高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど

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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる

第三十四話

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「んー。ん"?」

心地の良い微睡の中、身じろぎをしたら腰回りに痛みが走った。そのおかげで眠気は吹き飛んだが、体は疲労が溜まっているのか起きるのが億劫で仕方ない。重い瞼をうっすら開けば、顔立ちの整った美形が私をじっと見ていた。

「おはよう。セラフ」

美形もといフェナーラが甘くとろける笑顔を私に向ける。

「……」

あれ?フェナーラは私に怒っていたはずじゃ?
寝起きの頭では状況の把握が追いつかず、私は、一瞬フリーズし固まった。

「おーい。セラフ」

固まる私の顔の前でフェナーラがひらひらと手をかざし、反応を確かめる。
徐々に頭が覚醒し、昨晩の出来事や、自分がフェナーラに言ったことを一気に思い出す。

私は、伯爵に手込めにされて…フェナーラに助けられた。それから、好きと言ってしまった!
それに、あられのない姿を晒した。フェナーラの上に乗っかって自分で…なんて端ないことを!

途端、羞恥心に襲われ私はフェナーラから隠れるように布団を頭まで被った。そして羞恥と同じくらいの不安が胸に押し寄せる。
伯爵に触れさせてしまった私に失望したのでは?と。

「セラフ、恥ずかしいのか?可愛いな。
なぁ、顔見たいんだけど」

フェナーラは甘く囁くと、私から布団を剥ぎ取っていく。フェナーラの声音には、失望や軽蔑なんて含まれていない気がしたが、彼の顔を見るのが怖い。もし冷め切った眼をしていたらと思うと胸が締め付けられ、はらはらと瞳から涙が溢れる。

「ふっ…うっ…」

「え⁈セラフ、どうした?どこか痛むのか?」

突然泣き始めた私に、フェナーラは驚きながらも私を気遣う。フェナーラに抱きすくめられ、その厚い胸板に私は顔を押し付けた。フェナーラの心臓が早いリズムで拍動している。それにフェナーラに背中を優しく撫でられ、全身でフェナーラの温もりを感じるうちに気持ちが落ち着いた。

「すみません…取り乱しました」

フェナーラを見上げると、涙の跡を拭くように頬を撫でられる。

「体、大丈夫か?だいぶ無理させたから…2日も寝込んでたしな」

フェナーラがサラリと衝撃的なことを言う。
え?寝込んでた?2日も?
改めて周囲を見渡せば、よく見知ったエステートのフェナーラの寝室だった。

「そんなに寝込んでたなんて…私と一緒にいたオメガの青年はどうなったのですか?」

自分が伯爵にされたことと一緒にいた青年のことを思い出し背筋が凍る。私はフェナーラに助けられたが、彼は無事なのか。

「オメガの子はアルヴィ達が保護したから無事だ。エイヴィアとそのお仲間達はリドールの憲兵が身柄を預かってる。今までしていた悪事も含めて、裁かれるそうだ」

私の恐怖心を取り除くように、また私の背中を優しく撫で始める。

「セラフにも辛い思いをさせてごめん。きちんと説明していたら…。俺のくだらない嫉妬のせいでセラフを傷つけた。本当、ごめん」

申し訳なさそうにフェナーラは言い、謝りながら私の額に自分の額をくっつける。

「そんな!フェナーラが謝ることなんてありません。あれは、私が未熟だったから…だから騙されて…」

言い訳じみたことしか言えず、自分が情けなくなる。フェナーラに必要とされたくて、そこを伯爵に付け込まれた。でも、よく考えたらおかしいと気づけたはずだ。裸にシーツを羽織った状態で商談なんておかしいと。バナト商会の代表のフェナーラに内緒で商談なんて不自然だと。

「あなたを失望させるようなことになった」

自分の言葉に胸が締め付けられ、止まっていた涙がまた流れ落ちる。

「失望なんてしない。するはずない。商会のために動いてくれたんだろ?ありがとな。セラフは俺の自慢の伴侶だ」

「ほんと?嫌いに…なってない?」

「嫌いになんてなるはずない。むしろ、もっと愛しくなった。改めて言わせてくれ。
セラフ誰よりも愛してる。だから、ずっと俺の側に居てくれないか?」

「フェナーラ…。こんな私でもいいの?」

「セラフがいい。セラフが居ない人生なんて考えられねぇよ」

フェナーラからの真摯な告白に、また涙が滲む。さっきと違うのは、今は嬉しくて涙が止まらなくなる。

「私もあなたの側に居たい。ずっと」

額を合わせていた顔の角度を変え、どちらからともなく口付けをする。軽くキスをしては互いの顔を見つめ笑い合うのを繰り返す。愛する人と心を通わせる幸せに心が震える。

「セラフ、愛してるよ。セラフは?」

俺のこと好き?愛してる?とフェナーラが睦言に混じって囁く。

「言わなくても分かるでしょ?」

「それでも、セラフの口からきちんと聞きたい」

発情してた時は言ってくれたぞ覚えてないか?と少しからかうように言われ私はムッとしつつも、腹を括った

「私もフェナーラをあ」

「ちょっと性悪これ見なさいよ!」

途中まで言いかけたとき、寝室の扉が無遠慮に開けられアンヌ嬢が勢いよく駆け込んでくる。そのせいで蜜月な雰囲気はどこかに吹っ飛んでしまう。この状況にはもう既視感を覚え、落胆する。

「おい!アンヌ、お前いい加減にしろよ」

「はっ⁈こんな時間まで寝巻きのまま寝室でイチャついてんじゃないわよ」

フェナーラが青筋をたてアンヌ嬢に詰め寄るが、アンヌ嬢はひるむことなく果敢に応戦する。

「こんな時間って、まだ朝の8時だろ。商会が休みの日に、お前こそ何しに来たんだよ」

「ふんっ。私はこれを性悪に見せに来たのよ。これを見たら性悪もあんたの執念深さに幻滅するはずよ」

「おいっ!お前、それっ!」

アンヌ嬢が便箋を取り出すと、フェナーラが明らかに焦った声をあげる。
二人のやり取りに苛立ちが募っていく。仲がいいのは知っている。でもフェナーラは私の伴侶なのに…。

アンヌ嬢はフェナーラの横をすり抜けると、ベッドに座っていた私にその便箋を渡す。

そこには、幼い字で

『レトアきょうセラフさま

あなたが大好きです。どうやったら、俺を好きになってくれますか?

バナト フェナーラ』

と書かれていた。小さなフェナーラが私に向けて書いたラブレターだった。

こんな昔から私を好きだったのか。と思うと額に手を当て項垂れているフェナーラが可愛いくて、愛おしくて仕方なくなる。

私はアンヌ嬢に微笑み

「見せていただきありがとうございます。フェナーラがこんなに昔から私を思っていてくれて、嬉しいです。
私とフェナーラは深く愛し合っているので、他の誰かが私達の間に入り込むことは不可能です。
だから、フェナーラのことは諦めて、他にいい人を探していただけますか?」

はっきりと宣言する。私の反応が予想外だったのかアンヌ嬢は目を丸くする。

「え?あんた、フェナのこと好きじゃないって言ってたじゃない」

。でも今は違いますから。すみません。これからフェナーラと二人きりで過ごしたいので、お取引ください」

「え?」

「はい。アンヌ。セラフもそう言ってるから、じゃあな」

困惑するアンヌ嬢の肩をフェナーラが掴み部屋の外に誘導する。廊下でアンヌ嬢が「え?どういうことよ!」と騒いでいるが、それを無視してフェナーラへ扉を施錠する。
そしてベッドに腰掛け私の顔を覗き込む。フェナーラの顔にはニヤリとした笑顔が浮かんでいる。

「深く愛し合ってるんだ?」

「間違いではないでしょ?」

「じゃあ、俺のことどう思ってるの?」

先程の続きを促される

「それは、もちろん愛してる。あなた以外、もう何もいらないくらい深く愛してる」

アルファとかベータとか関係なくフェナーラが好き。この人の側に居られるなら、地位もちっぽけなプライドも惜しまず捨てられる。

「セラフ…」



私の想いを確認したフェナーラは、愛おしそうに私の名前を呼び顔を寄せる。私も瞳を閉じると、フェナーラは優しく触れるだけのキスをした。それは、婚姻式でする誓いのキスに似ていた。
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