を率いて海岸へとダッシュした。
クロムスの分裂体が攻撃を仕掛ける。
バン!
アリストの散弾銃で吹き飛ばされた。アリストは壊れかけた体を引きずりながら、最前線でクロムスの分裂体を倒し続ける。しかし、ベノムローズにはまだ距離がある。彼女の太陽光成は、もはや防ぎようがない。アリストには、それを止める手段がなかった。
「炭になってしまいなさい、蛆虫どもめ。」ベノムローズが光を放とうとしたその時──太陽が消えた。当然、彼女の太陽光成も不発に終わる。
なぜ?なぜこの時に日蝕が?
それは、本陣の戦場でセリナとレンと対峙するノックターンが、「黙示の日蝕」を発動したからだ。彼は、今ベノムローズが何をしているか知らない。だが、その10分間の日蝕が、ベノムローズの太陽光成を一時的に封じた。
ベノムローズとクロムスが一瞬混乱した隙を見逃さず、アリストの部隊は最後のダッシュを決めた。
「しまった!」ベノムローズがようやく気付き、突破しようとする兵士たちを捕らえようとするが、太陽のない闇の中、彼女の動きは鈍く、ほとんど何も見えない。ノックターンのような吸血鬼とは逆に、植物である彼女は夜と闇に弱い。「クロムス!逃がすな!」
「……」クロムスもそうしたいが、アリストの激しい捨て身の攻勢の前では、そんな余裕はなかった。
10分はあっという間に過ぎ、世界に光が戻った。
「おのれ……逃がしたわね。」ベノムローズが活性を取り戻した時、アリストの部隊はもう、見る影もなく海岸線へ消えていた。
残されたのは、クロムスに包まれ、虫の息のアリストただ一人。
「まだ喰っちゃダメよ。よくもまあ、このあたしをこけにしたわね。いっぱい苦しんでから殺してあげる。その残骸はクロムスに食べさせてやるから。」
アリストはほとんど息をしていなかった。最後の意識で、彼は言葉を振り絞った。
「この……アリストの人生に……一片の悔いも……なし」
それを言い終えると、彼は意識を失った。
*
アリストの意識が途切れた。こんな彼が絶体絶命、
その瞬間──影が裂けた。
彼の影から一つのデスサイズが飛びだし彼を飲み込んでいるクロムスを両断した。
「あれ?もしかしてベル寝過ごしたデースか。人間界の時間は速すぎでベルには合わないデース。」
アリストの影から出た一人の黒いローブの赤髪女の子は片手でアリストを持ち上げた。
「まだ生きてよかった、もし死んだらベルが魔王様に怒られるデース。」
クロムスは先の斬撃で断面から黒い炎が燃え始めてみるからに苦しんでいれ。だけどその炎は消えないし、再生の速度も間に合わない。仕方なく燃やされていない部分を切れ捨て、本体を新たに再生した。
「誰がよ、あんた、あたしの楽しみを邪魔する気、殺すわよ。」ベノムローズはいきなり現れた彼女を不快思うっている。だけど、なぜか彼女に近くつたくない、あの人間の皮の下で何か形容し難いなにが潜んでいるように感じだ。
「人の名前を尋ねる時、まず自分が名乗るのが常識デース。でも、ベルは優しい娘なので教えるデース。」アリストを隣の地面に寝かせて。彼女はデスサイズをかまして名乗った
「地獄七十二柱の一つ、王クラス、暴食の悪魔ベリアル。食事に来たデース。」
「なに、それ聞いたことがない。」ベノムローズはコハクとノックターンのような古い時代の魔族ではなく、新世帯の魔族の彼女は悪魔の概念すらしらない。それが彼女の逃げるチャンスを逃れることになる。
クロムスはベリアルが気をベノムローズに取れられた隙に彼女の背後から襲った、デスサイズを避けて彼女だけを呑み込んだ。それを見てベノムローズは蔑むように笑った。
「ははは、なにか王よ、ただの間抜けじゃない、丁度あの男を痛めつける間のクロムスの前菜になるがいい。」
だが、彼女はすぐ異様を感じた、クロムスは苦しんでいる、なにもかも食べる悪食な彼は苦痛を耐えるように震えながら徐々に小さくなり、最後は黒い炎に喰らいつくした。
炎は消えなかにベリアルが現れた。
「美味いデース。食べ物が自らベルの「口」に入るだんで、サービス旺盛デースね。」ベリアルの黒いローブは黒い炎が燃えている。それも彼女の「口」であり進食器官とも言える。外から見てクロムスが彼女を吞み込んだだけど、実際クロムスこそまんまと彼女の口に入ったわけだ。「さって次はサラダを頂こうデース。」
ゆっくり地面に転がるデスサイズを拾上げたベリアルを見て、ベノムローズは始めて恐怖を知った。
クロムスは先でもうベリアルに食われた。言語能力がなくてもクロムスは四天王の一人、再生能力を長けている彼はまさかの死亡。まるで、食卓でデザートのゼリーを平らげたのようにあっさりだった。そんなベリアルはどのくらい強いのかベノムローズは嫌でもわかる。
(まずは毒花粉と寄生胞子で弱らせよ)と考えたベノムローズは花を咲かせ、黄色の粉末を空気に充満させた。この帝国軍を苦しませたものはベリアルから見て
「いい匂いデース。いただきますデース。」
ただのご馳走になれない。ベリアルは大きく息を吸い、空気中の花粉と胞子を全部体内に吸い込んだ。
「まだ足りない、まだ足りない、この日のご馳走のためにベルはご飯を五日も抜いたのに、これだけじゃ物足りないデース。」
狂気
あれだけ毒物を吸い込んで、苦しむどころか、さらに食欲を刺激した。先までハンター側にいるベノムローズは今、獲物になっている。彼女は目の前にいるベリアルの存在を理解できない。
「来るな!来るな!」完全に恐怖に支配されたベノムローズはもう何に振りかまわず、藤、枝、根色んなものを出してベリアルを消そうとしているが、ベリアルはただゆっくりデスサイズを振りかざして自分に向かわれるものをバサバサと薙ぎ払いつづ、ベノムローズに接近する。
「死ね、太陽光成!」彼女は最後の希望に縋る彼女の最強必殺技、この一撃に彼女のすべてを賭けた。光線は今まで以上の勢いででベリアルを撃ってくる。
「Abyss Harvest(アビス・ハーベスト))」
両手をデスサイズを握り、野球選手の打手がバットを振るように大きな斬撃を放った。
その一撃はベノムローズの光線を軽く両断し、その元にいるベノムローズすら、腰から真っ二つした。
大きな大木が切り倒されたように、彼女の上半身は重く地面に倒れた。再生の猶予を与えないように黒い炎は彼女を燃やした。
「ダーク…ソウル…様」
最後の言葉を残して、広がる黒い炎に吞み込また。
「ご馳走さまでした、味は薄かったが、ベルは満足したデース。後は」ベリアルは意識を失ったアリストを片手で引き上げて。「こいつを海にいる船たちに渡せはいいのデース?感謝しろよ、このベルがいなければ、お前はスライムの夜食になったデース。まあ、学園いた時およく菓子くれたし、悪魔として最低限の恩返しはするデース。」
アリストサイド、五日目終了。
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