まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第六章:奪われた王冠に、炎の誓いを――動乱の王都で少女は革命を選ぶ

第97話:満月は斬れず、涙は止められない

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パーティー崩壊――って、皆さんもうご存知だよね。
今朝目を覚ますと、パーティーには私しか残っていなかった。
うそだろ。これがまさか、この前買ったタイトルが長い本のように。
私が追放されたわけじゃないよな……
ルーとモリアはいつものことだけど、セリナとレンもいないのはおかしいだろ。
机の上に、一通の手紙が置かれていたのを見つけた。
それはレンからの手紙だった。内容は一言だけ。
「パーティーから抜ける。すまん。」
だからセリナもいないか。同じ手紙を見ていて追いついただろ。
この前の王都からの噂か……
あの公爵、私と取引をやめ、一人で動き始めたか。私がその気じゃないのを読めたのを褒めるが。クーデターは愚策だな。まあ、そんなことは今はどうでもいい。これで行先は分かれば、探す手間は省く。

私は王都向かう道で気絶したセリナを発見した。
丁寧に魔物避けの冒険者の休憩小屋に寝かせるのはレンだな。
ほぼ間違いない。セリナはレンの単独行動を止めようとして、戦闘になり――負けたのだろう。
追い詰めたレンは、武闘会のようにいかないか。
段々セリナは目を覚ました。そして最初の一言は
「レン君!」
「レンならいないぞ。まったく、なんで私を呼ばない。武闘会で最強になって驕れたか。」
「すみません。手紙を見て、考える前に体が先に動いてしまいました。」
申し訳ないように頭をさげて謝る彼女を見て、これ以上責められなかった。私は朝になるまで気付かなかった。なまけたな、このパーティーの雰囲気に。
「レンは私が何とかする。君はちょっと休め。」
「私も!」
「無理するな。レンは峰打ちで斬ったが、打撃による傷も甘くない。これから彼女と王都行くなら、その傷は足かせになる。私が帰るまで治して来い。」
悔しそうに彼女は手を握りしめた。でも、最後は納得していた。
「レン君をお願い致します!」
「ああ、任された。」

山深くに彼女の姿が見えた。セリナ君が時間稼ぎしてくれた分、そこまで遠くには行っていないようだ。私はすぐ彼女の元へ駆けつけた。
「まだ、単独行動か。君はチームワークを理解していないのかね。不夜城の時に学習したと思うのだが。どうやらそうでもないな。」
「退け……でなければ斬る……」
酷い精神状態だ。前も思ったが、彼女は剣こそ一流だが、精神は年並みに繊細なんだ。簡単に自分を追い詰めてしまうほど。
「退かせてみろ、その剣で」
「月華一刀」――迷いなしの一閃。やはり速い、が。
「威力が人間に特化している。石を斬るといまいちだな」
「岩の盾を、あんなに短時間で」
これは魔法のカウンター技だ。攻撃を受ける際、即発動。魔力を練る必要はないが、短時間の防御の回数は一回しかない。レンの一閃系に相性がいい。でも、
「二段は普通に魔法で」
時間があれば普通に防御系の魔法で、それからの時間差二段一閃も防げる。私はレンの戦闘スタイルを熟知している。だけど彼女はそうではない。時間停止ですぐ決着をつけるのもいいが、それじゃ彼女は成長しないだろう。人間最強の戦士に真正面から完全な敗北を食らわせてやる。
「月下千華」――なるほど。一閃がダメなら今度は回数による斬撃で攻めてくるか。だが甘い!
初手の速さを捨てることは、相手に対策する時間を与えること。いくら斬撃が多くても、君の剣は対人に特化していて、その威力が足りないことは変わらない。氷の盾千枚貼り、すべての斬撃を防げていた。
しかし斬撃の塵が去ったあと、彼女の姿はいない。
なるほど、あれは目くらまし。か、本命は
「宵月霞(よいづきがすみ)」――塵にまぎれて私の背後を取り、死角から一撃を入れる。事前に予測しておけば怖くなんでもない。
私は爆風を起こし、彼女を吹っ飛ばした。体重が軽い分、こういうタイプの攻撃には弱い。ずっと研究していた。君がどんな技を持って、どんなスタイルで戦う、なにが得意、なにが苦手、逆境でどんな手を考える。そう、まるでかつて私が72柱の悪魔と対峙した時みたいに。
であれば、次に君がとる手は
「満月終焉剣(まんげつしゅうえんけん)」――突きの構えをしているが、あれも囮だ。彼女は戦闘開始からずっと息をためている。だからそろそろだ。
電光石火、疾風迅雷。凄まじい一撃。これが彼女の必殺の突き。しかし、その威力に引き換えに打撃の面が狭い。ただの一点しかない。故に、
「うそ……」
はずれやすい。特に私が先に氷の盾から大量の水蒸気を利用して、私の隣に蜃気楼を作ればね。でも君も外すのを予想していただろ。驚きの演技がへたすぎる。
彼女のもう片方の手は、気を纏っている。そっちの方にかけている。
「太極穿心打(たいきょくせんしんだ)」――すぐさま体勢を切り替え、拳の構えで強烈な一撃を放ち、私の体にぶちこんだ。物理に弱い私はなすすべもなく倒された。
……のわけないだろ。
魔法錬成・メタルスライム。
君が気を習得していることは知っている。いざという時、それで自分の火力不足を補うのも予想済み。なら、打撃に強い魔法生物は何? 答えはスライムだ。金属を入れ、さらに強度を上げ、メタルスライムを事前に体に隠していた。この時のためにね。
では授業は終わろう。今日はこれで足りるだろ。
私は指を彼女の心臓の位置に当てて告げた。
「チェックメイト」

彼女は負けを悟り、剣を離した。
なに、負けたのがそんなに悔しいのか。
と思ったら、彼女はついに口を開いた。
「行かせてくれ。俺は父様と母様を助けたいだ」
「いや無理だろ。ラム・ランデブーから王都まで間に合わないだろ」
「寝ず、食わず、死ぬ気で走れば間に合うかもしれない。いや、間に合わせてみせる」
「いや、例えそれで間に合うとしても、そんな状態の君は誰を救える? 仲良く死ぬだけだ。それに、あの公爵がすぐ王を処刑するのではなく、一週間待つのは、君とマサコを釣る罠だと、なぜ気がつかない」
「知っている。だけど、俺はまだ母様と喧嘩したままだ。そんな仲悪いまま別れるなんて、俺は嫌だ」
まだ泣いているね。強がりの君は、なぜ私の前ではそんなに泣き虫なのかね。
助けるより、一緒に死のうとしているのか君は。だからセリナと私を呼んでなかった。まだ14年しか生きていない小娘が、もう人生を飽きたか。まったくどうしようもないな。
だけど、この娘の涙を見ると心が痛い。ルーとモリアは、そんな顔を私に見せたことがない。だから私は、彼女と出会うまで知らなかった。大切な人が悲しむと、私も悲しくなるものだな。
「え?」
いつの間にか、私は彼女を抱きしめていた。彼女の泣き姿を見るに耐えられなかった。
「私に頼っていいんだ。君は甘えることを知るべきだ。すべてを自分一人で背負うことはない」
「俺はもう姫じゃない。懸賞令をかけられた罪人だ。そんな俺と一緒にいるべきじゃない。あんたまで……」
「いいじゃないか。私は児童誘拐犯で、覗き魔で、ホモで、そして――」
「魔王だ」
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