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最終章 ~本編に入らなかったお話~
本当のエピローグ ~フランの戴冠式~
しおりを挟む「お母様!」
「うん、もうすぐ準備できるから、お父様を呼んできてくれる?」
「はーい」
ばたばたーと、王宮に似つかわない足音に僕はくすりと笑う。今年五歳になる長男は旦那様そっくりな顔なのに、なぜか性格はお義母様に似ていて豪快だった。お義母様と一緒にたくさん笑って奮闘して息子を育てた僕としては、尊敬する王妃陛下に似ているのは嬉しく思う。
結婚してからもう十年が経つ。
長い間、フランは子どもを作ることを許してくれなかった。僕たちは長いすれ違いがあったからこそ、二人で過ごす時間が大切と言われたら、僕も納得した。
フランに愛されて、僕もフランを心の底から愛した。そんな満ち溢れた生活をしたある日、宣言より早く子を成すことをフランが許してくれた。二人が望んだ我が子は、国民からも両親たちからも愛されて、僕とフラン以外の人も積極的に子育てに参加してくれた。
子どもに僕を取られるというフランの心配は杞憂に終わり、今は二人目が僕のお腹にいる。それでも長男とは五歳離れてしまったけれど、それは仕方ない。僕もフランと二人の時を大切にしたかったし、長男にも精一杯の時間と愛情をかけてあげたかったから。ちなみに父様は孫にメロメロで、やっと僕という息子の子離れができたようで良かった。
フランの弟君は初めから相思相愛のご令嬢と恋愛をして、お互いがお互いしか知らない純愛を貫いている最中で、見ていてとってもほっこりして可愛い二人なんだ。フランが後宮制度を撤廃してから、王家の変なこだわりや決まりも廃止してくれたおかげで、誰も辛い思いをしないそんな王家の始まりだった。
そして、今日はフランの戴冠式。
二人目も生まれるし、フランのアルファとしての力もようやくいろんな意味で認められたのと、お義父様はお義母様と二人きりで色んなところに公務ではなくて自由に遊びに行きたいから、国王を譲るという話が決まった。
僕の両親、兄夫妻に甥っ子たちも来ているし、みんなに見守られてこの大切な日を迎えられることを嬉しく思う。兄は僕の結婚を見届けると、兼ねてからお付き合いをしていたご令嬢と無事に結婚した。回帰前の僕は、兄たちを悲しまい家族のその後を知ることはできなかったけれど、今は僕が望んでいた状況になっている。物思いにふけっていると、わんぱくな長男の足音が聞こえてきて、そこにフランがいた。
「シリル、用意できた? ああなんて可愛いんだ! まるで出会った頃のようだ」
うん、安定のフラン。出会った頃って三歳だけどね。フランはますますカッコよくなって、いつでもドキドキしちゃう。そういう意味では出会った頃のように僕はずっとフランに恋をしているんだから、似た者夫夫かな。
「フラン、とてもかっこいいよ」
僕の最愛の旦那様は、僕の元に駆け寄ってキスをする。彼の愛の証であるうなじにある噛み跡は、隠さずに今日は伸ばした髪をふわっとしたまとめ髪にしている。それを見て彼は微笑む。
「こんなに大きいお腹なのに、欠席してもいいんだ」
「大丈夫だよ、ずっとフランがいてくれるし、こんな大切な時に側にいない方が嫌だよ」
「ふふ、ありがとう」
フランと二人で笑った。そこで息子のアルフレッドが父親の正装を見て興奮していた。
「お父様、かっこいい!」
「ありがとう、お前も今日は決まっているよ。さすがシリルと私の息子だ、おいで」
父親大好きな我が子をフランが片手に抱き抱えて、僕は反対側に立ち、腰を支えられている。親子三人とお腹にあと一人、僕の大切な家族と進む。
「フラン……僕は何度だってあなたに還るからね」
「ん、シリル?」
「ううん。愛してるよ」
フランは優しく微笑む。そして僕も満面の笑みが、いつも通り自然に生まれる。
「シリル、私もシリルだけを永遠に愛している。さあ、行こうか」
遠くからは凄い歓声と祝福がすでに聞こえてくる。そして花が舞い散る中、僕達はキスをした。
僕の夢見た未来がここにはある。
ううん、今はそれ以上に広がっていく毎日に、僕は満たされていた。回帰前も回帰後も僕はフランを愛するために生きている、これが僕の見る夢だった。
――回帰したシリルの見るは fin――
☆☆☆☆☆
レンタルや、書籍、電子書籍などで本編をお読みくださった方、本当にありがとうございます!
書籍にするにあたり、担当さんと話して二人が結ばれるまでの物語にしようとなりましたので、本編のエピローグはそこまでのお話としてまとめさせていただきました。実際の連載時のエピローグが、こちらのお話になります。
書籍化に伴い掲載していない部分は残していただいていたので、改めて少し書き直して掲載に戻しました。
本編は嵐のように最後どどどーーと結ばれて終わってしまったので、というか拗らせ時間長かったですよね。各種販売サイトのコメントなどを見て、厳しい意見をいただいてしまい、もっとやり方あったかなと改めて反省しております。
書籍化に伴い連載時から十万文字以上カットしたので、改稿したにもかかわらず、どうしても説明不足だったり、削ったエピソードの説明を本編に入りきれていなかったなと、実力不足だったことをお詫び申し上げます。
改めて書籍発売から三カ月経過して、やっと本を手に取り読んでみました。私としてはとても素敵な作品だと思ってしまいましたが(私の性癖にぴったり)、これは作者であり作品が好きだからなのかもしれません。この作品は私の集大成だと思ってしまいました! 世間は厳しかったですが、少しでも誰かの心に響いてくれたらそれだけで嬉しいです。
このエピローグや番外編が本編の不足分を補うように書いておりますので、まだお話を覚えていて下さる方は、お読みいただけたら幸いでございます。この後、非掲載にしていた他登場人物視点のお話を書籍に合わせた物語にお直しして掲載します。
2024.6月 riiko
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