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しおりを挟む「ペルジーニ伯爵、今日はありがとう」
スタマーズ公爵は人好きのする笑顔を浮かべ、ペルジーニ伯爵とレティを出迎えた。
「いいえ。なかなか伺えず申し訳ありません」
伯爵は申し訳なさそうな顔一つせず、形だけ頭を下げた。彼へ出向を要請する貴族は多くいる。『ペルジーニ伯爵の食事が提供される』それだけでその夜会や会合の格は跳ね上がる。貴族は挙って伯爵が来ることを望むがその要請に全て答えていたら、体がいくつあっても足りないだろう。
何より彼は家族や使用人たちの料理を作ることが一番のライフワークとなっている。そのライフワークを崩さない程度に要請を受けているため、断ることもしょっちゅうだ。スタマーズ公爵家からも何度も要請があったものの、来訪するのは初めてだった。
「いやいや。評判は聞いているからね、忙しいと分かっていて要請してしまいすまない」
「いえ」
二人の会話を隣で聞いていたレティは、父親のつっけんどんな態度にヒヤリとした。ペルジーニ伯爵は職人気質で高位貴族や王族にも媚びることがない。父と一緒に高位貴族の屋敷や王宮へと出向いているレティはいつもハラハラさせられていた。だがスタマーズ公爵は気分を害した様子は無く微笑みレティへと視線を移した。
「隣の可愛いお嬢さんは噂の娘さんかな?」
「ええ」
「ペルジーニ伯爵家、長女レティと申します」
レティは父親の非礼を贖罪したい気持ちも込めて深々と礼をした。公爵は笑みを深めて頷いた。
「素晴らしい。レティ嬢は立派な淑女だね」
「ありがとうございます」
「噂はよく聞いているよ。御父上に似てとっても料理上手だとね」
レティは公爵の言葉を聞きにっこり笑った。厳しい父が褒めてくれることはなかなか無いし、このように良い評判の言葉を聞くことは初めてだった。レティへ投げ掛けられる言葉といえば、令嬢でしかも子どもでありながら厨房に出入りしているなんて、といったマイナスの評価ばかりだった。
「素直なお嬢さんで羨ましいな」
「はぁ」
伯爵は公爵の言葉の真意が掴めず、怪訝な顔をした。彼は貴族がよくやる腹の探り合いが大の苦手だった。
「今日来てもらったのは、ミゲル……私の息子へ料理を作ってほしくてお願いしたんだ。レティ嬢と違って、ちょっと……いや、かなり気難しい子なんだけどね」
公爵は困ったように笑った。レティは大きな瞳を瞬かせ、公爵の話に耳を傾けた。
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