18 / 85
第十八話
しおりを挟む
「いつからだ?」
「ヴィルに告白して振られた後すぐの発情期から。ダメだと分かっていたけど自制出来なかった。ごめん。」
執務室に入るなりアーシュに聞けば後ろから抱きしめられる。そしてアーシュは後ろめたい様子で経緯を話す。僕が発情期の時にアーシュに抱かれる夢を見始めた時期だと思い、本音がポロリと漏れた。
「…夢じゃなかったんだ」
「うん。初めてヴィルに触れて発情期が落ち着いたヴィルにもう一度想いを伝えようとしたら、開口一番に名前を呼ぶなと言われたから拒絶されたと思った。」
その時の事はよく覚えている。発情期が通常より短く終わって不思議に思っていたら、何故かベッドサイドにアーシュがいて僕の手を握りしめていた。その時、二人とも服を着ていたから、まさか交わっていたなんて思いもしなかった僕は悲しい現実を直視したくなくて、アーシュを突き放した。夢でもいいからアーシュに愛されたことに浸って、錯覚していたかったから。
「これ以上触れてはいけないと理性で押し留めようとしても、気持ちを止められなかった。発情期の時のまやかしだったとしても、ヴィルが俺に愛を囁いて求めてくれた事が嬉しくて、何度も何度も繰り返してた。ヴィルが夢だと勘違いしている事に気付いて罪悪感を感じていたけど本当の事を伝える事も止めることも出来なかった。発情期の間だけでも、俺だけのものにしていたかった。」
らしくない言い訳をして僕への思いを口にするアーシュに胸がときめく。それに僕の言動でアーシュが動揺するのが嬉しく感じてしまう。顔を動かし僕を後ろから抱きしめるアーシュに視線を向ける。
「…アーシュ。発情期の度に抱いていたなら、なんで頸を噛まなかったの?」
僕に何度も番になることを断られていても、発情期の時に噛んでしまえば番になれたはずなのに。
「ヴィルの気持ちがないまま形だけの番にはなりたくなかったから。順序は間違えたけど、ヴィルが番になりたいと望んでくれたら、すぐにでも噛むつもりだった。」
僕だけがこんなに好きで、アーシュの一挙一動に振り回されていると思っていた。アーシュに番になることを求められる度に届かない想いにもがき苦しんでいた。でも、アーシュも僕と同じだった。そのことが何より嬉しい。
「ねぇ、ヴィル。俺はヴィルが居てくれれば他に何も要らない。だからお願い、俺の番になって」
「……」
アーシュは抱きしめていた僕の体を反転させ、まっすぐ僕を見て言う。
何度も聞いた台詞のはずなのに、こんなに心が揺さぶられるのは、アーシュの気持ちを知ったから。でもアーシュと番うのは、リドールからの縁談を蹴るということだ。それは二人とも地位も家族も全て捨てて駆け落ちをするということに他ならない。僕のためにアーシュにそんなことさせていいのかと迷い口篭ってしまう。
「これからの事は何も心配しなくていい。ヴィルが俺の番になってくれるなら、俺の全てを賭けて必ず守るから。リドールの王子になんて絶対に渡さない。」
「…アーシュ」
僕の心のうちを見透かすみたいに、アーシュは僕が欲しい言葉をくれる。それを聞いて目頭が熱くなり、涙が滲んで目の前にいるアーシュの顔がぼやける。
アーシュに裏切られたと思いすれ違ってしまった日から、何度も嫌いになろうとした。でも嫌いになれなくて、アーシュに番になることを求められる度に心が痛くて痛くて辛かった。そんな切ない思いになるのは、アーシュが好きで好きで堪らなくて、僕だけのものになって欲しかったから。
「…僕が番になりたいのも、触ってほしいと思うのもアーシュだけなんだ。他の人となんて嫌だ。シャロル王子の側室になんてなりたくない。ずっと、アーシュと一緒にいたい」
自分の気持ちを素直に認めてしまえば、蓋をしていた想いが堰を切って溢れ出す。
「ヴィル愛してる。ヴィルを他の誰にも渡さないから」
アーシュは涙を流す僕を愛おしそうに見つめ更に強く抱きしめ、愛を囁いた。
「ヴィルに告白して振られた後すぐの発情期から。ダメだと分かっていたけど自制出来なかった。ごめん。」
執務室に入るなりアーシュに聞けば後ろから抱きしめられる。そしてアーシュは後ろめたい様子で経緯を話す。僕が発情期の時にアーシュに抱かれる夢を見始めた時期だと思い、本音がポロリと漏れた。
「…夢じゃなかったんだ」
「うん。初めてヴィルに触れて発情期が落ち着いたヴィルにもう一度想いを伝えようとしたら、開口一番に名前を呼ぶなと言われたから拒絶されたと思った。」
その時の事はよく覚えている。発情期が通常より短く終わって不思議に思っていたら、何故かベッドサイドにアーシュがいて僕の手を握りしめていた。その時、二人とも服を着ていたから、まさか交わっていたなんて思いもしなかった僕は悲しい現実を直視したくなくて、アーシュを突き放した。夢でもいいからアーシュに愛されたことに浸って、錯覚していたかったから。
「これ以上触れてはいけないと理性で押し留めようとしても、気持ちを止められなかった。発情期の時のまやかしだったとしても、ヴィルが俺に愛を囁いて求めてくれた事が嬉しくて、何度も何度も繰り返してた。ヴィルが夢だと勘違いしている事に気付いて罪悪感を感じていたけど本当の事を伝える事も止めることも出来なかった。発情期の間だけでも、俺だけのものにしていたかった。」
らしくない言い訳をして僕への思いを口にするアーシュに胸がときめく。それに僕の言動でアーシュが動揺するのが嬉しく感じてしまう。顔を動かし僕を後ろから抱きしめるアーシュに視線を向ける。
「…アーシュ。発情期の度に抱いていたなら、なんで頸を噛まなかったの?」
僕に何度も番になることを断られていても、発情期の時に噛んでしまえば番になれたはずなのに。
「ヴィルの気持ちがないまま形だけの番にはなりたくなかったから。順序は間違えたけど、ヴィルが番になりたいと望んでくれたら、すぐにでも噛むつもりだった。」
僕だけがこんなに好きで、アーシュの一挙一動に振り回されていると思っていた。アーシュに番になることを求められる度に届かない想いにもがき苦しんでいた。でも、アーシュも僕と同じだった。そのことが何より嬉しい。
「ねぇ、ヴィル。俺はヴィルが居てくれれば他に何も要らない。だからお願い、俺の番になって」
「……」
アーシュは抱きしめていた僕の体を反転させ、まっすぐ僕を見て言う。
何度も聞いた台詞のはずなのに、こんなに心が揺さぶられるのは、アーシュの気持ちを知ったから。でもアーシュと番うのは、リドールからの縁談を蹴るということだ。それは二人とも地位も家族も全て捨てて駆け落ちをするということに他ならない。僕のためにアーシュにそんなことさせていいのかと迷い口篭ってしまう。
「これからの事は何も心配しなくていい。ヴィルが俺の番になってくれるなら、俺の全てを賭けて必ず守るから。リドールの王子になんて絶対に渡さない。」
「…アーシュ」
僕の心のうちを見透かすみたいに、アーシュは僕が欲しい言葉をくれる。それを聞いて目頭が熱くなり、涙が滲んで目の前にいるアーシュの顔がぼやける。
アーシュに裏切られたと思いすれ違ってしまった日から、何度も嫌いになろうとした。でも嫌いになれなくて、アーシュに番になることを求められる度に心が痛くて痛くて辛かった。そんな切ない思いになるのは、アーシュが好きで好きで堪らなくて、僕だけのものになって欲しかったから。
「…僕が番になりたいのも、触ってほしいと思うのもアーシュだけなんだ。他の人となんて嫌だ。シャロル王子の側室になんてなりたくない。ずっと、アーシュと一緒にいたい」
自分の気持ちを素直に認めてしまえば、蓋をしていた想いが堰を切って溢れ出す。
「ヴィル愛してる。ヴィルを他の誰にも渡さないから」
アーシュは涙を流す僕を愛おしそうに見つめ更に強く抱きしめ、愛を囁いた。
29
あなたにおすすめの小説
アルファだけど愛されたい
屑籠
BL
ベータの家系に生まれた突然変異のアルファ、天川 陸。
彼は、疲れていた。何もかもに。
そんな時、社の視察に来ていた上流階級のアルファに見つかったことで、彼の生活は一変する。
だが……。
*甘々とか溺愛とか、偏愛とか書いてみたいなぁと思って見切り発車で書いてます。
*不定期更新です。なるべく、12月までメインで更新していきたいなとは思っていますが、ムーンライトノベルさんにも書きかけを残していますし、イスティアもアドラギも在りますので、毎日は出来ません。
完結まで投稿できました。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
番を持ちたがらないはずのアルファは、何故かいつも距離が近い【オメガバース】
さか【傘路さか】
BL
全10話。距離感のおかしい貴族の次男アルファ×家族を支えるため屋敷で働く魔術師オメガ。
オメガであるロシュは、ジール家の屋敷で魔術師として働いている。母は病気のため入院中、自宅は貸しに出し、住み込みでの仕事である。
屋敷の次男でアルファでもあるリカルドは、普段から誰に対しても物怖じせず、人との距離の近い男だ。
リカルドは特殊な石や宝石の収集を仕事の一つとしており、ある日、そんな彼から仕事で収集した雷管石が魔力の干渉を受けない、と相談を受けた。
自国の神殿へ神が生み出した雷管石に魔力を込めて預ければ、神殿所属の鑑定士が魔力相性の良いアルファを探してくれる。
貴族達の間では大振りの雷管石は番との縁を繋ぐ品として高額で取引されており、折角の石も、魔力を込められないことにより、価値を著しく落としてしまっていた。
ロシュは調査の協力を承諾し、リカルドの私室に出入りするようになる。
※小説の文章をコピーして無断で使用したり、登場人物名を版権キャラクターに置き換えた二次創作小説への転用は一部分であってもお断りします。
無断使用を発見した場合には、警告をおこなった上で、悪質な場合は法的措置をとる場合があります。
自サイト:
https://sakkkkkkkkk.lsv.jp/
誤字脱字報告フォーム:
https://form1ssl.fc2.com/form/?id=fcdb8998a698847f
僕が死んだあと、あなたは悲しんでくれる?
いちみやりょう
BL
死神 × 不憫なオメガ
僕を大切にしてくれる青砥と、ずっと一緒に居られると思ってた。
誰も感じない僕のオメガのフェロモンを青砥だけはいい匂いと言ってくれた。
だけど。
「千景、ごめん。ごめんね」
「青砥……どうしたの?」
青砥は困った顔で笑って、もう一度僕に“ごめん”と謝った。
「俺、和樹と付き合うことにした。だから、ごめん」
「そんな……。もう僕のことは好きじゃないってこと?」
「……ごめん」
「……そっか。分かった。幸せにね」
「ありがとう、千景」
分かったと言うしか僕にはできなかった。
※主人公は辛い目に遭いますし、病気で死んでしまいますが、最終的に死神に愛されます。
無理です!僕は絶対にこんな屑駄目王子の嫁になりませんからね?
竜鳴躍
BL
見た目と才能を隠していた第二王子と第一王子の婚約者候補のラブコメ?王家ざまあ。番確定なのに未成熟で分かってない主人公(受)とすれ違いの攻。あげく第一王子は変装した弟に恋をするし、たいへんです。
※前半あらすじ?
「なんでウチは公爵なのぉ!?」ハイリ5歳は絶望した。ちょっと顔が綺麗なだけで傲慢な第一王子。外面が良いだけの悪魔の婚約者候補に選ばれてしまう。ハイリは男の子だけどΩでお嫁に行く。だから女の子に混じって、実家の爵位と年齢から選ばれてしまった。死にそうになったところを助けてしまったり、あまりのアホさにやらかす男を助けてしまい、なんとか自分だとバレないように裏工作するハイリ。見た目と才能をひた隠しにして、どうにかこうにか誰かに第一王子を押し付けようとするのだった。
☆短編になりました。
オメガなのにムキムキに成長したんだが?
未知 道
BL
オメガという存在は、庇護欲が湧く容姿に成長する。
なのに俺は背が高くてムキムキに育ってしまい、周囲のアルファから『間違っても手を出したくない』と言われたこともある。
お見合いパーティーにも行ったが、あまりに容姿重視なアルファ達に「ざっけんじゃねー!! ヤルことばかりのくそアルファ共がぁああーーー!!」とキレて帰り、幼なじみの和紗に愚痴を聞いてもらう始末。
発情期が近いからと、帰りに寄った病院で判明した事実に、衝撃と怒りが込み上げて――。
※攻めがけっこうなクズです。でも本人はそれに気が付いていないし、むしろ正当なことだと思っています。
同意なく薬を服用させる描写がありますので、不快になる方はブラウザバックをお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる