まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第六章:奪われた王冠に、炎の誓いを――動乱の王都で少女は革命を選ぶ

第96話:師弟激突! 折れて、転がって、それでも前へ!

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「白虎砕山拳(びゃっこさいざんけん)」
それは岩すらも粉砕する、突進力を活かした渾身の剛拳。
師匠のこの一撃は重い。普段の修行でも容赦しないが、今日はさらに技に切れがある。それは現に――
「ぐあッ!」
腹に一撃を食らってしまった。
全身は糸が切れた人形のように倒れていく。くそっ、力が入らない。
熱血漫画の主人公たちは、どうやって何度も立ち上がる? こんなの無理だろ。精神論でどうにかなるダメージじゃないぞ。
「どうして止めるんだよ、師匠! 俺は……親を助けたいだけなのに!」
情けないが、情に訴えた。今の俺じゃ師匠には勝てない。
「小梅一人に勝てない弟子が行ったところで、死にに行くだけね。王国には何千、何万の兵士がいると思う?囲まれて、槍で突かれて、何もできずに死ぬ。小梅は、せっかく育てた弟子を犬死にさせたくないある。」
正論だ。彼女は正しい。俺ひとりでは何も変えられない。ただ死ぬだけかもしれない。無謀の極み――だけど!
「勇者ってのは、勇ましいだけの存在じゃない。絶対に勝てる戦いに挑むだけなら、そこに勇気なんていらない。勝てないかもしれないと知っていても――守りたいもののために立ち向かう、それが勇者なんだ!」
よし。時間稼ぎ成功。
師匠から習った“気”で、少しだけ体が回復できた。
俺は再び剣を握り、師匠に向かって突っ込む。――なんとしてでも、認めさせるまでやめられない。
「飛燕斜翔脚(ひえんしゃしょうきゃく)!」
師匠は斜め下から斬り上げるような一蹴りを俺に入れた、俺は“何か”が折れる音を聞いた。
……それは俺の足の骨だった。
「……あああ!」
痛い。痛い。痛い!! 痛すぎて、声すら出せない。
涙が止まらない。地面に足を抱えて転げ回る。
うそだろ!? バトルでいきなり足を狙ってくるやつなんて見たことない!
(そうか……これはバトル漫画じゃなかった。相手に立ち上がる隙なんて与えるわけがない……)
「何? これしきの痛みで、もうギャーギャー喚くあるか。死の痛みは、もっと上あるよ」
そして師匠は――俺のもう片方の足も、折った。
「あああああ!!」
脳にまで響く痛み。呼吸が乱れる。気が使えない。
「これで、王都へはいけないね。おとなしく足の怪我を直して、で――」
俺はダメになった足を引きずりながら、地面を這って前に進んだ。
「なんで……どいつもこいつも、そんなに死に急ぐある……」
師匠は、俺をもう一蹴り。俺の体は城内へと蹴り飛ばされた。
それでも、俺はあきらめず、城門に向かって這っていく。
――そして、さらに一蹴り。
「小梅は今まで、色んな弟子を取った。あなたは一人じゃないね。だけど、みんな最後には死んでしまったある。あなたにはわかるか?小梅がこれまで大切にしてきた弟子たちの遺品が、次々と手元に戻ってきた痛み悲しみが、今のあなたの痛みの、何倍、何十倍も痛いある!?」
さらにもう一蹴り。
「残された者の気持ちを考えるある! 一人で格好よく死んで満足かもしれない。でも、小梅はどうなる? あなたが今行っても、親を救えないし、あなたも死ぬ。それが小梅が止める理由。……それでも行くあるか?」
さらに――一蹴り。
……なんか、あの時のビンタを思い出したな。
あの時も、俺はバカなことして、レンに心配かけて――
今も、あの鋼鉄のような師匠が、悲しそうな顔して、涙ぐんでくれてるじゃないか。……お前はダメだな、マサキ。
……。その目に、光るものがこぼれ落ちるのを、俺は見た気がした。
「……ごめん、師匠。でも、俺……家族を見殺しにはできない。
もし、それができたなら――その時、“戦士”としての俺はもう死んでるよ。
あなたも戦士なら、わかってくれるはずだ。……誇りを失った戦士の末路は、死よりも惨めだってことを……」
「……」
師匠はしばらく沈黙した。
やがて、ゆっくり口を開いた。
「……どうせ死ぬなら、王都兵よりも――小梅が仕留めてあげるね」
彼女は息を深く吸い、必殺の一撃を振り下ろそうとした。
――これは避けられない。終わりだ。
……ごめん、父上、母上……助けられなかった。
ごめん、レン……全部、お前に背負わせることになって。
ごめん、師匠……また、悲しませることになってしまった。
俺は目を閉じて、死を待った。
「痛っ!?」
――殺されるはずの一撃は、ただの“デコピン”だった。
拍子抜けした、というより、一瞬、現実感が吹き飛んだ。
心臓の鼓動だけが、異様なほどうるさく聞こえていた。
「諦めが早いあるね。半人前が、口だけ達者で生意気。……だから、小梅も一緒についていってあげるある……この弟子も、きっとまた死んでしまうかもしれないね。でも、それでも……」
「今度こそ、小梅が守れるかもしれない」
あの、いつも“鬼のような”師匠が――
こんなに優しく、柔らかく笑うなんて。
なんか、すごく……可愛く見える。
心臓がドキドキする。これって吊り橋効果?
いや、そもそも死の危機を作ったのも師匠だし……でも……
俺は、ずっとこの人のそばにいたいと、思い始めていた。
「あ! よろしくお願いします、師匠!!」
俺は彼女が差し伸べた手を取った。
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