まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる

第72話:開幕!第百回・最強戦士武闘会!

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武闘会――

それは、戦士の町・デュエロポリスで毎年開催される、“最強の戦士”を決める大祭だ。

ルールはシンプルで明快。

1.参加資格は「戦士職」であること。

2.相手が倒れて10秒以内に立てなければ敗北。もしくは自らの降参も認められる。

3.相手を殺してはならない。

これは“戦い”であっても“殺し合い”ではない。

あくまで戦士たちの誇りを懸けた、真剣勝負の“運動会”。

命を賭けるものではないと、カズキ王がかつて語った通りだった。

そしてこの日が近づくたび、町の熱気は上昇していく。

「今年は誰が勝つんだ?」

「“旋風骨刃”リッパー・テンペストだろ。全身が武器みたいなもんだぜ!」

「いやいや、“砲撃拳”キャノン・ハンドだ。あの拳、一発で地面に穴が空くぞ!」

「王 小梅だな」

「それ言ったら、賭け事にならないって!」

そう――昨年まで三連覇を成し遂げた“拳姫”王 小梅が出場する限り、彼女以外に賭ける者などいない。

勝負前から勝者が決まっているようなもの。

それでも観客たちは祭りの熱狂を楽しみに、今日という日を待っていた。



古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる円形闘技場。

そこに、選ばれし戦士たちが集まっていた。

「皆さーんっ! 今年もやってきました、最強戦士武闘会ーっ!」

「さてさて、今年こそ王国人が優勝なるか……って、言いたいとこだけど、どうせ元帝国人の小梅が勝つに決まってるだろ?」

「うるさいですわ! 今年こそ王国人の反撃ですっ!」

公平を保つために、司会進行は王国人と元帝国人の二人が務めるのだが……試合前から早くもガチ喧嘩状態だった。

会場の観客たちも同じで、王国派と帝国派に分かれた応援席では、すでに小競り合いが始まっている。

「こほん、失礼しました。それでは今年の注目選手をご紹介していきましょう!」



【旋風骨刃】リッパー・テンペスト。

全身の骨を刃物のように変える特異体質の戦士。

その肉体は黒鋼のように硬く、筋肉も常人離れしている。

服は最低限、殺意は最大限。去年は準決勝まで進んだが、小梅に敗北した。

【影毒融合】ベノム・シャドウ。

全身黒装束で正体不明の暗殺者。影を操り、毒と一体化した特殊な戦闘スタイルで相手を翻弄する。

昼間の大会は不利なはずだが、昨年は準決勝直前まで勝ち上がった伏兵だ。

こうして、一人ひとり紹介されていく戦士たち。

やがて、我々の知る“特別枠”たちが登場する。



「続いては、今年初登場! 謎の美少女戦士“マサコ”! って、なんだあのおっぱい! でかすぎる!」

会場がざわつく。元王子マサキが、女体化したまま変名でエントリーしていた。

身元バレを避けるため、王子の本名は伏せたらしい。さすがにこの姿が広まったら王家が泣く。

「銀色の閃光! 王国最年少のオリハルコン冒険者、ユウキ様――わたしの推しです♡」

続いてはレン。男装していることもあり、こちらも本名未登録で助かった。

それにしても彼女の女性ファンの黄色い歓声がすごい。まさかこの町にまで届いているとは。

「そしてお待たせしました、三連覇の絶対王者! 大胆不敵、王 小梅!」

爆発的な声援と拍手。気の使い手である小梅の登場に、元帝国派は沸き立ち、王国派は沈黙する。

彼女の存在が、もはや「大会の定義」を変えつつあった。

「最後に……応募締切ギリギリで登録された、意外な参戦者!

当代の勇者であり、元メイド! ゴーストタウン事件を解決し、不夜城の真相を暴いた少女――セリナ!」

「……え?」

王子と王女、そして約一匹の毛玉が、ステージ上の意外すぎる顔ぶれに絶句した。

「それでは全選手、試合の公平と健闘を――最強の戦士ルキエル様に誓ってください!」

「「「第百回・最強戦士武闘会――開幕!!」」」

観客の歓声が爆発する。

その裏で、少女たちの“個人的な物語”も、静かに火蓋を切っていた。
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