27 / 38
ロッテの悲鳴
しおりを挟む
美しい星空が消えて、部屋に明かりが戻った時、ナオはすっかりロマンチックな気分に浸っていました。
だからロビンが船の船室に案内した時だって、まだデート気分だったのです。
「ナオ。明日は一緒に戦場に行ってもらうことになった。だからこの後はセディのところに行って、君たちの戦闘服の強度を確認しておきたい。いいね」
ロビンにそう言われた時、やっとナオは今がどんな時だったかを思い出しました。
ナオは自分の甘さを恥じながらも、しっかりと頷きました。
「大丈夫だよ。君はロッテと衣装をつけての魔法の最終チェックをしておいてくれるだけでいいからね。私はセディと打ち合わせがあるが、帰りは一緒だ。勿論今夜も君の隣で眠ろう。明日はいっしょに戦場に転移するよ」
それを聞いてナオは不謹慎だってわかっていても、今夜ロビンがいることに安堵していました。
「ナオ、一体これはどういうことなの?」
ロッテはナオに会うなり挨拶もしないで、いきなり噛みついてきました。
普段はおしとやかなロッテのそんな姿に、ナオは目を丸くしました。
ロッテはあの魔法少女の衣装をしっかりと握りしめているので、どうやらその衣装になにか間違いがあったようです。
ナオはいつも使っている訓練室に案内されていて、ここで魔法少女衣装を着用して模擬戦闘をすることになっていたはずです。
なのにロッテは怒りのあまり、真っ赤な顔になっているんです。
「えっと、サイズに間違いがあったのかな? 大丈夫だよ。戦争までまだ時間があるから、作り直せるよ。よければすぐにここに仕立て屋を呼ぶから……」
「冗談でしょ。サイズはピッタリよ。ええ、これでもかってぐらいにピッタリだわ。私が言いたいのは、なんでこんなデザインなのかってことなのよ」
「どうしてそんなに怒っているの? ロッテだって魔法少女は知っているでしょう。だって大昔から魔法少女は活躍してきたんだもの。ロッテが知らないはずないと思ったんだけど」
呑気なナオの言葉を聞いて、とうとうロッテは脱力してしまいました。
「そうよねぇ。ナオってそう言う子だったわ。私が悪かったのよ。衣装をナオにまかせっきりにするなんて。あぁ、私ってどうしてこう、詰めが甘いのかしら」
ナオはどうしてロッテがそこまでこの衣装を嫌うのか、全くわかっていませんでした。
ナオの魔法少女の衣装は、有名なアイドルグループの衣装にだって似ていますし、決して奇妙な物ではないと自負しています。
第一、この衣装はいずれ王都で売り出すつもりですし、今までの服よりずっと動きやすいのにお洒落だからきっと人気がでると思っています。
「ナオ、いったいこの衣装のどこがそんなに気に入らないの。ちゃんと上着もあるし、これってあのアイドルグループだってよく着ているデザインだよ」
ロッテはふるふると身体を震わせると、とうとう涙目になってしまいました。
「だからそれがおかしいって言っているのよ。ナオはいいわよ。アイドルの衣装を着たって似合う年頃だもの。でも私は日本では28歳だったの。いい大人なのよ。そんなチャラチャラした服なんて、恥ずかしくて着られるわけないでしょう」
ナオはぽかんとしてしまいました。
だってロッテってばこの魔法少女の衣装を着てモデルができるくらいにスタイルだっていいし、美人だし、それに青銀の髪と菫色の瞳になった時、お肌だって髪だって少女と言ってもいいぐらいに若返っているのです。
「ねぇ、ロッテ。アイドルグループにはロッテと同じ年齢でもこの衣装を着ていた人だっていくらでもいるんだよ。アイドル=10代って訳じゃないんだよ。今ではね。30歳ぐらいまでなら十分アイドルをやれるんだってば」
ロッテにはナオの言葉は、なんの慰めにもなりませんでした。
そこでナオはロッテに代替案を出してみました。
ロッテが持っている中で一番動きやすい服に、もう一度セディに魔方陣を付与してもらうことです。
ナオはロッテとお揃いで魔法少女になることを楽しみにしていましたが、ロッテに意地悪をしたい訳ではないのです。
そんなに嫌なら、衣装をチェンジすればいいだけですから。
ナオの提案を聞くと、ロッテはすくっと立ち上がって、訓練室を飛び出していきました。
ナオはやれやれと首をふると、自分の衣装をきっちりと着付けていきます。
髪をツインテールに結ってしまえば、戦うスタイルの出来上がりです。
ナオは訓練モードをスタートさせました。
これは実際には身体にダメージを残さない模擬攻撃を受けて、そのダメージ度を計測することができます。
いつもの訓練ならきちんと防御魔法を発動させるのですが、ナオはそのままで攻撃を受け続けます。
魔法攻撃でも、物理攻撃でも、同じ場所に繰り返してダメージを受けなければ、この魔法少女の衣装は立派に攻撃を防御できました。
ナオたちだってただ黙って攻撃を受け続ける訳ではないので、この魔法少女の衣装を着ていればほぼノーダメージで戦いを切り抜けられそうです。
その計測結果をセディとロビンに報告するためにまとめているところに、ロッテがしょんぼりと帰ってきました。
「ロッテ、ダメだったの? セディはなんて言っているの?」
セディはロッテのお願いを歯牙にもかけませんでした。
魔法少女衣装を着て戦闘に参加するか、それとも王都で留守番するかの2択しかないというのです。
しかしその理由を聞けば、納得がいきます。
召喚魔法ほどではありませんが、全攻撃無効化の魔方陣なんて、さすがの天才セディをしても難易度は恐ろしく高かったのです。
この戦闘にロッテやナオが参加すると言い出す場合に備えて、ロビンは同じ魔方陣を3つセディに注文していました。
セディはこの魔方陣を3ヶ月かかって作り上げたのです。
「でもロッテ。と言う事はもうひとつ予備があるんじゃ」
ナオはそう言いかけて口ごもりました。
忘れていましたけれども、戦場にはナオ達よりも、もっと守らなければならない人がいます。
表向きはロビンは王太子殿下を確実に守ることのできる魔方陣を、セディに発注したのです。
その魔方陣がなぜか3つになったのは、内緒のことでした。
「そうよ。さすがに私だって殿下の魔方陣を寄越せなんて言えないわ。言ったところでセディが応じる訳もないしね」
すっかり落ち込んだロッテにナオは厳しく言いました。
「無理なことにあれこれ悩むのは無駄だわ。ロッテ、さっさと訓練をはじめるわよ。私の服では完璧なデータが取れたけど、ロッテの衣装もチェックしないといけないの。さっさと着替えて頂戴」
「鬼、悪魔!」
ロッテの悲鳴なんて耳を貸さずに、ナオは近くの侍女さん方にロッテの着替えを頼みました。
侍女さん方はプロらしく、テキパキとロッテに衣装を身に着けさせると、ナオが頼んだ通り髪はポニーテールに結い上げて、大きなリボンで留めてくれました。
魔法少女姿のロッテは、どこかのスチール写真ばりに決まっていました。
ロッテだって恥ずかしそうにもじもじすれば、余計に視線が集まって恥ずかしい目にあうことぐらい知っています。
訓練室にいるのが女ばかりという気安さも手伝って、ロッテはいさましく防御データを取得してしまったのです。
「さぁ、ナオ。こうなったら破れかぶれだわ。このまま複合防御魔法の訓練を始めるわよ」
気合の入ったロッテの言葉に、ナオもすぐにロッテに同調しました。
陰陽の姫たちのマナを同調させることで、普通の何倍もの威力を持つ魔法を展開できるのです。
しっかりとお互いの気を同調させるために、ナオとロッテお互いの手を固く繋ぎ合っています。
そうすることで、2人のマナが融合しやすくなることがわかったからです。
最後の訓練も無事に終わり、2人は実験結果のデータを持って、セディやロビンたちの元に戻っていきました。
もちろんしっかり汗を流し、着替えも済ませています。
ナオだって所かまわず魔法少女姿になりたい訳ではないのですから。
「ほほう、これは素晴らしいね。さすがセディ。これほどとは思わなかった。これで殿下の身の安全は確保できたな」
ロビンがそう言えばセディは念を押しました。
「いいえ、王太子殿下の安全には、これでいいと言う訳にはいきませんよ。ロビン、殿下の戦闘には常に側に付き添ってくださいね。私は敵陣まで飛行魔法で飛んで、攻撃に回るつもりなので」
「了解しているよ。殿下が結婚されたら、陛下は王位を殿下に譲られるお気持ちのようだ。未来の王はこの私が傷ひとつつけずにお守りしますよ」
それを聞くとセディはため息をつきました。
「もともと王家とは最も勇猛果敢な騎士でもあるのだから、こうやって姫君を守るようなやり方はどこかおかしいことなんですけれどもね」
「そういうなセディ。いま殿下になにかあったら、この国は大揺れになってしまうだろうが。我々は、殿下を守りつつこの戦に勝利するしかないのだからな」
その夜ロビンはナオを抱きしめて、その真意を確かめるようにナオの薄紫の瞳を覗き込みました。
ロビンの紫の瞳は強い意思の力が感じられますが、番であるナオの瞳はどこか儚げな薄い紫色なのです。
「ナオ、いいかい。戦場では怒号が飛び交い、剣戟の凄まじい音がする。男たちが命を懸けているのだからね。死人が山と積まれ、怪我人のうめき声が地に満ちているんだ。そんな地獄にわざわざ行かなくても、私はきっと国もナオも守って見せる。ナオ、王都に残れ!」
ナオは黙って首をふりました。
儚げに見えた瞳には、決意の強い光が宿っています。
「こんなところであなたのご無事を祈っていられるほど、ナオは強くないのです。どうかロビン。私をこんなところに残しておかないで。一緒に戦います。きっと戦力になりますから」
ナオの決意を確認すると、ロビンは愛しくてたまらないというようにナオを抱きしめました。
だからロビンが船の船室に案内した時だって、まだデート気分だったのです。
「ナオ。明日は一緒に戦場に行ってもらうことになった。だからこの後はセディのところに行って、君たちの戦闘服の強度を確認しておきたい。いいね」
ロビンにそう言われた時、やっとナオは今がどんな時だったかを思い出しました。
ナオは自分の甘さを恥じながらも、しっかりと頷きました。
「大丈夫だよ。君はロッテと衣装をつけての魔法の最終チェックをしておいてくれるだけでいいからね。私はセディと打ち合わせがあるが、帰りは一緒だ。勿論今夜も君の隣で眠ろう。明日はいっしょに戦場に転移するよ」
それを聞いてナオは不謹慎だってわかっていても、今夜ロビンがいることに安堵していました。
「ナオ、一体これはどういうことなの?」
ロッテはナオに会うなり挨拶もしないで、いきなり噛みついてきました。
普段はおしとやかなロッテのそんな姿に、ナオは目を丸くしました。
ロッテはあの魔法少女の衣装をしっかりと握りしめているので、どうやらその衣装になにか間違いがあったようです。
ナオはいつも使っている訓練室に案内されていて、ここで魔法少女衣装を着用して模擬戦闘をすることになっていたはずです。
なのにロッテは怒りのあまり、真っ赤な顔になっているんです。
「えっと、サイズに間違いがあったのかな? 大丈夫だよ。戦争までまだ時間があるから、作り直せるよ。よければすぐにここに仕立て屋を呼ぶから……」
「冗談でしょ。サイズはピッタリよ。ええ、これでもかってぐらいにピッタリだわ。私が言いたいのは、なんでこんなデザインなのかってことなのよ」
「どうしてそんなに怒っているの? ロッテだって魔法少女は知っているでしょう。だって大昔から魔法少女は活躍してきたんだもの。ロッテが知らないはずないと思ったんだけど」
呑気なナオの言葉を聞いて、とうとうロッテは脱力してしまいました。
「そうよねぇ。ナオってそう言う子だったわ。私が悪かったのよ。衣装をナオにまかせっきりにするなんて。あぁ、私ってどうしてこう、詰めが甘いのかしら」
ナオはどうしてロッテがそこまでこの衣装を嫌うのか、全くわかっていませんでした。
ナオの魔法少女の衣装は、有名なアイドルグループの衣装にだって似ていますし、決して奇妙な物ではないと自負しています。
第一、この衣装はいずれ王都で売り出すつもりですし、今までの服よりずっと動きやすいのにお洒落だからきっと人気がでると思っています。
「ナオ、いったいこの衣装のどこがそんなに気に入らないの。ちゃんと上着もあるし、これってあのアイドルグループだってよく着ているデザインだよ」
ロッテはふるふると身体を震わせると、とうとう涙目になってしまいました。
「だからそれがおかしいって言っているのよ。ナオはいいわよ。アイドルの衣装を着たって似合う年頃だもの。でも私は日本では28歳だったの。いい大人なのよ。そんなチャラチャラした服なんて、恥ずかしくて着られるわけないでしょう」
ナオはぽかんとしてしまいました。
だってロッテってばこの魔法少女の衣装を着てモデルができるくらいにスタイルだっていいし、美人だし、それに青銀の髪と菫色の瞳になった時、お肌だって髪だって少女と言ってもいいぐらいに若返っているのです。
「ねぇ、ロッテ。アイドルグループにはロッテと同じ年齢でもこの衣装を着ていた人だっていくらでもいるんだよ。アイドル=10代って訳じゃないんだよ。今ではね。30歳ぐらいまでなら十分アイドルをやれるんだってば」
ロッテにはナオの言葉は、なんの慰めにもなりませんでした。
そこでナオはロッテに代替案を出してみました。
ロッテが持っている中で一番動きやすい服に、もう一度セディに魔方陣を付与してもらうことです。
ナオはロッテとお揃いで魔法少女になることを楽しみにしていましたが、ロッテに意地悪をしたい訳ではないのです。
そんなに嫌なら、衣装をチェンジすればいいだけですから。
ナオの提案を聞くと、ロッテはすくっと立ち上がって、訓練室を飛び出していきました。
ナオはやれやれと首をふると、自分の衣装をきっちりと着付けていきます。
髪をツインテールに結ってしまえば、戦うスタイルの出来上がりです。
ナオは訓練モードをスタートさせました。
これは実際には身体にダメージを残さない模擬攻撃を受けて、そのダメージ度を計測することができます。
いつもの訓練ならきちんと防御魔法を発動させるのですが、ナオはそのままで攻撃を受け続けます。
魔法攻撃でも、物理攻撃でも、同じ場所に繰り返してダメージを受けなければ、この魔法少女の衣装は立派に攻撃を防御できました。
ナオたちだってただ黙って攻撃を受け続ける訳ではないので、この魔法少女の衣装を着ていればほぼノーダメージで戦いを切り抜けられそうです。
その計測結果をセディとロビンに報告するためにまとめているところに、ロッテがしょんぼりと帰ってきました。
「ロッテ、ダメだったの? セディはなんて言っているの?」
セディはロッテのお願いを歯牙にもかけませんでした。
魔法少女衣装を着て戦闘に参加するか、それとも王都で留守番するかの2択しかないというのです。
しかしその理由を聞けば、納得がいきます。
召喚魔法ほどではありませんが、全攻撃無効化の魔方陣なんて、さすがの天才セディをしても難易度は恐ろしく高かったのです。
この戦闘にロッテやナオが参加すると言い出す場合に備えて、ロビンは同じ魔方陣を3つセディに注文していました。
セディはこの魔方陣を3ヶ月かかって作り上げたのです。
「でもロッテ。と言う事はもうひとつ予備があるんじゃ」
ナオはそう言いかけて口ごもりました。
忘れていましたけれども、戦場にはナオ達よりも、もっと守らなければならない人がいます。
表向きはロビンは王太子殿下を確実に守ることのできる魔方陣を、セディに発注したのです。
その魔方陣がなぜか3つになったのは、内緒のことでした。
「そうよ。さすがに私だって殿下の魔方陣を寄越せなんて言えないわ。言ったところでセディが応じる訳もないしね」
すっかり落ち込んだロッテにナオは厳しく言いました。
「無理なことにあれこれ悩むのは無駄だわ。ロッテ、さっさと訓練をはじめるわよ。私の服では完璧なデータが取れたけど、ロッテの衣装もチェックしないといけないの。さっさと着替えて頂戴」
「鬼、悪魔!」
ロッテの悲鳴なんて耳を貸さずに、ナオは近くの侍女さん方にロッテの着替えを頼みました。
侍女さん方はプロらしく、テキパキとロッテに衣装を身に着けさせると、ナオが頼んだ通り髪はポニーテールに結い上げて、大きなリボンで留めてくれました。
魔法少女姿のロッテは、どこかのスチール写真ばりに決まっていました。
ロッテだって恥ずかしそうにもじもじすれば、余計に視線が集まって恥ずかしい目にあうことぐらい知っています。
訓練室にいるのが女ばかりという気安さも手伝って、ロッテはいさましく防御データを取得してしまったのです。
「さぁ、ナオ。こうなったら破れかぶれだわ。このまま複合防御魔法の訓練を始めるわよ」
気合の入ったロッテの言葉に、ナオもすぐにロッテに同調しました。
陰陽の姫たちのマナを同調させることで、普通の何倍もの威力を持つ魔法を展開できるのです。
しっかりとお互いの気を同調させるために、ナオとロッテお互いの手を固く繋ぎ合っています。
そうすることで、2人のマナが融合しやすくなることがわかったからです。
最後の訓練も無事に終わり、2人は実験結果のデータを持って、セディやロビンたちの元に戻っていきました。
もちろんしっかり汗を流し、着替えも済ませています。
ナオだって所かまわず魔法少女姿になりたい訳ではないのですから。
「ほほう、これは素晴らしいね。さすがセディ。これほどとは思わなかった。これで殿下の身の安全は確保できたな」
ロビンがそう言えばセディは念を押しました。
「いいえ、王太子殿下の安全には、これでいいと言う訳にはいきませんよ。ロビン、殿下の戦闘には常に側に付き添ってくださいね。私は敵陣まで飛行魔法で飛んで、攻撃に回るつもりなので」
「了解しているよ。殿下が結婚されたら、陛下は王位を殿下に譲られるお気持ちのようだ。未来の王はこの私が傷ひとつつけずにお守りしますよ」
それを聞くとセディはため息をつきました。
「もともと王家とは最も勇猛果敢な騎士でもあるのだから、こうやって姫君を守るようなやり方はどこかおかしいことなんですけれどもね」
「そういうなセディ。いま殿下になにかあったら、この国は大揺れになってしまうだろうが。我々は、殿下を守りつつこの戦に勝利するしかないのだからな」
その夜ロビンはナオを抱きしめて、その真意を確かめるようにナオの薄紫の瞳を覗き込みました。
ロビンの紫の瞳は強い意思の力が感じられますが、番であるナオの瞳はどこか儚げな薄い紫色なのです。
「ナオ、いいかい。戦場では怒号が飛び交い、剣戟の凄まじい音がする。男たちが命を懸けているのだからね。死人が山と積まれ、怪我人のうめき声が地に満ちているんだ。そんな地獄にわざわざ行かなくても、私はきっと国もナオも守って見せる。ナオ、王都に残れ!」
ナオは黙って首をふりました。
儚げに見えた瞳には、決意の強い光が宿っています。
「こんなところであなたのご無事を祈っていられるほど、ナオは強くないのです。どうかロビン。私をこんなところに残しておかないで。一緒に戦います。きっと戦力になりますから」
ナオの決意を確認すると、ロビンは愛しくてたまらないというようにナオを抱きしめました。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる