小沢機動部隊

決戦への備え

ヌーメアへの攻撃

「敵空母部隊はどうやら引き籠っているようだな」
山口は空母信濃の艦橋で言った。
「ポートモレスビー沖で500機以上の艦載機を失ったそうですから、当然と言えば当然かと」
応えたのは源田参謀長だった。
「なら、今が好機だな」
山口はそう言って南太平洋の地図を指さす。
「敵艦隊は艦載機の補充を早く受けるためにアメリカに近い港に停泊しているに違いない。空母が10隻以上停泊できる港など数えるほどしかない。虱潰しに行くぞ」
誰も山口に反論できる者はいない。
第三航空艦隊は2月25日にポートモレスビーを出港した。


第三航空艦隊は針路をヌーメアに執る。
もし、敵空母艦隊が居なければ次はブリスベンに向かうことになっていた。
だが、第三航空艦隊の首脳陣は”ヌーメアに居る可能性が高い！”と誰もが考えていた。
ヌーメアは続・FS作戦時にハルゼー艦隊が根拠地にしていた。
そのため港湾施設や航空基地などが充実しており、イギリス艦隊にとって格好の寄港先だと考えたからだ。
「攻撃隊の4分の1を陸用爆弾で残りを徹甲爆弾や魚雷で出撃させる」
山口はヌーメアにイギリス艦隊が居るものと考えてこの命令を下した。
攻撃隊はすぐに編成され、2月27日の午前7時に攻撃隊は出撃した。
その兵力は艦戦108機、艦爆135機、艦攻135機の378機。
これを村田少佐が率いる。
第二波攻撃隊は今のところ編成されていない。
イギリス艦隊がすでに洋上に出ている可能性もあるからだ。
つまり用心ということだ。


村田は出撃前に山口から直々に厳命されていた。
「もし英艦隊が居たことを考えて、できれば敵電探に捕まらず奇襲で行きたい。だから敵電探の範囲に入る直前に高度を下げて欲しい」
もちろん嫌とは言えず村田はその言いつけを守った。
長時間の低空飛行はかなり危険な行為だが、第三航空艦隊の搭乗員にはそれをやってのけるほどの練度が確かにあった。
1機も落伍することなく378機の攻撃隊はその隊列を崩さなかった。
果たして、ヌーメアがあるニューカレドニアの島が見えた。
ここからヌーメアまでは僅か40海里。
ここまでに敵機による迎撃が無いということは奇襲が成功したということだ。
「全機、上昇せよ！」
そしてヌーメアの港を眼下に収めた。
そこには、10隻以上の空母と数隻の戦艦が静かに停泊していた。
（これは…まるで真珠湾だな）
村田は感激のあまり少しの間目を閉じたがすぐに偵察手に叫んだ。
「ト連送だ！」
こうして第三航空艦隊はヌーメアに悠々と停泊するイギリス艦隊に突撃していった。