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決戦への備え
山口機動部隊出撃
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「第四艦隊は上手く敵艦隊を退けたようだが、根元を絶たねば必ず再び来る」
小沢は真珠湾の長官室で開口一番に言った。
「確かにそうです。…私を呼んだということはそういうことですか?」
そう聞くのは山口多聞中将だった。
「察しが良いな。君の所の艦隊をポートモレスビーに差し向ける。実戦経験をいくらか積んでおいた方が良いだろう」
山口が率いる第三航空艦隊は瑞鳳、祥鳳以外は続・FS作戦後に竣工した艦でありその搭乗員のほとんどが予科練上がりの新米だった。
ただ、だからこそ小沢は第三航空艦隊を山口に任せたのである。
予科練から出たばかりの、どこかあどけない搭乗員たちは人殺し多聞の異名を持つ山口にしごかれていた。
無論、それは空母の乗組員にも言えたことで第三航空艦隊の練度はすでに開戦時の第二航空戦隊に匹敵していた。
「分かりました。すぐに出撃いたします」
山口はそう答えて踵を返した。
第三航空艦隊は1944年2月3日に真珠湾を出撃した。
来るであろうアメリカ太平洋艦隊との決戦を前に艦隊型空母を失うことは如何ともし難いので、第三航空艦隊には第三護衛航空戦隊の海鷹、神鷹が九七式艦上攻撃機を持って対潜哨戒を行っていた。
そのため航海はかなりゆっくりとものとなり、ポートモレスビーへ到着したのは2月19日だった。
「敵艦隊はおそらく英空母だ。つまり、装甲空母だ」
ポートモレスビーの第四艦隊司令部で井上はそう言った。
「なぜ英空母と?」
「飛行艇が発見してくれた。英空母は扶桑などの艦と同じ艦首形状をしているから見間違いは無いだろう」
これに山口は頷く。
「となると、装甲空母対装甲空母ということになりますな」
「そうなる。だが、厄介なことに奴らは護衛空母と行動を共にしている。我々も全力で支援するがかなりの数なのは間違いない」
すると山口は不適な笑みを浮かべる。
「望むところです」
翻ってイギリス東洋艦隊はと言うと、艦載機の補充が追いついていない状況だった。
なにしろ、先の航空戦で500機以上の艦載機を一挙に失ったのだ。
いくら工業力が高いイギリスやアメリカであってもおいそれと補充できる戦力ではない。
だから、今はヌーメアの海軍基地でただ停泊しているだけだった。
まさに誇り高いロイヤルネイビーからしてみれば屈辱以外の何物では無かったが背に腹は代えられない。
「世界一の海軍が、今やこの様か…」
第一次大戦からイギリス海軍に従軍しているレイトンからしてみれば、どこかさみしいものだがあった。
小沢は真珠湾の長官室で開口一番に言った。
「確かにそうです。…私を呼んだということはそういうことですか?」
そう聞くのは山口多聞中将だった。
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ただ、だからこそ小沢は第三航空艦隊を山口に任せたのである。
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無論、それは空母の乗組員にも言えたことで第三航空艦隊の練度はすでに開戦時の第二航空戦隊に匹敵していた。
「分かりました。すぐに出撃いたします」
山口はそう答えて踵を返した。
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そのため航海はかなりゆっくりとものとなり、ポートモレスビーへ到着したのは2月19日だった。
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「なぜ英空母と?」
「飛行艇が発見してくれた。英空母は扶桑などの艦と同じ艦首形状をしているから見間違いは無いだろう」
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「そうなる。だが、厄介なことに奴らは護衛空母と行動を共にしている。我々も全力で支援するがかなりの数なのは間違いない」
すると山口は不適な笑みを浮かべる。
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