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12.ベルコヴァの城
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ベルコヴァの城までの三日間は襲撃もなく、
馬車は予定通りの時間に着いた。
広い敷地に外宮と内宮が建てられていたアントシュ国の王宮とは違い、
ベルコヴァは山の下に門があり、頂上には赤茶色の城。
門をくぐった後、ゆったりとした坂を上っていくと、
いくつかの建物が点在している。
「この辺は使用人や騎士の住居になっている。
城に住めるのは王族と宰相など重役になっている貴族。
城の中の一区画が俺の宮になっている」
「大きなお城ですね」
「そうだな。昔はたくさんの王族がいたそうだ。
今では俺を含めて五人しかいない」
「五人……」
エッカルト国王と妃、第一王女と第一王子、
そしてアルフレッド様で五人……。
ベルコヴァの話を聞いた時に不思議に思っていた。
エッカルト国王を産んだアネット側妃と、
アルフレッド様を産んだアデライト王妃のその後の話がなかった。
先代国王の妃だったお二人はここにはいない……。
それを聞いていいものかわからず口をつぐむ。
馬車の扉が開くと、アルフレッド様は私を抱き上げて降ろす。
もう慣れてしまったけれど、初めての場所ではやめてほしい。
馬車の周りでアルフレッド様の到着を待っていた者たちが、
目を見開いているのが見える。
そうだった……アルフレッド様は女嫌いだと思われているんだ。
文官だけでなく、女官たちも口まで開けて……どれだけ驚かれているの?
「あの、アルフレッド様、降ろしてください」
「ん?どうしてだ?」
「一人で歩けますから!」
「だが、こうやって運んだ方が早いだろう」
「そうなんですけど、周りの目が……」
耳元で内緒話をするように説明すると、
アルフレッド様はにやりと笑った。
「すまん、わざとやっている」
「わざと?」
「兄上にすんなりと婚約を認めてもらわなければならない。
それには俺がルーチェに惚れたと思われるのが一番だ。
それに、周りにも納得させなければ。
こうして抱き上げているだけでルーチェが特別だとわかるだろう」
「そういうことですか」
周りの者に見せるためにわざとやっているとは。
そういう理由だったとしても恥ずかしいのでやめてほしいのだが。
「謁見する時にはおろすから安心してくれ」
「……はい」
さすがにそれだけはやめてほしい。
国王の前で抱き上げられるくらいなら、
こうして連れて行かれるくらいは我慢しよう……。
謁見室の中に入ると約束通り下におろしてくれる。
ドレスのしわを直しているとエッカルト国王が来てしまった。
ふくよかな身体に優しそうな笑顔。
金髪に緑目なこともあって、お父様を思い出させる。
「おお、アルフレッド!無事に連れて帰って来たんだな!
ルーチェ姫だな!エッカルトだ!」
「ルーチェ・アントシュです。
この度は我が国のためにご尽力いただき……」
「ああ、いい。気にしないでくれ。
むしろ謝らなければならないくらいだ。
ダニエル殿を助けられなくてすまなかった。
もっと早くに気がついていればよかったのだが」
「いえ……ここからアントシュまでは二週間かかります。
すぐに気がついていたとしても助けるのは無理だったと思います」
「そうか……だが、あきらめることはない。
今、必死で探させている。
必ず二人を助け出してみせるから待っていてくれ」
「ありがとうございます!」
命を狙われていた時に留学していたから父とも仲がいいと聞いていたが、
エッカルト国王は思った以上に恩義を感じているようだ。
お父様を助けられなかったことで涙を浮かべている。
きっとエッカルト国王なら二人を助け出してくれるだろう。
ほっとしていると、アルフレッド様と視線があう。
婚約の話を言い出すのだろうと思って頷く。
「それで、兄上。俺からも報告があるのですが」
「ああ、アントシュについての詳しいことは後でいいぞ。
ルーチェ姫を休ませなくてはならないだろう」
「いえ、そうではなく」
「違う話なのか?」
「ええ。大事な話です。実は……」
アルフレッド様が婚約の話をしようとした時、
大きな音を立てて扉が開いた。
「アル兄様が帰って来たって本当!?」
飛び込むように入ってきたのは一人の少女だった。
さらさらの長い金髪に青い目。
真っ赤なドレスを着た少女はアルフレッド様を見つけて目を輝かせた。
「アル兄様!おかえりなさい!
でも、ひどいわ!勝手に行ってしまうなんて!」
「……」
少女に話しかけられているのに、なぜかアルフレッド様は黙ったまま。
話し続けている少女にエッカルト国王が注意をする。
「こら、シンディ!勝手に謁見室に入って来るんじゃない。
大事な話をしているんだ。
遊んでもらいたいなら後でにしなさい!」
もしかして、この少女が第一王女?
エッカルト国王に叱られたのが不服なのか唇を尖らせた。
「え~?一か月以上も待ったのよ。
少しくらいいいじゃない」
「だめだ。ここから出なさい」
「わかったわ。アル兄様、終わったら私の宮に来てね!」
シンディ王女はくるりと背を向けて扉に向かう前、
一度だけ私に目を向けた。
その目はまるで敵を見ているようだった。
今のは……?
同盟国の王女に向ける目ではないと思うのだけど。
「アルフレッド、邪魔をしてすまなかったな。
それで、話というのは?」
「はい、ここにいるルーチェ王女と婚約しようと思います」
「…………なんだと?」
馬車は予定通りの時間に着いた。
広い敷地に外宮と内宮が建てられていたアントシュ国の王宮とは違い、
ベルコヴァは山の下に門があり、頂上には赤茶色の城。
門をくぐった後、ゆったりとした坂を上っていくと、
いくつかの建物が点在している。
「この辺は使用人や騎士の住居になっている。
城に住めるのは王族と宰相など重役になっている貴族。
城の中の一区画が俺の宮になっている」
「大きなお城ですね」
「そうだな。昔はたくさんの王族がいたそうだ。
今では俺を含めて五人しかいない」
「五人……」
エッカルト国王と妃、第一王女と第一王子、
そしてアルフレッド様で五人……。
ベルコヴァの話を聞いた時に不思議に思っていた。
エッカルト国王を産んだアネット側妃と、
アルフレッド様を産んだアデライト王妃のその後の話がなかった。
先代国王の妃だったお二人はここにはいない……。
それを聞いていいものかわからず口をつぐむ。
馬車の扉が開くと、アルフレッド様は私を抱き上げて降ろす。
もう慣れてしまったけれど、初めての場所ではやめてほしい。
馬車の周りでアルフレッド様の到着を待っていた者たちが、
目を見開いているのが見える。
そうだった……アルフレッド様は女嫌いだと思われているんだ。
文官だけでなく、女官たちも口まで開けて……どれだけ驚かれているの?
「あの、アルフレッド様、降ろしてください」
「ん?どうしてだ?」
「一人で歩けますから!」
「だが、こうやって運んだ方が早いだろう」
「そうなんですけど、周りの目が……」
耳元で内緒話をするように説明すると、
アルフレッド様はにやりと笑った。
「すまん、わざとやっている」
「わざと?」
「兄上にすんなりと婚約を認めてもらわなければならない。
それには俺がルーチェに惚れたと思われるのが一番だ。
それに、周りにも納得させなければ。
こうして抱き上げているだけでルーチェが特別だとわかるだろう」
「そういうことですか」
周りの者に見せるためにわざとやっているとは。
そういう理由だったとしても恥ずかしいのでやめてほしいのだが。
「謁見する時にはおろすから安心してくれ」
「……はい」
さすがにそれだけはやめてほしい。
国王の前で抱き上げられるくらいなら、
こうして連れて行かれるくらいは我慢しよう……。
謁見室の中に入ると約束通り下におろしてくれる。
ドレスのしわを直しているとエッカルト国王が来てしまった。
ふくよかな身体に優しそうな笑顔。
金髪に緑目なこともあって、お父様を思い出させる。
「おお、アルフレッド!無事に連れて帰って来たんだな!
ルーチェ姫だな!エッカルトだ!」
「ルーチェ・アントシュです。
この度は我が国のためにご尽力いただき……」
「ああ、いい。気にしないでくれ。
むしろ謝らなければならないくらいだ。
ダニエル殿を助けられなくてすまなかった。
もっと早くに気がついていればよかったのだが」
「いえ……ここからアントシュまでは二週間かかります。
すぐに気がついていたとしても助けるのは無理だったと思います」
「そうか……だが、あきらめることはない。
今、必死で探させている。
必ず二人を助け出してみせるから待っていてくれ」
「ありがとうございます!」
命を狙われていた時に留学していたから父とも仲がいいと聞いていたが、
エッカルト国王は思った以上に恩義を感じているようだ。
お父様を助けられなかったことで涙を浮かべている。
きっとエッカルト国王なら二人を助け出してくれるだろう。
ほっとしていると、アルフレッド様と視線があう。
婚約の話を言い出すのだろうと思って頷く。
「それで、兄上。俺からも報告があるのですが」
「ああ、アントシュについての詳しいことは後でいいぞ。
ルーチェ姫を休ませなくてはならないだろう」
「いえ、そうではなく」
「違う話なのか?」
「ええ。大事な話です。実は……」
アルフレッド様が婚約の話をしようとした時、
大きな音を立てて扉が開いた。
「アル兄様が帰って来たって本当!?」
飛び込むように入ってきたのは一人の少女だった。
さらさらの長い金髪に青い目。
真っ赤なドレスを着た少女はアルフレッド様を見つけて目を輝かせた。
「アル兄様!おかえりなさい!
でも、ひどいわ!勝手に行ってしまうなんて!」
「……」
少女に話しかけられているのに、なぜかアルフレッド様は黙ったまま。
話し続けている少女にエッカルト国王が注意をする。
「こら、シンディ!勝手に謁見室に入って来るんじゃない。
大事な話をしているんだ。
遊んでもらいたいなら後でにしなさい!」
もしかして、この少女が第一王女?
エッカルト国王に叱られたのが不服なのか唇を尖らせた。
「え~?一か月以上も待ったのよ。
少しくらいいいじゃない」
「だめだ。ここから出なさい」
「わかったわ。アル兄様、終わったら私の宮に来てね!」
シンディ王女はくるりと背を向けて扉に向かう前、
一度だけ私に目を向けた。
その目はまるで敵を見ているようだった。
今のは……?
同盟国の王女に向ける目ではないと思うのだけど。
「アルフレッド、邪魔をしてすまなかったな。
それで、話というのは?」
「はい、ここにいるルーチェ王女と婚約しようと思います」
「…………なんだと?」
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