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しおりを挟むハロルドがここまでご機嫌なのは、馬車の中でソフィアに肩を貸したから、だけが理由ではない。他にも理由があった。
◇◇◇◇
ドロシーが開いてくれた婚約祝いの食事会、翌朝。
(やってしまった……)
目が覚めたソフィアは、馬車の中で晒した醜態を思い出し、顔を青くした。酔いが回っていたとは言え、いつも冷静なソフィアには有り得ない行動だった。
(ハロルドに、会いたくない。)
ソフィアは前日を思い返して暫くベッドの中でジタバタした後、憂鬱な気持ちを持て余しながら、重い身体に鞭を打ち、公爵家に向かう。
せめて、今日はハロルドに会いたくないと神に祈る。しかし、人間とは会いたくないと考えている時に限って会ってしまうものだ。
「ソフィア。おはよう。」
婚約してからもハロルドの待ち伏せは続いている。だが、いつもなら帰りは兎も角、朝は待ち伏せしていない。それなのに今日に限ってハロルドは待ち伏せていた。
「何で……。」
ソフィアは、つい不満を前面に出してハロルドを睨んでしまう。だが、ハロルドはソフィアの鋭い目付きに気付いていないかのように笑って言った。
「昨日のソフィア、酔っていたみたいだからさ。心配していたんだ。」
「……!」
「体調は大丈夫?」
ハロルドは本当に心配しているのだと、ソフィアは頭では分かっている。だが、それ以上に恥ずかしさでいっぱいになり、顔どころか身体中が熱くなる。
「ソフィア?」
「……っ!さっ、先に行きます!」
ハロルドの顔もまともに見ることは出来ず、ソフィアは風のように走り去った。ハロルドは、そんなソフィアをポカンと見送るしか出来なかった。そしてその日から、ソフィアはハロルドから逃げ回る日々が続いた。
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