高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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第十六話

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「シャロル王子にヴィルムを望んでいただけるならば、我が国はすぐにでも喜んで嫁がせる所存です」

「ありがとう。それは心強い。」

外遊について行った際に僕を側室に迎え入れたいと申し入れをされた。でも返事は2ヶ月後の王子の誕生日会の時まで待つと言っていたのに、これでは僕の意思に関係なく輿入れになってしまう。昨日、王子と会ったときにも、アーシュが確認しそこは担保すると言っていたはずなのに。
僕から反論の弁を父上にぶつけても、聞く耳なんて持ってくれないだろうし。

「陛下、シャロル王子、発言してもよろしいですか?」

僕が考えを巡らせていると、アーシュが父上と王子に伺う声が聞こえ、見上げるとアーシュに優しく微笑まれる。

「フィリアス卿、場を弁えろ。今はお前の出る幕ではない。」

「まぁ、良いではないか、エステート王よ。将来有望な若者の意見を聞くのも為政者の務めだろう?」

「寛大なお心遣いに感謝いたします。
側室入りについてですが、ヴィルム殿下は仮にも王位継承権を持つ王族で、今はカリーノ殿下とその座を巡り争っている最中です。性急に殿下の側室入りを決めてしまうと、リドール帝国に王位継承者を脅し取られたとあらぬ噂がたつかもしれません。そうなれば、周辺の国もオメガの王族欲しさに我が国へ無理難題を押し付けてくるでしょう。それにいくら小国でも王族を奪い取られたとなれば、家臣の士気に影響がでます。国が小さければ小さいほど家臣からの反発は避けなければなりません。国の維新を守れないと言って反逆する者も出かねません。そうなると、この側室入りする目的が元も子もなくなってしまいます。まずは、エステートの王位継承問題を含め家臣達に十分に根回しをしてから進めるのが寛容かと。王子もそこをご理解していただけているから、返事は二月後の王子の誕生日パーティーで良いとおっしゃられたのでしょう?」

「だが、フィリアス卿よリドールと婚姻関係になることの方が自国の継承問題より重要だとは思わぬか?どちらが国の利益になるか分からぬほど我が国の重臣達は愚かではないはずだが」

アーシュが父上を諭し、最後王子に問いかけるも父上がそれに反論する

「エステートの王位よりリドールへの輿入れの方が重要とおしゃられるならばなおさら、ヴィルム殿下が輿入れすることにカリーノ殿下派閥からの反対があってもおかしくはないのではありませんか?
そうだろう?レトア卿?」

今まで黙って経緯を見ていたレトア卿に、アーシュが話をふると、レトア卿は緊張した面持ちで父上と対峙する。

「私も陛下が、王位継承者と側室入りをどちらの臣下をよりお引き立てするのかは大変気掛かりになっております。もし、側室入りをしたフィリアス卿の方をお引き立てするとお考えならば、今回のお話しには賛同しかねます」

いくら王太子の後ろ盾になっても、敵対貴族が今代の王に引き立てられ、その力を盤石にされてしまえば、そこに付け入る隙なんてなくなってしまうということなのだろう。

恐る恐る進言するレトア卿に父上が眉を寄せ不快感を表す。父上は、オメガの僕達のどちらかが王や側室になっても然程変わらないと考えているから興味はないが、有力貴族のフィリアス侯爵家とレトア侯爵家の意向は無視できないのだろう。

「エステート王よ、私は内輪揉めを招きたいわけではない。あくまで円満に婚姻できたらと思っている。それにフィリアス卿の言った通りヴィルム殿下には二月後の私の誕生パーティーまでに返事が欲しいと伝えてある。
それまでに国内の意思統一をしておいてくれ。」

「わかりました。必ずや良いお返事をできる様にいたします」

混乱し始めた場を納めるため王子が父上に遠回しに命じると、父上は頭を垂れ素直に受け入れる。一先ずは、側室入りを回避できたが、これからどうしよう。僕はこれから先の変えがたい未来をどう乗り切るかで頭が一杯になて。


会談が終わり、リドールへ戻る王子を見送るために僕とアーシュとレトア卿は正門まで出向く。

馬車の準備ができて、王子が乗るために扉が開かれれば、王子はクルリとこちらを振り向く。そして

「二分月後、君から色良い返事を貰えることを楽しみにしている」

僕の髪に触れ甘く囁かれる。しかし、アーシュと心を通わせた今、王子に何を言われても心が揺れ動かない。むしろ、身を引いて欲しいと思ってしまう。

「王子が望む返事ではないかもしれませんが、最良の答えを用意いたします」

アーシュが僕の代わりに王子に答えれば、

「君の望みが叶うといいな。せいぜい足掻いて楽しませてくれ」

王子はアーシュの肩を叩き挑発する様に言い馬車に乗り込む。

「では、また」

窓から王子が短く声をかけると馬車が走り出す。どんどん小さくなっていく馬車を見送り、緊張感から解き放たれる。すこし伸びをして執務室に向かう旨をアーシュに伝えようとそちらに目を向けたのと同じタイミングでレトア卿がアーシュの胸ぐらをつかむ。

「やめろ!」

その光景に僕は思わず声を上げた。
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