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第1章 3度目の人生
[14] 2人の王子①
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本日、私は16歳と4ヶ月で第3学年に編入した。
クラスは、第1王子のテオイと同じだった。
これはアカデミーに入学した2度目とは違う点だ。
2度目の人生の時、私は奨学金で15歳で入学し、一つ年上のテオイは第2学年にいたから。
私は担当教師であるアッシャー侯爵家3男のグレイ先生に連れられて、教壇に上がった。グレイ先生は数学が担当だった。
「編入生だ。自己紹介を」
「ピオニー・レノドンと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
私ははっきりと自分の名前を告げ、カーテシーで丁寧に挨拶をした。
飛び級したため、ほぼ全員が私より年上だから。
「ピオニー嬢は大変優秀な成績を収め、飛び級した逸材だ。だが、アカデミー生活は初めてだ。みんな、親切にするように」
30人ほどのクラスメイトはざわめいた。
「ダリアン嬢のお義姉さまでしょう?」
「あの、噂の深窓の令嬢だわ」
「綺麗な女だけど陰気だな」
「相当わがままだってダリアン嬢は言ってたわ。気をつけないと」
「美しいけど刺々しい感じだ」
「でも、飛び級だなんて嫌な感じね」
「またライバルが増えたな」
ここでも“毒を含んだ声”のささやきが漏れる。
私は、グレイ先生に言われた後ろの席に座った。
グレイ先生の数学の授業が終わり、休憩時間に入ると、テオイが驚くほど気軽に声を掛けてきた。
「とても素晴らしい試験結果だったようだね」
久しぶりに間近で見るテオイの顔。久しぶりに聞くテオイの声。
2度目の人生が頭の中を駆け巡り、恐怖と怒りが同時に私の胸を締めつけた。
いけない……冷静にならなくては。
私は立ち上がり、制服のスカートの裾をそっと持ち上げ、足を一歩引くと膝を折って静かに礼をした。
「光栄でございます。王太子殿下」
「ここでは王太子や殿下と言うのはルール違反だよ」
テオイは金色の髪をなびかせ、エメラルドグリーンの瞳で私を見つめた。
「……かしこまりました。テオイ様」
私は再び頭を下げた。
「まだ堅苦しいけど、そのくらいは”良し”としようか」
顔を上げるとテオイは人懐こい笑顔で私を見た。
「編入試験の剣術も素晴らしかったと聞いている。どうだろう、剣術部に入部しないか」
これでは、2度目の人生と同じ轍を踏むことになる。
私は不快に思いながらも、笑みを絶やさなかった。
「試験の時は無我夢中でした。恐らく、女神様が哀れな私に気まぐれに幸運を恵んでくださったのでしょう」
「うーん。まぐれで、元騎士の剣術の先生から1本を取れるだろうか」
テオイは訝しそうに頭を傾げた。
これ以上は、私から何も言わないほうがいい。沈黙は金だ。
私は口角を少し上げて微笑んでいるように見せた。
テオイは、フッと笑い、私を見つめた。
「ピオニー嬢、ランチを一緒にどうかな。もう少し、君と話をしたいのだが」
聞き耳を立てていたクラスメイトが、ざわつき始めた。
特に女生徒たちの多くが、顔を曇らせた。冷たい視線を四方から感じる。
まったく、面倒くさい。笑顔を作るのも疲れるのに。早くここを去ろう。
私は慌ててハンカチを口に当てて、咳をした。
同時に、チラリとテオイを見た。テオイはギョッとした顔で、少しだけ後ずさりした。
病弱な設定なんだから、少しビビらせたほうがいい。
「大丈夫かい?」
テオイがひきつった顔で親切そうに声を掛けた。
「申し訳ございません。私はこのように昔から体の調子があまりよくありませんの(咳)……ですから、そのような場には、ふさわしくないのでございます」
私は目を潤ませ、教室を急いで出た。これくらいやれば、追ってこないだろう。
案の定、テオイは私を目で追うだけだった。
念のため、私は医務室に入った。誰が見ているか判らない。念には念を。
アカデミーには医務室が2つある。女性用と男性用だ。
女性用には女医のサラ先生がいた。サラ先生はバルクリー子爵家の次女で、上級アカデメイアで医学を学び、今に至っている。
「あら、編入生ね」
面倒なことがあると、ここに駆け込む必要があるため、サラ先生とは仲良くしておきたい。
2度目の人生でも私を気にかけてくれていた数少ない人だった。
私は、再び、制服のスカートの裾をそっと持ち上げ、足を一歩引いて膝を折ると静かに礼をした。
「初めまして、ピオニー・レノドンと申します。咳止めのハーブ薬をいただきに参りました」
「ご丁寧にどうも。私は医師のサラ・バルクリー。気軽にサラと呼んでください」
自己紹介の後、サラ先生は私を座らせ、額に手を当てた。
「熱はなさそうね。アレルギーかしら」
「昔から、人の多いところで緊張してしまって、咳が出るのです」
「さすが、深窓の令嬢ね」
朗らかなサラ先生が言うと嫌味がない。私は微笑んだ。
クラスは、第1王子のテオイと同じだった。
これはアカデミーに入学した2度目とは違う点だ。
2度目の人生の時、私は奨学金で15歳で入学し、一つ年上のテオイは第2学年にいたから。
私は担当教師であるアッシャー侯爵家3男のグレイ先生に連れられて、教壇に上がった。グレイ先生は数学が担当だった。
「編入生だ。自己紹介を」
「ピオニー・レノドンと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
私ははっきりと自分の名前を告げ、カーテシーで丁寧に挨拶をした。
飛び級したため、ほぼ全員が私より年上だから。
「ピオニー嬢は大変優秀な成績を収め、飛び級した逸材だ。だが、アカデミー生活は初めてだ。みんな、親切にするように」
30人ほどのクラスメイトはざわめいた。
「ダリアン嬢のお義姉さまでしょう?」
「あの、噂の深窓の令嬢だわ」
「綺麗な女だけど陰気だな」
「相当わがままだってダリアン嬢は言ってたわ。気をつけないと」
「美しいけど刺々しい感じだ」
「でも、飛び級だなんて嫌な感じね」
「またライバルが増えたな」
ここでも“毒を含んだ声”のささやきが漏れる。
私は、グレイ先生に言われた後ろの席に座った。
グレイ先生の数学の授業が終わり、休憩時間に入ると、テオイが驚くほど気軽に声を掛けてきた。
「とても素晴らしい試験結果だったようだね」
久しぶりに間近で見るテオイの顔。久しぶりに聞くテオイの声。
2度目の人生が頭の中を駆け巡り、恐怖と怒りが同時に私の胸を締めつけた。
いけない……冷静にならなくては。
私は立ち上がり、制服のスカートの裾をそっと持ち上げ、足を一歩引くと膝を折って静かに礼をした。
「光栄でございます。王太子殿下」
「ここでは王太子や殿下と言うのはルール違反だよ」
テオイは金色の髪をなびかせ、エメラルドグリーンの瞳で私を見つめた。
「……かしこまりました。テオイ様」
私は再び頭を下げた。
「まだ堅苦しいけど、そのくらいは”良し”としようか」
顔を上げるとテオイは人懐こい笑顔で私を見た。
「編入試験の剣術も素晴らしかったと聞いている。どうだろう、剣術部に入部しないか」
これでは、2度目の人生と同じ轍を踏むことになる。
私は不快に思いながらも、笑みを絶やさなかった。
「試験の時は無我夢中でした。恐らく、女神様が哀れな私に気まぐれに幸運を恵んでくださったのでしょう」
「うーん。まぐれで、元騎士の剣術の先生から1本を取れるだろうか」
テオイは訝しそうに頭を傾げた。
これ以上は、私から何も言わないほうがいい。沈黙は金だ。
私は口角を少し上げて微笑んでいるように見せた。
テオイは、フッと笑い、私を見つめた。
「ピオニー嬢、ランチを一緒にどうかな。もう少し、君と話をしたいのだが」
聞き耳を立てていたクラスメイトが、ざわつき始めた。
特に女生徒たちの多くが、顔を曇らせた。冷たい視線を四方から感じる。
まったく、面倒くさい。笑顔を作るのも疲れるのに。早くここを去ろう。
私は慌ててハンカチを口に当てて、咳をした。
同時に、チラリとテオイを見た。テオイはギョッとした顔で、少しだけ後ずさりした。
病弱な設定なんだから、少しビビらせたほうがいい。
「大丈夫かい?」
テオイがひきつった顔で親切そうに声を掛けた。
「申し訳ございません。私はこのように昔から体の調子があまりよくありませんの(咳)……ですから、そのような場には、ふさわしくないのでございます」
私は目を潤ませ、教室を急いで出た。これくらいやれば、追ってこないだろう。
案の定、テオイは私を目で追うだけだった。
念のため、私は医務室に入った。誰が見ているか判らない。念には念を。
アカデミーには医務室が2つある。女性用と男性用だ。
女性用には女医のサラ先生がいた。サラ先生はバルクリー子爵家の次女で、上級アカデメイアで医学を学び、今に至っている。
「あら、編入生ね」
面倒なことがあると、ここに駆け込む必要があるため、サラ先生とは仲良くしておきたい。
2度目の人生でも私を気にかけてくれていた数少ない人だった。
私は、再び、制服のスカートの裾をそっと持ち上げ、足を一歩引いて膝を折ると静かに礼をした。
「初めまして、ピオニー・レノドンと申します。咳止めのハーブ薬をいただきに参りました」
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朗らかなサラ先生が言うと嫌味がない。私は微笑んだ。
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