【完結】先に求めたのは、

たまこ

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 夕食ではレティの歓迎会が開かれた。公爵夫妻はレティを歓迎し、料理人たちは豪華な食事を準備してくれていた。公爵家のテーブルに着くなんて畏れ多いとレティは固辞したが、既に準備されておりまたしても断ることはできなかった。

「まぁ、お父様が?」

「ああ、学生時代から料理が好きだったから寄宿舎でもよく料理を振る舞っていたようだよ」

 レティの父、ペルジーニ伯爵は国王の学友である。そしてスタマーズ公爵は宰相として国王の傍で働いており国王から伯爵の思い出話をよく聞いているらしい。

「学園側は寄宿舎で料理をするなんて止めて欲しかったようだけど、陛下が気に入っているものだから注意も出来なかったらしい」

「う……父らしいです」

 レティが苦笑いを浮かべると公爵夫妻は可笑しそうに笑った。隣に座るミゲルの顔をちらりと見るが話を聞いている様子は無い。レティはもう一度苦笑いを浮かべた。



 歓迎会が終わり、部屋へ戻るとメイド達に手伝ってもらい寝る準備を整えた。レティは他の令嬢たちと違い、身の回りのことはある程度自分で出来るがそれでもまだ十歳、全て自分ですることは難しいため最低限のお手伝いの為にメイドが付けられていた。

 ベッドに潜り込み、今日一日のことを振り返る。公爵夫妻はレティを心から歓迎してくれた。使用人たちも同様だ。厨房も部屋もレティの為に最上級のものが用意されていた。

 何より、ミゲルがレティの作った人参のマドレーヌを食べてくれた。それだけでもレティの目標は達成されたと言って良いだろう。とても嬉しくて誇らしく思う、それなのに。



「……っく、うぅ……っおかあさまっ」

 布団を頭まで被ると涙が堪え切れなかった。朝まで一緒だった家族を思い出し、寂しさが溢れ出す。別れ際最後まで泣いていた弟のジャック、優しく抱き締めてくれた母、いつもは厳しい父が大きな手で頭を撫でてくれたこと、それらを思い出し、涙は止まらなかった。暫くそうしていると、部屋の扉がノックされた。

(……っ、寝たふりしよう)

 誰が訪ねてきたのか分からないが、反応せずにいれば諦めてくれるだろう。少々行儀が悪いが服の袖で涙を乱暴に拭うと、布団を頭まで被ったまま目を固く瞑った。しかしレティの願い虚しく、扉は開けられてしまった。小さな足音が近づいて来る。


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