12 / 76
美少年トリオ
しおりを挟む
ユーリの姪であるクレール・ラン・ヤスミカ嬢は双子兄のジャンに小声で伝えた。
「ジャン。さっきから窓の外で知らない子が覗いてるわ。どなたかしら?」
今は算術の自習中で他の子供たちは自習に集中している。
賢いクレールはすぐに問題集をうめたので同じく解答を書き終わったジャンに声をかけたのだ。
自習の様子を見ている子供は12歳くらいの少年で髪の色は赤毛である。
この土地の人間ではないのはクレールにもジャンにも理解できるが、赤毛の少年がなんで窓辺にいるのかは理解できない。
なぜなら、クレールとジャンがいる教室は3階にあるからだ。
不審者だとはわかるが何者か双子は気になる。
「ミシェル様や先生方を呼んだ方がいいかしら?」
「でも、騒ぐと窓辺の男の子が転落するかも」
優しいジャンは騒ぎを大きくするのを避けてクレールと様子を伺うことにした。
そうしているうちに算術の自習が終わりミシェルが教室に入ってくる。
「自習でわからないところはないかな?質問がある人は手をあげて」
ミシェルが笑顔で促すと教室にいる全員が挙手した。
「ミシェル先生!窓辺に知らない子がいます!自習中ずっと見てました!!」
クレールやジャン以外の子供も窓辺にいる赤毛の少年に気づいていたがスルーしていたらしい。
ミシェルが窓辺に目をやると赤毛の少年がパァと笑顔になり身を乗り出した。
「ミシェル様!!やっと会えた!!御元気でしたか!?」
そう叫んだ瞬間に赤毛の可愛い少年が視界から消えたようにクレールには見えたが実際は両手を離したので3階から転落しただけだった。
「ステフ!!?」
少年が落下するとミシェルが焦って窓辺に駆け寄った。
クレールとジャンも急いで窓の外をみたがステフという赤毛の少年は無事である。
校舎の下に敷かれた避難用マットにステフは転がっている。
そして、そばにはモモが仁王立ちしており、目を回しているステフを怒鳴り付けていた。
「このバカ!!ミシェルに会いたいからって校舎の3階までよじ登るな!!おとなしく屋敷で待てって言ったろが!」
モモがげんこつしようとすると近くにいた少年2人が止めている。
ひとりは薄茶色の髪のスラリとした美少年でもうひとりは栗色が髪だ。
薄茶髪と栗髪の美しい少年が必死でモモに謝っている。
「すみません!モモ様。ステフは早くミシェル様のお顔がみたくて落ち着かなかったのです!」
「ヒナリザの言うとおりです!俺たちもミシェル様とお会いしたいから気持ちは分かります!許してやってください!」
薄茶髪の少年がヒナリザで栗色の髪の少年はマックス……3階から落ちたステフを含めて全員がミシェルが引き取った美少年である。
モモと同じくミシェルの愛人だが立場は圧倒的にモモの方が上であった。
そして、この美少年トリオを監督するのはモモの役目である。
ヒナリザはモモと同い年の14歳だが普段は控えめでおとなしい。
マックスは13歳で利発だが優しくて仲間思いな性格だった。
最年少のステフは12歳で無邪気で愛らしいが思い込むと突っ走る子である。
この3人は同じ孤児院兼売春宿にいた関係で兄弟のように仲がいい。
引き取られたのはモモより遅いのでモモにとっては後輩のような存在だ。
ミシェルの寵愛を争うライバル関係になりそうだが、3人はモモのことも大好きである。
むしろ、3人ともミシェルに最も愛され、シルバー家本家からも頼りにされているモモを尊敬している節がある。
なのでモモにとっては面倒みるにやぶさかではないが、別邸で待ってろと命じたのにステフがムチャしたので叱っているのだ。
「ステフ。ケガはないか?まったくお前は相変わらずだな」
モモが声を和らげるとミシェルが外に飛び出してきた。
「ステフ!よかった!無事か!危険だから3階までのぼらないで下駄箱から入りなさい」
ミシェルが頭を撫でるとステフがピンと起き上がりミシェルに抱きついた。
「ミシェルさまー!!お会いしたかっです!!ミシェル様とモモ様とまた暮らしたかった!!」
「私も会いたかった。ステフ、マックス、ヒナリザ。無事でなによりだ。ラン・ヤスミカ領の当主御一家には挨拶したか?」
ミシェルの問いにモモがすかさず答えた。
「ラン・ヤスミカ家当主のラクロワ様と奥方のリーサ様。嫡男のエセル様と若奥様のフィンナ様。そして別邸の主であるユーリ様とリン・ケリー様。皆さま揃ってステフ、マックス、ヒナリザの滞在を快諾してくれた。リン様が用意してくれた部屋が3人の居室になる」
「そうか!モモ。自習の採点があるから3人を連れて先にラン・ヤスミカ家の別邸に戻ってくれ。私もすぐに戻る」
「わかった。ほら、ステフ。ミシェルにも再会できたし帰るぞ」
モモが連れて行こうとすると校舎から美味しそうな匂いがした。
ラン・ヤスミカ領の学校には給食がある。
空腹だったらしいステフはお腹を鳴らしている。
それを聞いたモモが呆れた顔で言った。
「ステフ。さっき、別邸でシオンが用意した食事を食べただろ」
「はい。でも…お腹すきました」
無垢な顔で微笑むステフを見たミシェルがモモに提案した。
「4人とも給食を食べて帰ればいい」
「ダメだ!給食費払ってない俺らが食べたらラン・ヤスミカ家の立場がない!」
反対するモモにステフがしょぼんとすると近くで声がした。
「モモ様。給食なら沢山あるし誰も怒らないわ」
状況を観察していたクレールが告げるとジャンも控えめに微笑んだ。
「今日の給食。飼育小屋のウサギのソテーだよ。ウサギ美味しいから食べよ」
飼育小屋のウサギを食材にして命の大切さを学ばせる校風であった。
ラン・ヤスミカ家の令息と令嬢が許したのだから給食食べても問題ないとモモは判断した。
「お心遣い感謝します。ステフ!ジャン様とクレール様にお礼を言えよ」
「はーい!モモ様!ありがとう!ジャン!クレール!」
「バカ!お二人はラン・ヤスミカ家の方々だ!」
モモがステフを叱りつけるとジャンが穏やかになだめた。
いい忘れてたがジャン&クレールのラン・ヤスミカ家の双子兄妹はまだ9歳である。
9歳にしてとても大人な対応をするあたりはやはり、嫡男エセルとフィンナ夫婦の子供だ。
ミシェルはジャンとクレールに礼をいうとモモたちを飼育小屋に連れていった。
「4人分のウサギを殺らないとね」
ミシェルとモモ、ステフとマックスにヒナリザが見ている前でウサギを食材にしていくジャン・ラン・ヤスミカとクレール嬢。
「ジャン!血抜きしないと美味しくないわよ」
「クレール。毛皮は工作に使うから破かないようにね」
ワイルドにウサギをさばく双子兄妹を見ていて、ステフは泣いてしまった。
自分が給食を食べたがったばかりに4羽のウサギが食材にされている。
マックスとヒナリザにしがみついて泣いているステフにミシェルが言い聞かせた。
「私も最初はビックリしたが食材とは命を頂くものだ。ステフ。ウサギが美味だから味わいなさい」
ミシェルに言われても泣いてるステフの頭をモモは撫でるとウサギをばっさり殺っているジャンに謝った。
「失礼しました。ステフは泣き虫で。気を悪くしないでください」
「モモ様。お気になさらず。4羽殺ったので早速ソテーにしましょう」
「ジャンはウサギ捌きの成績は1番なの!鶏絞めるのも得意よ」
温厚でわりかしミシェル好みの美少年であるジャンはかなりワイルドであった。
待ちに待った給食時間。
殺りたてウサギソテーを食べるとステフは泣き止み元気になった。
「美味しい!ジャン殿!今度、ウサギ捌き教えて」
ステフはすっかりジャンと仲良しになる。
モモはミシェルと相談してステフ、マックス、ヒナリザは学校に通わせることに決めた。
「学費と給食費はギャンブルで稼いだ金がある。3人は別邸で働かせる以前に教育させる」
「その方がよさそうだ。私がユーリ殿とリンに頼もう」
こうして、ミシェルの愛人であるステフ、マックス、ヒナリザの美少年トリオはジャンやクレールと同じ学校で学ぶことになった。
美少年トリオが楽しそうに学校に行く姿を見てユーリは今さらながら思ったのだ。
「3人とも義兄上の愛人だよな?これって教育委員会的に大丈夫か?」
それをリンに質問するとリンは笑顔で断言した。
「ミシェル兄上にも砂漠の砂レベルの節度はあります!愛人と学校でよろしくするなんてことはしません!」
「義兄上の節度って砂漠の砂か!?でも、まあ、本当に節度なしならモモ殿を1番に学校に入れるか?」
なんとなく納得するユーリを見てリンは微笑んだ。
モモは素直にミシェルに甘えられるステフたちが羨ましかった。
そんなモモの気持ちを見透かしたようにリンは小声で伝えた。
「モモ。ステフが筆記具とノートと教本を忘れてるので届けて」
「大切なもの全部忘れてやがる!!」
急いで出ていくモモを見送ったリンがユーリに言った。
「私がモモだったら愛人3人にあそこまで優しくはなれません。嫉妬に狂ってます」
「リン!俺は愛人3人もできないから安心しろ!」
「では?3人未満は作る気ですか?」
悪戯っぽくリンが笑うとユーリは赤面してリンを抱きしめた。
「リン…そういう意地悪は言うな」
「ユーリは本当に正直ですね。そういうところが好きです」
ラブラブなユーリとリンを見守っていた執事のシオンは見抜いていた。
リンがあらかじめステフのカバンから筆記具と教本とノートを抜いていたと。
モモもそれくらい察したがミシェルのところに行ける口実ができたので乗っかった。
ステフのノートを見たモモは嫉妬より「ステフ!文字の綴りが全然ちげーし!帰ったら勉強させる!」と決意しながら学校へと向かったのである。
マックスとヒナリザはステフに教本を見せながら「あっ!これ絶対にモモ様がキレる」と賢くも悟っていた。
end
「ジャン。さっきから窓の外で知らない子が覗いてるわ。どなたかしら?」
今は算術の自習中で他の子供たちは自習に集中している。
賢いクレールはすぐに問題集をうめたので同じく解答を書き終わったジャンに声をかけたのだ。
自習の様子を見ている子供は12歳くらいの少年で髪の色は赤毛である。
この土地の人間ではないのはクレールにもジャンにも理解できるが、赤毛の少年がなんで窓辺にいるのかは理解できない。
なぜなら、クレールとジャンがいる教室は3階にあるからだ。
不審者だとはわかるが何者か双子は気になる。
「ミシェル様や先生方を呼んだ方がいいかしら?」
「でも、騒ぐと窓辺の男の子が転落するかも」
優しいジャンは騒ぎを大きくするのを避けてクレールと様子を伺うことにした。
そうしているうちに算術の自習が終わりミシェルが教室に入ってくる。
「自習でわからないところはないかな?質問がある人は手をあげて」
ミシェルが笑顔で促すと教室にいる全員が挙手した。
「ミシェル先生!窓辺に知らない子がいます!自習中ずっと見てました!!」
クレールやジャン以外の子供も窓辺にいる赤毛の少年に気づいていたがスルーしていたらしい。
ミシェルが窓辺に目をやると赤毛の少年がパァと笑顔になり身を乗り出した。
「ミシェル様!!やっと会えた!!御元気でしたか!?」
そう叫んだ瞬間に赤毛の可愛い少年が視界から消えたようにクレールには見えたが実際は両手を離したので3階から転落しただけだった。
「ステフ!!?」
少年が落下するとミシェルが焦って窓辺に駆け寄った。
クレールとジャンも急いで窓の外をみたがステフという赤毛の少年は無事である。
校舎の下に敷かれた避難用マットにステフは転がっている。
そして、そばにはモモが仁王立ちしており、目を回しているステフを怒鳴り付けていた。
「このバカ!!ミシェルに会いたいからって校舎の3階までよじ登るな!!おとなしく屋敷で待てって言ったろが!」
モモがげんこつしようとすると近くにいた少年2人が止めている。
ひとりは薄茶色の髪のスラリとした美少年でもうひとりは栗色が髪だ。
薄茶髪と栗髪の美しい少年が必死でモモに謝っている。
「すみません!モモ様。ステフは早くミシェル様のお顔がみたくて落ち着かなかったのです!」
「ヒナリザの言うとおりです!俺たちもミシェル様とお会いしたいから気持ちは分かります!許してやってください!」
薄茶髪の少年がヒナリザで栗色の髪の少年はマックス……3階から落ちたステフを含めて全員がミシェルが引き取った美少年である。
モモと同じくミシェルの愛人だが立場は圧倒的にモモの方が上であった。
そして、この美少年トリオを監督するのはモモの役目である。
ヒナリザはモモと同い年の14歳だが普段は控えめでおとなしい。
マックスは13歳で利発だが優しくて仲間思いな性格だった。
最年少のステフは12歳で無邪気で愛らしいが思い込むと突っ走る子である。
この3人は同じ孤児院兼売春宿にいた関係で兄弟のように仲がいい。
引き取られたのはモモより遅いのでモモにとっては後輩のような存在だ。
ミシェルの寵愛を争うライバル関係になりそうだが、3人はモモのことも大好きである。
むしろ、3人ともミシェルに最も愛され、シルバー家本家からも頼りにされているモモを尊敬している節がある。
なのでモモにとっては面倒みるにやぶさかではないが、別邸で待ってろと命じたのにステフがムチャしたので叱っているのだ。
「ステフ。ケガはないか?まったくお前は相変わらずだな」
モモが声を和らげるとミシェルが外に飛び出してきた。
「ステフ!よかった!無事か!危険だから3階までのぼらないで下駄箱から入りなさい」
ミシェルが頭を撫でるとステフがピンと起き上がりミシェルに抱きついた。
「ミシェルさまー!!お会いしたかっです!!ミシェル様とモモ様とまた暮らしたかった!!」
「私も会いたかった。ステフ、マックス、ヒナリザ。無事でなによりだ。ラン・ヤスミカ領の当主御一家には挨拶したか?」
ミシェルの問いにモモがすかさず答えた。
「ラン・ヤスミカ家当主のラクロワ様と奥方のリーサ様。嫡男のエセル様と若奥様のフィンナ様。そして別邸の主であるユーリ様とリン・ケリー様。皆さま揃ってステフ、マックス、ヒナリザの滞在を快諾してくれた。リン様が用意してくれた部屋が3人の居室になる」
「そうか!モモ。自習の採点があるから3人を連れて先にラン・ヤスミカ家の別邸に戻ってくれ。私もすぐに戻る」
「わかった。ほら、ステフ。ミシェルにも再会できたし帰るぞ」
モモが連れて行こうとすると校舎から美味しそうな匂いがした。
ラン・ヤスミカ領の学校には給食がある。
空腹だったらしいステフはお腹を鳴らしている。
それを聞いたモモが呆れた顔で言った。
「ステフ。さっき、別邸でシオンが用意した食事を食べただろ」
「はい。でも…お腹すきました」
無垢な顔で微笑むステフを見たミシェルがモモに提案した。
「4人とも給食を食べて帰ればいい」
「ダメだ!給食費払ってない俺らが食べたらラン・ヤスミカ家の立場がない!」
反対するモモにステフがしょぼんとすると近くで声がした。
「モモ様。給食なら沢山あるし誰も怒らないわ」
状況を観察していたクレールが告げるとジャンも控えめに微笑んだ。
「今日の給食。飼育小屋のウサギのソテーだよ。ウサギ美味しいから食べよ」
飼育小屋のウサギを食材にして命の大切さを学ばせる校風であった。
ラン・ヤスミカ家の令息と令嬢が許したのだから給食食べても問題ないとモモは判断した。
「お心遣い感謝します。ステフ!ジャン様とクレール様にお礼を言えよ」
「はーい!モモ様!ありがとう!ジャン!クレール!」
「バカ!お二人はラン・ヤスミカ家の方々だ!」
モモがステフを叱りつけるとジャンが穏やかになだめた。
いい忘れてたがジャン&クレールのラン・ヤスミカ家の双子兄妹はまだ9歳である。
9歳にしてとても大人な対応をするあたりはやはり、嫡男エセルとフィンナ夫婦の子供だ。
ミシェルはジャンとクレールに礼をいうとモモたちを飼育小屋に連れていった。
「4人分のウサギを殺らないとね」
ミシェルとモモ、ステフとマックスにヒナリザが見ている前でウサギを食材にしていくジャン・ラン・ヤスミカとクレール嬢。
「ジャン!血抜きしないと美味しくないわよ」
「クレール。毛皮は工作に使うから破かないようにね」
ワイルドにウサギをさばく双子兄妹を見ていて、ステフは泣いてしまった。
自分が給食を食べたがったばかりに4羽のウサギが食材にされている。
マックスとヒナリザにしがみついて泣いているステフにミシェルが言い聞かせた。
「私も最初はビックリしたが食材とは命を頂くものだ。ステフ。ウサギが美味だから味わいなさい」
ミシェルに言われても泣いてるステフの頭をモモは撫でるとウサギをばっさり殺っているジャンに謝った。
「失礼しました。ステフは泣き虫で。気を悪くしないでください」
「モモ様。お気になさらず。4羽殺ったので早速ソテーにしましょう」
「ジャンはウサギ捌きの成績は1番なの!鶏絞めるのも得意よ」
温厚でわりかしミシェル好みの美少年であるジャンはかなりワイルドであった。
待ちに待った給食時間。
殺りたてウサギソテーを食べるとステフは泣き止み元気になった。
「美味しい!ジャン殿!今度、ウサギ捌き教えて」
ステフはすっかりジャンと仲良しになる。
モモはミシェルと相談してステフ、マックス、ヒナリザは学校に通わせることに決めた。
「学費と給食費はギャンブルで稼いだ金がある。3人は別邸で働かせる以前に教育させる」
「その方がよさそうだ。私がユーリ殿とリンに頼もう」
こうして、ミシェルの愛人であるステフ、マックス、ヒナリザの美少年トリオはジャンやクレールと同じ学校で学ぶことになった。
美少年トリオが楽しそうに学校に行く姿を見てユーリは今さらながら思ったのだ。
「3人とも義兄上の愛人だよな?これって教育委員会的に大丈夫か?」
それをリンに質問するとリンは笑顔で断言した。
「ミシェル兄上にも砂漠の砂レベルの節度はあります!愛人と学校でよろしくするなんてことはしません!」
「義兄上の節度って砂漠の砂か!?でも、まあ、本当に節度なしならモモ殿を1番に学校に入れるか?」
なんとなく納得するユーリを見てリンは微笑んだ。
モモは素直にミシェルに甘えられるステフたちが羨ましかった。
そんなモモの気持ちを見透かしたようにリンは小声で伝えた。
「モモ。ステフが筆記具とノートと教本を忘れてるので届けて」
「大切なもの全部忘れてやがる!!」
急いで出ていくモモを見送ったリンがユーリに言った。
「私がモモだったら愛人3人にあそこまで優しくはなれません。嫉妬に狂ってます」
「リン!俺は愛人3人もできないから安心しろ!」
「では?3人未満は作る気ですか?」
悪戯っぽくリンが笑うとユーリは赤面してリンを抱きしめた。
「リン…そういう意地悪は言うな」
「ユーリは本当に正直ですね。そういうところが好きです」
ラブラブなユーリとリンを見守っていた執事のシオンは見抜いていた。
リンがあらかじめステフのカバンから筆記具と教本とノートを抜いていたと。
モモもそれくらい察したがミシェルのところに行ける口実ができたので乗っかった。
ステフのノートを見たモモは嫉妬より「ステフ!文字の綴りが全然ちげーし!帰ったら勉強させる!」と決意しながら学校へと向かったのである。
マックスとヒナリザはステフに教本を見せながら「あっ!これ絶対にモモ様がキレる」と賢くも悟っていた。
end
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる