まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第八章:散るは忠誠、燃ゆるは誇り――約束の交差点、勇者計画の終焉

第152話:戦争六日目──七十二の門が開く時、地獄は再び世界に満ちる

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余の父は八咫烏、世界を照らす太陽である、
余の母は雷鳥、世界に恐れられ雷電である。
その間で生まれたのは余である。
「お前が太陽の子?ただのヒヨコじゃないか、俺に付くか、死ぬか選べよ。」
この高い身分から愚かで名を馳せたい下種なものに絡まれた、
「きゃあああ!」
そいつらを全部余の燃やしたか、余の雷で葬った。
それ余は初めて実感した。
余は強い。余は特別だ、余こそこの世界を支配すべき者だ。
「ほう、余に従うと?いいだろ、余は寛大だ。せいぜい余の番犬として働くといい」
スライムキングのクロムスは余を見た瞬間実力の差を理解して投降した、まあ当然だろ。
「参りました。あなた様に忠誠を誓います。」
「大義である」
万年生きた地竜エンシェント、他の雑魚より強いが余からみたらちょっと硬いだけの蜥蜴、余の乗り物として合格だ。
「ダークソウル様、お慕い申し上げます。どうかお傍に置いてください。」
クイーンフラワーのベノムローズ、余の女になりたいと余に会いに来た。余は力を示した後で女には困らなかったが、彼女のような体から花の香をする女は余は気に入った。その体液は花の蜜の味をして、実に良い。
余は太陽の子、植物の彼女がそうなるのも当たり前のことだ。
「殺せ、あなたの太陽の光を使えばできるはずだ。」
「断る、余は貴様の自殺するための道具じゃない、死にたければ余のために働いて死ね。」
ヴァンパイア真祖のノックターン、大した奴だ、余でも少し手こずだ。死んだ人間の妻とまだ会うため死に場所を探したとは、真祖の名が泣く。女なんでなくなったまだ新しいのを探すばいい。バカな奴。
「ここまでの力があるとはの、わらわの負けなのじゃ。」
「貴様が魔王か、いや元魔王、小細工が好きだが、絶対なる王の前じゃそんなものは通じない。今日から余が魔王。貴様の時代は終わった。」
九尾の狐コハク、その狡猾の性根で魔王の座まで登ったか、所詮こそこそで裏をかきまわる小物。真の王その力だけですべてをひれ伏す。
そう、余のように。
こうして余は魔王となり、余に忠誠を誓ったその者たちに四天王の座を与えた。
しかし、すべてを手に入った余は退屈をもたらした。丁度その時。
「帝国の女帝?ほう、女如き帝王を名乗るか、面白い。」
ベノムローズは母系社会の植物種族だからのクイーン。しかし、人間は父系社会その中で王に昇るとは、ベットとして一匹飼いたいね。
「ダークソウル様、あの人間のメスは既にほかの人間と交わっており、汚らわしいと思います。あなた様にふさわくありませんわ。」
自分の地位を脅かされそうで嫉妬しているのか?ベノムローズ。愛い奴め。
「当然だ、人間のような下等生物と交わる気はない、余の格がおちる、しかし余の退屈を紛わせる愛玩動物があってもいい。そうだな、調教はベノムローズに任せるといい、余のためにいい声で歌えるカナリアになるために。」
「はい。ダークソウル様、あのメスを自分の立場を分からせるようにしますわ。」
「いいえ、今は聖剣を持っている王国の勇者を先にどうにかすべきなのじゃ。それに帝国は魔界大陸と遠い、適した判断とは、あああ」
余の意見に口答えするとは、狐めまだ自分が魔王のつもりているか。身の程しれ。
雷を落とし奴を黙らせた。
「貴様如きで遅れを取った勇者に余の視界に入る前に消炭になるだろ、帝国に攻めて、そしてその女帝を余の前に連れてこい、これは魔王の命令だ。」
「「「「かしこまりました。魔王様」」」」
そう、余こそこの世界の王である。

しかし、今、負け知らずのダークソウルは初めて苦戦に陥っていた。
「アリスト将軍の容態はどうですか。」
「今、危険な時期を脱しました。すごい…普通の人ならとっくに死んでいたはずなのに。これが『不死身のアリスト』ですね。」
一日に及ぶ手術と治療の甲斐あって、アリストは今回もまた、死神の手から逃れることができた。
「ありがとうございます!本当に、本当にありがとうございます!」伍長を含む生き残った陸軍兵士たちは、ベリアルに深く頭を下げ、感謝の意を表した。
「それはいいデース。でも、もっと食べ物をくれるのデース?」
ベリアルは干し肉を頬張りながら、今の食事に夢中のようだった。
「しかし、よろしいでしょうか?期限が迫っている保存食ばかりで、英雄様にはもっと良いものを…」
「いいデース。いいデース。ベルは質より量重視デースから。サラダとデザートは食べたから、もっとガッツリした肉が食べたいのデース。」
海沿いで海軍と合流できたため、食料に困ることもなくなった。今はドクターからの指示を受け、帝国へ帰還する途中だった。
「レーダーに反応あり!上空から何かが落ちてきます!」
「まだ魔王軍が!?全員、戦闘準備!」
「いや、何か違う…攻めてくるというより、ただ落ちてくるだけだ。黒い…太陽が!」
艦隊の遥か上空、黒い火の塊が空から海へと墜落した。
大きな波を起こし、その高熱で一部の海水は瞬時に蒸発した。そしてすぐに、黒い鳥が海底から飛び立ち、その一連の動作が小さな津波を引き起こす。
「回避せよ!回避せよ!」
「ダメです!前方は蒸発で海水が引いており、後方には20メートル級の波が迫っています!逃げ場がありません!」
天から降りかかる災難──まさにこのことだ。死地を脱したと思ったら、再び死地へと追いやられるとは。
「揺れすぎデース。食事の邪魔じゃないデースか。」
船の激しい揺れに不快感を覚えたベリアルは、デスサイズを手に甲板に立ち、それを高く掲げた。
「『Shadow Blaze Rift(シャドウ・ブレイズ・リフト)』。」
重々しく振り下ろす。
黒い炎に包まれた斬撃が、迫り来る津波の壁を真っ二つに切り裂いた。その炎は余分な海水をも焼き尽くし、海面は静寂を取り戻した。
「海水、しょっぱいな。もともと干し肉がしょっぱいのに…ねえ、オレンジジュースないデースか?」
「は、はい…こちらでどうぞ…」
「え…嘘だろ…」
まるで今までのことが夢であったかのように。しかし、一つだけはっきり分かった。ベリアルが、再び彼らを救ったということだ。

一方、本陣では──
「オーライ!オーライ!」
「第12空挺隊、帰還を確認しました!」
三日目にワイパンの襲撃を受け、大きな損害を被った彼らは、その後も追撃を振り切り続け、本陣へ誘引しないよう何日も遠回りをしてようやくワイパンを完全に撒き、帰還を果たしていた。二十隊あった空挺隊の生き残りは半数にも満たず、飛行機とパイロットの損失はさらに甚だしかった。なによりも──
「俺はエンプラ将軍を探しに行く。飛行機が国のものなら、許可が降りない限り歩いていく。」
「許可できません。今は撤退命令が出ています。そんな単独行動を許すわけにはいきません。」
「将軍はまだ生きています。俺は見ました──山地エリアから立ち上ったあのキノコ雲を。あれは将軍以外にありえません。俺は長官を置き去りにして国には戻れない。」
「俺もだ!」
「僕も!」
エンプラは空挺部隊の兵士全員から、娘や妹のように愛されていた。例え命令違反となろうと、彼らは自分たちの小さな将軍を取り戻したいのだ。
「ちょっと…困ります。総指揮室のドクター閣下はどうお考えですか?」
「それが…」
「魔王…じゃなかった、ドクター?あのロボの子に乗って前線にいるけどね♪さっきまでここにいたのは、アスにゃんが蜘蛛の糸で作ったデコイ(偽物)だけど♡ね?アスにゃんの物真似、結構似てたでしょ?」
総指揮室にはドクターの姿はなく、小さな狐のロリ少女を抱きしめている金髪ギャル、アスモデウスがいただけだった。
「あんた、地獄に戻ったんじゃなかったのか…」
「やっホロー♪レンレン、無沙汰だね♡アスにゃん、寂しかったよ。まだ恋の悩みがあるなら、アスにゃんの『恋愛相談所』にいつでも来てね♪」
「行かない。それに、レンレンって呼ぶな。それより、その子は誰だ?あんたと同じ悪魔か?」
「ああ、この子?この子はね、アスにゃんの恋愛相談所のマスコットなんだ♪コハクちゃん、みんなにご挨拶は?」
借りてきた猫──いや、狐のように、ただ黙り込み、アスモデウスの腕の中で微かに震えている。彼女の爪が震え音がした、尻尾も丸まった、冷や汗で綺麗な小麦色の毛を濡らした。
「あら、可愛いわね。でも──」モリアがコハクに近づき、彼女にだけ聞こえる小さな声で囁いた。「次はないわ」
コハクの心の芯まで凍りつくような寒さだった。モリアに化けてドクター暗殺を図ったことが、彼女が思っていた以上に深い罪であったことを痛感した。
「わ、わらわはコハクなのじゃ…初めて人に化けられるようになった、幼き狐娘なのじゃ。アスモデウス様にお拾いいただき、恋愛相談所のマスコットとして頑張るのじゃ。」精一杯の無害な演技。これも、生きて息子のティアノに再び会うための、母としての演技だった。
「ちょっと…可愛いかも。俺もその尻尾、もふもふしてみたい…」少なくともレンには効き目があった。
「レン君、何をしているんですか。マオウさんを探しに行きましょうよ。」
セリナはドクターがエンプラに乗っていることを知り、一刻も早く彼を探しに行く準備をしていた。
「いや…あいつなら、大丈夫だと思うけど…」
(だって、本物の魔王だし…)と、レンはさすがに口にできなかった。
「セリナも、そのくらいは分かっています。でも、マオウさんと一緒に戦いたいんです。」
「セリナ…」レンの喉が詰まる。レンは知っていた。いずれセリナは、ドクター(マオウ)が魔王であるという真実と直面しなければならない。その事実に彼女が耐えられるかどうか、わからなかった。
「探す必要はないわ。だって、もう来ているもの。ふふふ。」
モリアが指さした空の彼方には──
「黒い…三本足の鳥?」
「巨大なロボット…!?」
黒い炎をまとい燃え盛る神鳥ダークソウルと、エンプラたちが合体した巨大ロボットが、激しい戦いを繰り広げていた。

「報告します。ダークソウル(神鳥形態)は、これより五つの攻撃パターンを繰り出すと推測されます。データは先ほど送信しました。とCVN-3は、愛しき創造者に自らの有能さをアピールしました。」
「爪や嘴による物理攻撃には、CVN-2、バリアを展開しなさい。炎や雷の場合は、CVN-1がアクセル操作による回避を最優先。避けられないと判断した場合は、私が魔法シールドを展開する。緊急ボタンを押すように。」
「承知いたしました。現在、目標の動きから炎のブレスと推測します。ただしフェイントを警戒し、十分な距離を維持します。とCVN-1は、尊敬する創造者の口調を真似て、いかに初号機が優れているかを示しました。」
そして、ダークソウルはエンプラシステムの演算結果通りに動き、炎のブレスを放った。当然、事前に準備していたビッグEには避けられ、反撃の機会を与える結果となった。
「武器は窒素冷凍砲だ。照準と射撃はCVN-4に任せる。撃ったら直ちに移動しろ。一か所に留まるな。」
「承知いたしました。さあ、暑苦しそうな焼き鳥さんを、冷まして差し上げましょう。と敬愛する創造者を前に、CVN-4は不慣れなジョークを披露しました。」
ビッグEは四次元武器庫から冷凍砲を取り出し、一瞬で装填、照準を済ませて発砲した。
翼に直撃したダークソウルはバランスを失い、海へと墜落していく。
「CVN-4、下方に味方艦隊の反応があります。焼き鳥の墜落による損害は幸いなかったようですが、考慮が不足していました。はしゃぎすぎです。反省してください。とCVN-5は、CVN-4と同じく興奮しながらも、ミスは厳しく指摘すべきと判断しました。」
「Sorry。次回は墜落予想区域を推定してから発砲します。とCVN-4は申し訳なさそうに頭を下げました。」
「それより今は、ダークソウルから目を離すな。」
ダークソウルはすぐに海から飛び上がり、鋭い嘴でビッグEへの突撃を仕掛けてきた。
「そのパターンは予測済みです。バリアを展開します。とCVN-3は創造者に良いところを見せようと、漫画のインテリキャラのように決め台詞を言いました。」
バリアは速やかに展開され、ダークソウルの鋭い嘴の一撃を防いだ──と思われた瞬間、その嘴から黒い電流が流れ出し、ビッグEを襲った。
「強烈な電流反応。対象は物理攻撃をフェイントとし、魔法攻撃を混合したと推測します。とCVN-2は分析し、そのしぶとさにうんざりした口調を加えました。」
「機体損傷7%。直ちにナノマシン・メンテナンスシステムを起動し、修復します。とCVN-5はアクシデントに迅速に対処しました。」
「あの…吾輩はなにか手伝えることは…」
「「「「「ないです」」」」」CVN-1からCVN-5まで全員が、即座にCVN-6の申し出を断った。
「酷いでありまか!吾輩は頭部ユニット、リーダーでありますよ!」
「頭部は戦闘専門外で指示を出す場所だ。君には向いていない。だから私が代わりにやっているんだろうが…CVN-1、あいつを別の場所に誘導しろ。ここは味方が多い。」
実際、最初に指揮を執ろうとしたエンプラは、他の五体の情報を処理しきれずダウンしてしまった。代わりにドクター本人がメインコンピューターの機能を代行し、指揮を執っていた。「なんで頭部を選んだんだ…君は頭を使う仕事に向いていないだろうに…」
「だって、だって、頭の方がかっこいいでありますよ!」
「「「「「……」」」」」全員が沈黙した。

(しかし、埒が明かないな…)
ビッグEは片手でダークソウルの三本の足の一本を掴み、まるで雑巾で床を叩くように、振りかぶった。
「待て、貴様は──」
ダークソウルの威厳に満ちた抗議の声は、次の瞬間、物理的に打ち砕かれる。
バシン! バシン! バシン! バシン!
左右へ。右から左へ。弧を描くビッグEの腕。その先で、黒炎と黒雷をまとった神鳥の巨体が、おもちゃのように地面へ叩きつけられる。一撃ごとに地面が凹み、ひび割れ、ダークソウルの体が跳ね上がる。散らばった黒い羽、漆黒の骨が軋む不様な音を立てて転がっていく。
「──か、余は太陽の子である……貴様のような──」
微かに漏れる声は、苦痛と屈辱に震えている。ビッグEは一切止まらない。ダークソウルの足を握ったまま、振り子の運動を繰り返す。
バタン! バシッ! ゴン!
最後の一撃は特に強烈で、ダークソウルの身体は地面に深い窪みを作った。
しかしそれでも、ダークソウルは倒れない。傷はすぐに治り、立ち上がり、再び攻撃を仕掛けてくる。魔法で倒しても、まだ復活する。
(なるほど…神格を持つ者は死なないのか。ヴァンパイアのような不死とはまた違って、真の意味で死なない。)
正直に言うと、エンプラシステムは既にダークソウルの全ての行動パターンを学習し、ドクターなしでも自律的に対処できる。しかし、殺せないのはどうしようもなかった。
(まあいい。セリナ君がこいつを殺せないなら、こいつは私の勇者育成計画には不要だ。セリナ君はもう十二分に最強の勇者として成長し、世に認められた。そろそろ潮時かもしれんな。)
毛玉のドクターは、ゆっくりと席から立ち上がった。
「ドクター?」エンプラは、ドクターの雰囲気から少しの不安を感じた。
「あいつを仕留めてくる。残業しても残業代は出ないからな。」
「帰ってくるでありますか?」
「バカ。お前たちを捨てたいなら、こんな戦争に付き合ったりしないよ。」
毛玉は空間魔法を使い、操縦室から消えた。

「よう!いい加減死んでくれないかな。もうそれ以上の技も力もないんだろ?」
毛玉が出現した先は、ダークソウルの目の前だった。
「それが…コハクらが恐れたドクターの正体か。小さい…塵のような存在が!」
空から黒い雷が落ち、毛玉を直撃した。しかし、電流は毛玉の体を流れることなく、彼の指先へと集中していった。
「これも飽きたな。君も学習しろよ。ガキのようにただ力を振り回すのではなく、戦い方を学べ。子供の喧嘩に付き合いたくないんだ。」
「余の雷を受けたくらいでいい気になるな!たかが毛玉の分際で!」
ダークソウルは翼を激しく羽ばたかせ、黒炎を吹き出した。しかしそれも毛玉を燃やすことなく、同じくその指先へと集まっていく。
「圧倒的な力を持って生まれた者は、戦い方を知らなくても大抵の相手に勝つ。まるで明けの明星(ルキエル)のように。だが、君には彼ほどの強さはない。だから、彼のような戦い方をした君は、敗れる。」
毛玉の指先に集った二つの属性の魔力は、青白い光へと変質した。ダークソウルはそれを知っていた。
液体窒素だ。自分の魔力は、彼によって性質転換され、全く別のものになってしまった。
魔法は通用しない。物理攻撃のみで攻めねば──ダークソウルは初めて戦い方を考え始めたが、もはや反撃の機会は与えられなかった。
毛玉が放った液体窒素はダークソウルに命中し、全身を凍結させた。しかも今回は前回と違い、氷が彼の炎を吸収している。危険を感じたダークソウルは氷を破ったが、もはや神鳥の形態を維持できず、人間の姿に戻った。
「ありえない…そこまでの力を持ちながら、なぜ今までそれを示さなかった?」
「だから、君はヒヨコなんだよ。手の内を簡単に見せたらどうする。私はずっと君の強さを測っていた。魔王を名乗るからには、それなりの実力があると思い込んでいた。だが、君との長い戦いもいよいよマンネリ化した。君の底を知って、がっかりだよ。ここまで時間をかけるべき相手ではなかった。」
「余は魔王だ!この世界の王である!今は貴様を倒せないが、貴様も余を殺せぬ!余にはたっぷり時間がある…貴様を倒すためにな!」例え今、実力の差を知ったとしても、ダークソウルは未来の自分が必ず彼に勝てると信じていた。最後に勝つのは自分だと、疑ったこともない。
「魔王か。その称号も随分安くなったな。まあ、終わりにしよう。この不毛な戦いも、私の勇者育成計画も。」
毛玉は手を上げ、詠唱を始めた。普段は魔法を詠唱することのない彼が詠唱する時──それは地獄の門を開く時だった。
"Look to the sky, way up on high,
There in the night stars are now right."
(空高く 天を仰げ 今宵 星揃う時)
"Eons have passed: now then at last,
Prison walls break, Old Ones awake!"
(祈り得て 時を経て 眠りより 醒める神)
空に、七十二のシジルが刻まれた門が、世界のあちこちに出現した。
そして、一つ一つのシジルが開き、地獄の門が開かれる。
"They will return: mankind will learn,
New kinds of fear when they are here."
(やがて皆 例外な 存在を 識るだろう)
"They will reclaim all in their name;
Hopes turn to black when they come back."
(そして尚 真の名を 取り戻す 容赦なく)
門から現れ出るのは、そのシジルに相応しい悪魔たちだった。
あるものは牛、羊、人の三つの頭を持ち、
あるものは全身触手に覆われ、千の目を持ち、
あるものは不可名状の形をし、形容しがたい。
"Ignorant fools, mankind now rules
Where they ruled then: it's theirs again."
(痴れ者が 統べる地は 今一度 彼(か)の領土)
"Stars brightly burning, boiling and churning
Bode a returning season of doom."
(夜空から 星降れば 終焉には あと僅か)
世界は、かつてこの地を統べた者たちを思い出す。
悪魔──
神魔大戦で天使たちに敗れ、地獄に封じられた彼らが、
再びこの地へと戻ってきたのだ。
"Scary scary scary scary solstice,
Very very very scary solstice."
(戦々兢々(せんせんきょうきょう)たる凶 喧々囂々(けんけんごうごう)たる轟)
"Madness will reign, terror and pain,
Woes without end where they extend."
(狂乱と 恐慌と 凶変の 共演を)
艦船の上には、もはやベリアルの姿はない。
残されたのは、まだ飲み終わっていないオレンジジュースのグラスだけだった。
本陣にいたアスモデウスとモリアも、いつの間にか消えていた。
代わりにそこに刻まれたのは、これまでにない恐怖と絶望だった。
"Up from the sea, from underground,
Down from the sky, they're all around."
(虚海より 虚空より 場所問わず 這い寄る)
"Fear!
(恐れよ!)
They will return."
(主は来たる)
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