その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱

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第六章 新一年生オリエンテーション

61.桜二くんの状況

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「おかげでオレは大忙しだよ。ただでさえ英蘭会の仕事あるのに、スポンサーの顔を立たせようって先生たちがオレに目立たせようとするから、もう大変」


 少し空気を気まずいものにしたと思ったのだろう、桜二くんが茶化すようにそう言った。
 だが「やってらんないねー」と頭の後ろで手を組んだ瞬間、肩からパキっと骨が鳴る音が聞こえる。……本当に大変そうだ。


「それで? スポンサーがグループ分けと何の関係があるの」


 アキくんの言葉に、空気に流されかけていた私はハッと我に返る。
 話が一段落した雰囲気が出ているが、感じなことはまだ答えてもらっていないんだった。
 自覚はあったのか、桜二くんが気まずそうに頬をかく。


「あー、それは……」
「アキくん、いいよ。桜二くんのことが心配だっただけで、困らせるつもりはないから」


 そう言えば、桜二くんはびっくりしたように息をのんだ。


「オレのこと、心配してくれてたんだ……?」
「? そりゃあ、ずっと怖い顔だったから……何かあったら、力になりたいし」


 話している間、桜二くんは私の動作を一つも見逃さないと言わんばかりに見つめてくる。
 あまりもの視線の強さに、気を悪くさせるようなことを言ったのかと思って声が尻すぼみになっていく。
 どんどん挙動不審になっていく私をじっくり観察したかと思えば、桜二くんはついっと顔をそらした。


「……アリガトウ」


 うっかり聞き逃してしまいそうなほど小さな声に、アキくんが雨上がりの道路に転がっているミミズを見るような目をした。


「照れるところ特殊すぎるでしょ」
「うるさい。今怖くない顔に切り替えてるだけだから」


 よく見れば、桜二くんの耳がほんのり赤い。
 無理がありすぎる言い訳もあって、私は思わず小さく笑ってしまう。
 そんな私を今度は颯馬くんがじっと見つめたかと思えば、やがて覚悟を決めたように口を開いた。


「俺がこんな形でお前たちを誘ったのは、このままだと桜二だけが林間学校を楽しめないと思ったからだ」
「ちょっ、待ってソウ! それは――」


 颯馬くんの言葉を遮るように、桜二くんが慌てたようにこちらに向き直る。
 その顔は本気で焦っているように見えて、私とアキくんはお互いに顔を見合わせた。


「えっと、どういうことか聞いてもいいかな……?」
「ほら桜二、ここまで来たら全部言った方が楽だぞ」
「そんな人を悪人みたいに言わないでくれない!?」


 話す気がなさそうな桜二くんを無視して、颯馬くんが代わりに続けた。


「実はさ、今回のスタンプラリー、桜二だけ参加不可だったんだよ」
「え? それはどうして……?」


 思わず聞き返せば、颯馬くんは少し肩をすくめて答えた。
 桜二くんが実力行使で何とか颯馬くんを黙らせようと挑戦するが、あっけなく片手間で封じられていた。小さく「この馬鹿力がっ」という悔しそうな声が聞こえるが、私はそれどころではなかった。


「もしかして、スポンサーとして白鳥グループが関わっているから?」


 アキくんの疑問に、颯馬くんは頷いて見せた。


「コースも景品も全部、白鳥グループが準備したものだ。だから先生たちの間で、桜二が参加するのは不公平ではないかっていう話が出たんだ」
「でも、桜二くんは直接関わっていないんだよね?」


 そう言えば、桜二くんは緩く首を振った。


「事実として関わってなくても、言葉だけじゃ納得しない人はいるってこと」


 みんなの前でスポンサーだと明かすと気を遣われるからという理由で、桜二くんは先生たちに口止めをしているらしい。
 白鳥グループの方も宣伝というより学校への寄付を目的とした関りだから、その提案はあっさり受け入れられたらしいけど……やっぱり大きな企業なだけあって、分かる人は景品だけで関わっているのが分かるらしい。


(自分で用意して自分でゲットするのは、確かにマルチポンプっぽいけど……)


 だからってあんまりだ。
 本人自身じゃなくても、みんなを一番楽しませようと力を貸してくれた桜二くんが一番楽しめないなんて。
 一人ホテルに取り残される桜二くんの姿を想像して、それだけで胸が痛くなった。


「まあ、そんな感じで桜二は一人だけグループも組まずにホテル待機だったんけど……それはいくら何でも寂しすぎるからな。先生と交渉して、絶対に上位にならないという条件で俺と組むことになったんだ」


 颯馬くんはさらりとしていたけれど、その裏にどれだけの手間と気苦労があったのか、少し想像するだけでも気が遠くなる。


「じゃあ、一条たちのグループは二人だけ?」
「いや。のんびり雰囲気を楽しみたいやつと組んでもらったから、四人グループだ」
「スタンプラリー本気で挑むやつだと、さすがに申し訳ないからね。ガチで勝ちを狙えないって時点で、面白さ半減だし」


 桜二くんがぼそっと漏らす。きっと普通に楽しみたかったのだろう。


「ええ、なおさらなんでぼくたちを誘ったのさ」


 アキくんの戸惑ったような声に、颯馬くんは大きくため息をついて桜二くんに視線を向けた。



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