23 / 45
23
しおりを挟むハロルドから逃げ回る日々が一週間過ぎた頃。
「ねぇ。ソフィア?」
「はい。お嬢様。」
王子妃教育を終え、帰宅の途中、シャーロットの要望で行きつけのカフェに寄る。通常であれば、侍女は主と同じ席に着くことはあり得ないが、ソフィアを大事に思っているシャーロットがハワード公爵へ直談判し、ソフィアだけは許されていた。
「ソフィア、ミルフィーユが嫌いじゃなかったかしら?」
「……。お嬢様、申し訳ありません。実は……。」
ソフィアは以前ハロルドがシャーロットについた嘘をすっかり忘れてミルフィーユを注文してしまい、シャーロットが怪訝な顔をする。あれはハロルドがソフィアとカフェに行きたいがために、シャーロットへ嘘をついていたことをソフィアは説明した。
「まぁ!ハロルドはソフィアが大好きなのね。」
気まずそうにしているソフィアへ、可笑しそうにころころと笑うシャーロットが更に追い詰めてくる。
「ねぇ、ソフィアはハロルドのどんなところが好きなのかしら?」
「……ッ!コホッ、コホッ!」
大好きなミルフィーユをのどに詰まらせ、咳き込むソフィアに、シャーロットは謝りつつもソフィアの答えを期待しているようで瞳をキラキラさせてソフィアの言葉を待っている。
「お願い!聞かせてほしいの。」
「あまり……よく分かりませんが……。」
シャーロットは大きく頷きながら聞いている。
「先日、私の友人が婚約のお祝いパーティーを開いてくれたのですが、私の友人夫婦に愛想よくしてくれて……。」
「まぁ!あのハロルドが?」
「はい、頑張って交流してくれていました。」
「ソフィアはそれが嬉しかったのね。」
シャーロットの方が嬉しそうに相槌を打った。そう、馬車の中では失態を犯したが、ソフィアにとってはあの時のことが嬉しく、だからこそ馬車の中で上機嫌になっていたのかもしれない。
「え、ええ、そうなのかもしれません……。」
「ふふふ、良かった。」
顔を綻ばせるシャーロットを、ソフィアは不思議そうに見つめる。
「ソフィアがハロルドと婚約した時も聞いたけれど、やっぱり心配だったの。ハロルドは冷たいところがあるし……だけど、ソフィアには違うのね。仲が良さそうで安心したわ。」
「……っ、お嬢様、ありがとうございます。」
”仲が良さそう”という言葉に反応したソフィアだったが、流石に主の前では堪えた。ソフィアは先日の失態からハロルドに合わせる顔が無く未だに悩んでいた。
お知らせ:
新作『婚活写真、お撮りします。』
本日より公開しております。ライト文芸大賞エントリー中です。いつもと少し違うテイストになっておりますが、お読み頂けたら嬉しいです!
32
あなたにおすすめの小説
幸せアプリ
青の雀
恋愛
結婚間近の同棲していた恋人に捨てられ、契約直前の仕事を同期男性に盗られたその日はまさに厄日かと思われた。
帰宅して、風呂上りにスマホでサーフィンしていたら、見覚えのないアプリがインストールされている!
すぐに削除するつもりが……、次第にアプリの指示通り行動していたら、幸せが手に入るようになりました♡
シナモンと葡萄酒と白銀の魔杖
柳葉うら
恋愛
リーツェル王国の王都の片隅に、夜の間だけ現れるカフェがある。
名前はカフェ銀月亭。店主のエーファは元・氷晶の賢者こと王国最高峰の魔法使い。彼女が早過ぎる引退後に開いた、一風変わった店だ。
エーファは看板フェンリルのシリウスと一緒に店をきりもりするかたわら、大切な「お嬢様」を国外追放した忌々しい王太子に復讐するべく暗躍している。
ある日、エーファと年が近く顔見知りの騎士団長のランベルト・フォン・ロシュフォールが店を訪れた。
エーファの行動を訝しんだランベルトは、見張りのために毎日来るようになる。それに気づいたエーファだが、ランベルトから情報を引き出すためにわざと彼に近づき――腹の探り合いが始まった。
警戒し合っていた二人が、交流を重ねていく間に恋に落ちてしまうお話です。
エーファがカフェで出すスパイスが効いたお菓子やホットワイン、そして頼もしいモフモフ相棒の活躍もお楽しみください。
※アドベントカレンダーとして毎日更新する予定ですので応援いただけますと嬉しいです
二年後、可愛かった彼の変貌に興ざめ(偽者でしょう?)
岬 空弥
恋愛
二歳年下のユーレットに人目惚れした侯爵家の一人娘エリシア。自分の気持ちを素直に伝えてくる彼女に戸惑いながらも、次第に彼女に好意を持つようになって行くユーレット。しかし大人になりきれない不器用な彼の言動は周りに誤解を与えるようなものばかりだった。ある日、そんなユーレットの態度を誤解した幼馴染のリーシャによって二人の関係は壊されてしまう。
エリシアの卒業式の日、意を決したユーレットは言った。「俺が卒業したら絶対迎えに行く。だから待っていてほしい」
二年の時は、彼らを成長させたはずなのだが・・・。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
銀鷲と銀の腕章
河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。
仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。
意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。
全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる