変態が紳士~憧れの堅物団長から「罵ってくれ」と迫られています〜

水瀬かずか

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告発2

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 そのまま雑談も交えながら自分に起こった出来事と密輸の告発をしていると、足音がいくつかやってきた。

「グラシアナ、これはどういう事だ?! なぜこんな事を……!」
「あ、指輪はそこの近衛の彼から渡された物です」

 タイミングよくやってきた近衛の彼は、瞬く間に魔術騎士によって拘束された。
 さすが魔術騎士団。顔だけの近衛とは格が違う。

「はなせ! 私は近衛騎士だぞ……!! グラシアナ、君はそんなところで突っ立って何をしているんだ!!」

 その間もこれまでと随分ちがう表情で私を責め立てる彼に、私は首をかしげる。

「私はあなたと同じ事をやっただけですが……?」

 同情をひいて、共感をしてみせ、優しくしてから自分の弱みを見せて仲間と思わせてから情報を引き出す。

「なにを……」

 近衛騎士が顔を引き攣らせた。

「せっかくあなたから教えて頂いたので、私の上司に当たる魔術師団副団長に報告をしているだけです」

 途端に彼は取り繕ったように笑みを浮かべて、媚びるように猫なで声で語り出した。

「グラシアナ、君を巻き込んだことを、やっぱり怒っていたんだね、すまなかった……! だが、君を守りたいと思ったのは本当だ、どうか君から団長に口添えをして……」
「……面白いことになっているようだな」

 低く深みのある男の声が割り込んできた。
 よく知っている声に、思わず安堵している自分がいる。振りかえれば、やはりその人がそこにいた。

「……団長」
「無茶をする」

 苦笑しながら歩み寄ってきた団長は、ぽすりと私を抱きしめた。

「遅くなってすまなかった。後は俺がする。大丈夫だ」

 そう言って背中がポンポンと叩かれる。
 離して下さい、とは言えなかった。
 包み込まれて、もう大丈夫だという安心感が満たされてゆく。
 この人は、この状況をどれだけ理解しているのだろう。
 じわりと胸が苦しくなる。ぐっと涙がこぼれそうになるのを感じた。
 怖かった。悲しかった。苦しかった。心細かった。

 自分でなんとかするしかない状況で、どう立ち回れば悪事に加担せずにすむのか、妨害できるのか、必死で考えた。指輪にどういう機能があるかもわからず、副団長にも相談できなかった。
 相手は、王子とオターニョ伯だ。仲間に引き入れられたあとも諸々ごまかしていたが、ファロナダ様が私と団長の婚約を知っていることで、少なくとも王子との情報共有が確定した。裏には王妃もいるだろう。邪魔になれば殺されてもおかしくない。ましてや告発など、うまくいっても、結果的に報復で殺される可能性だってある。
 まだ、終わったわけじゃない。けれど、団長が来た瞬間、全てがなんとかなるような安堵が胸を占めた。

 怒っているのに。私は、この人に、誰よりも怒っているのに。
 団長なら私を守ってくれると、安心してしまった。
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