【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝

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第十八話

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「アレス殿下が僕を呼び出したときは驚きましたよ。まさか、女性を口説けなんて命令。耳を疑いましたから」

「仕方ないだろ。ジーナ・アルベルタがニッグに殺意を抱かせるには愛憎が最も手っ取り早いって、王女様が言うから」

「あなたがその役割にピッタリな人物がいるって自信満々だったんでしょ」

 なんとケヴィンさんはジーナがニッグに殺意を抱かせる為に彼女に近付いたみたいです。
 一体、何が目的でそのようなことをしたのでしょう……。

「言われたとおりにジーナをギャンブルにのめり込ませて、友人たちに金を借りて回らせて、孤立させましたし、僕無しじゃ生きられないっていうくらい夢中にさせたのですから、褒めて欲しいですよ」

「ジーナって娘がチョロすぎない?」

「意外と男慣れしていなかったみたいで、その上、がっつり依存するタイプだったので、仕事はやりやすかったですよ」

 賭博場にジーナがケヴィンさんと行き来していて、借金をしていることは噂になっていましたが、それもケヴィンさんが仕組んだことだったなんて。

 ジーナを孤立させて依存させる。そうなるようにアレス殿下から命令されていたみたいです。

「ちょっと待ってください。わ、私の話を聞いて、怒ってくれたのは分かるのですが、どうしてそこまでしたのでしょう? だって、ニッグ様が悪い人と繋がっていることが分かれば、私から婚約破棄することも――」

「それでは、ニッグは確実にエルザを逆恨みするでしょうね……」

「アマンダお姉様……?」

 私はあまりにも手の込んだことをしているので、そこまでしなくてもニッグとは縁が切れるのでは、と思ったのですがアマンダお姉様はそれだと彼が逆恨みすると仰せになりました。
 まさか、普段温厚なアマンダお姉様が厳しい顔つきでそんなことを言われるなんて……。

「アマンダちゃんの言ったことに付け加えるとね。エルザちゃん、仮にニッグとジーナの関係をそのままにしておくと、あの二人は真実の愛を貫いた結果だのと美談にしかねないわ」

「美談に、ですか?」

「あの手の浮気をするような連中は自分たちを肯定するためなら、どんな無茶苦茶な理屈だって持ち出すのよ。だから互いを憎しみ合わせる必要があるの。そしたら、もうエルザちゃんのことを逆恨みする気も起きないしね」

 イリーナ様はニッグとジーナが私に逆恨みさせないようにする為に、そして、互いの行いを正当化させない為に、二人が互いに憎しみ合うようにする必要があったと話しました。
 
 どんな状況でも徹底的に私に対して実害が起きないように気を配ったみたいなのです。

「ともあれ、エルザ。お前に付いていた悪い虫は駆除した。父上には私から言っておくから、次はお前の好きな男を見つけてくれば良い」

「ルーク兄様……」

「どうしても見つからなかったら、わたくしが見つけてあげてもよろしくてよ」
「おっと、それならアマンダと一緒にこっちの国に来るか? いい男、紹介するぞ」
「はいはーい! 僕、立候補しまーす!」
「お前は絶対にダメ!」
「そ、そんなぁ!」

 ルーク兄様の言葉を聞いて、私はニッグと完全に縁を切ることが出来て、この先何も心配しなくても良いことを悟りました。

 皆さん、こんなにも頼りない私のために……ありがとうございます。
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