私だけ視えない 病院の怪談

中川四角

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7日目 部屋移動してきた人

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 7日目、部屋に新しい患者さんが来ました。79歳だったと思います。雪原さんと私はその人をスーさんと呼んでいたのですが、名前が思い出せません。

スーさんは、新規の入院ではなく別の部屋から移動してきた人でした。その病院には1ヶ月くらい入院していると言う事です。スーさんは、歯が丈夫ななのが自慢で、雪原さんの実家の近くに住んでいるようで、話が合っていました。

明るい感じのお相撲好きのおばあちゃん、それがスーさんの印象です。普通食を食べてトイレにも1人で行ってリハビリをしていましたが、室内から出る事はなく、長くは歩けないようでした。

お相撲の時間になると、

「愛佳、お相撲始まるよ。」

と言って私にテレビを見せてくれました。

雪原さんはお相撲には興味がなく、その間だけスマホを触っていました。


 その日も、違うチームの看護師さんがバイタルをチェックしに来ました。看護師1年生だそうです。終始何かに怯えているような目をしていて、殆ど患者と話さずに去って行きました。

「何に怯えているのかな?」

私の何気ないつぶやきに、雪原さんの顔が少し強張っているのを見逃しませんでした。

一 何かある。


 スーさんはおしゃべりが大好きなのか、ずっと話し続けていました。

「私が前に居たお部屋はね、誰も喋れる人がいなかったのよー。鼻から管を入れてて、口をパクパク金魚みたいにして、寝たきりで何も話せない人と、認知症のおばあちゃんと、もう一人は、かわいそうで⋯。」

「しゃべる人が誰もいなくて1ヶ月ってきつくね?口パクパクかあ。その部屋いきたくねー。」

雪原さんもスーさんも、思った事をすぐ口にします。悪気は無いと思います。私は、スーさんが、かわいそうと言った患者さんの事が気になりましたが、それ以上は聞きませんでした。聞いた所で何もしてあげられないのですから。

その日も私の診断は付かずでした。雪原さんは寝たきりにならないように、必死に動こうとしていました。歩くのは無理として、今度は車椅子の練習を始めたようです。

夜になると、雪原さんは時々天井の隅を険しい表情で見ている事がありましたが、その理由を私には言いませんでした。

スーさんは霊感があるのか無いのかもわかりませんが、この後、前の部屋で見たこと聞いた事をいろいろと話し出します。

それは何の疑問も無しに、地元の村で1番大きい病院に入院した私には衝撃的なものでした。

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