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13.婚約
「アルフレッド、邪魔をしてすまなかったな。
それで、話というのは?」
「はい、ここにいるルーチェ王女と婚約しようと思います」
「…………なんだと?」
「ですから、ルーチェ姫との婚約を」
「……はぁ?俺の耳がおかしくなったのか?」
聞こえているはずなのに信じられないのか、
エッカルト国王が何度も聞き直している。
このままでは何を言っても聞いてもらえない。
アルフレッド様は信じさせるために、
一緒に行動していた侍従を近くに呼んだ。
「アズ、こちらに来て、俺とルーチェのことを説明してくれ。
近くで見ていたお前から説明したほうが納得するだろう」
「え!あ、はい」
アズがしどろもどろになりながらも、
アントシュ国を出た日のことから説明する。
アルフレッド様と私が馬車の中で二人きりだったこと、
休憩中に抱き上げて川を見せていたこと、
最終的には同じテントで過ごすようになったことなどを聞いたエッカルト国王は、
残念なだがらそれでも信じきれなかったようだ。
「アズ、お前まで……これは夢なのか?」
「エッカルト国王、夢ではありません。
実際に私が助け出されてここにいるではないですか」
「そ、そうだな……ルーチェ姫がここにいるのならば夢ではないのか」
思わず口を挟んでしまったが、ようやくこれで信じてくれたようだ。
「本当にアルフレッドが……女性と婚約する気になったのか?
念のために聞くが、嘘じゃないよな?」
「嘘ではありません」
「……ルーチェ姫の前で聞くのは失礼だと思うが、
シンディではダメだったのか?」
「ダメです。いえ、シンディがダメだというよりは、
ルーチェでなくては俺がダメなんです」
「それほどまでなのか……」
ううむとうなったエッカルト国王は眉間にしわをよせている。
「私はアルフレッドにはシンディと結婚してもらって、
国王を継いでもらうつもりでいたのだが」
「それはどちらも断らせてください。
シンディと結婚する気も国王になる気もありません」
「どうしてもか?」
「絶対に嫌です。強要するならば王族の地位を捨てます」
きっぱりというアルフレッド様にエッカルト国王は黙り込んだ。
そこまでシンディ王女は嫌われているとは。
さきほど黙っていたのは、もしかして無視していたのだろうか。
可愛らしい王女だったけれど、いったい何をしたらそこまで嫌われるのだろう。
「はぁぁぁぁ……わかった。シンディのことはあきらめよう。
だが、ダニエル殿が見つからないままでは婚約するのは無理なのでは?」
「アントシュ国王が見つかるまで、ルーチェを兄上の養女にしてください。
そうすれば兄上の許可だけで婚約することができます」
「そんなことをしていいのか?」
「兄上の後見下にいれば、危害を加えられることはないでしょう。
安全にこの国で過ごさせるためにも、ルーチェにはこの国の王女の肩書が必要です。
アントシュ国王が見つかった時に戻せばいいのではないですか?」
「ふむ……一時的な養女か。
それならば問題ないだろう。
ルーチェ姫もそれでいいのか?」
エッカルト国王の養女になるという話は初めて聞いたけれど、
よく考えてみれば、お父様の許可がなくては婚約できない。
それを補うための策なのだろう。
「私はアルフレッド様にお任せしております」
「そうか。わかった。
それでは今からルーチェがこの国の第一王女だ。
この城にいる間は義父と呼んでくれ」
「ありがとうございます」
エッカルト国王が認めてくれたことで、
私は第一王女となり、アルフレッド様の婚約者となった。
「それではルーチェは人見知りをするので、
俺の宮で預かります」
「アルフレッドの宮でか?」
「ええ、俺の妃の部屋を使わせるつもりです。
婚約したのですから問題ないでしょう。
旅の間も一緒のテントにいましたし」
「そこまで深い仲になっているのならいいが……。
シンディにどう説明したらいいものか」
「それは父親である兄上に任せますよ。
俺は一度もシンディと約束していませんから」
「そうか。悪かったな……」
「いえ、それではルーチェを早く休ませたいので」
「ああ。ルーチェ、また後でゆっくり話そう」
「はい」
二週間の旅を終えたばかりだし、身体を早く清めて休みたい。
謁見室を出ると、またアルフレッド様は私を抱き上げた。
「……またですか」
「この方が早く移動できるし……。
身体が痛むんだろう?」
「……気づいていたんですか」
「よく二週間も何も言わずに頑張ったと思うよ。
王宮の外に出るのが初めての人間が、二週間も馬車に揺られて無事でいるわけがない。
本当は一歩だって歩きたくないくらい、どこもかしこも痛むだろう」
「はい……」
何も言われないから気づいていないのだと思っていた。
だけど、ずっと一緒にいたのだから、気づいてもおかしくない。
「部屋についたらまずは休め。
湯につかりたいだろうけど、今は無理だ。
とにかく身体を休めてからだ」
「ありがとうございます……」
気を緩めたら意識を失ってしまいそう。
アルフレッド様の肩に頬を乗せて力を抜くと、
このまま寝てしまいそうになる。
「俺の宮までもうすぐだ。あと少しだからがんばれ」
返事はせず、少しだけ身じろいだ。
それでうなずいたのがわかったのか、アルフレッド様の足が早まる。
部屋に着いた時にはもう目が開けられなくなっていて、
アルフレッド様にされるがままだった。
「よくがんばったよ……ゆっくり、おやすみ」
目を覚ますと、隣にはアルフレッド様が寝ていた。
一瞬、テントの中なのかと思ったけれど、ふかふかのベッドの上だった。
「あ……ベルコヴァに着いたんだった」
起き上がろうとしたら、ドレスを着ていないのに気づく。
下着姿を隠すように毛布にもぐりこんだ。
「ど、どうして……!?」
それで、話というのは?」
「はい、ここにいるルーチェ王女と婚約しようと思います」
「…………なんだと?」
「ですから、ルーチェ姫との婚約を」
「……はぁ?俺の耳がおかしくなったのか?」
聞こえているはずなのに信じられないのか、
エッカルト国王が何度も聞き直している。
このままでは何を言っても聞いてもらえない。
アルフレッド様は信じさせるために、
一緒に行動していた侍従を近くに呼んだ。
「アズ、こちらに来て、俺とルーチェのことを説明してくれ。
近くで見ていたお前から説明したほうが納得するだろう」
「え!あ、はい」
アズがしどろもどろになりながらも、
アントシュ国を出た日のことから説明する。
アルフレッド様と私が馬車の中で二人きりだったこと、
休憩中に抱き上げて川を見せていたこと、
最終的には同じテントで過ごすようになったことなどを聞いたエッカルト国王は、
残念なだがらそれでも信じきれなかったようだ。
「アズ、お前まで……これは夢なのか?」
「エッカルト国王、夢ではありません。
実際に私が助け出されてここにいるではないですか」
「そ、そうだな……ルーチェ姫がここにいるのならば夢ではないのか」
思わず口を挟んでしまったが、ようやくこれで信じてくれたようだ。
「本当にアルフレッドが……女性と婚約する気になったのか?
念のために聞くが、嘘じゃないよな?」
「嘘ではありません」
「……ルーチェ姫の前で聞くのは失礼だと思うが、
シンディではダメだったのか?」
「ダメです。いえ、シンディがダメだというよりは、
ルーチェでなくては俺がダメなんです」
「それほどまでなのか……」
ううむとうなったエッカルト国王は眉間にしわをよせている。
「私はアルフレッドにはシンディと結婚してもらって、
国王を継いでもらうつもりでいたのだが」
「それはどちらも断らせてください。
シンディと結婚する気も国王になる気もありません」
「どうしてもか?」
「絶対に嫌です。強要するならば王族の地位を捨てます」
きっぱりというアルフレッド様にエッカルト国王は黙り込んだ。
そこまでシンディ王女は嫌われているとは。
さきほど黙っていたのは、もしかして無視していたのだろうか。
可愛らしい王女だったけれど、いったい何をしたらそこまで嫌われるのだろう。
「はぁぁぁぁ……わかった。シンディのことはあきらめよう。
だが、ダニエル殿が見つからないままでは婚約するのは無理なのでは?」
「アントシュ国王が見つかるまで、ルーチェを兄上の養女にしてください。
そうすれば兄上の許可だけで婚約することができます」
「そんなことをしていいのか?」
「兄上の後見下にいれば、危害を加えられることはないでしょう。
安全にこの国で過ごさせるためにも、ルーチェにはこの国の王女の肩書が必要です。
アントシュ国王が見つかった時に戻せばいいのではないですか?」
「ふむ……一時的な養女か。
それならば問題ないだろう。
ルーチェ姫もそれでいいのか?」
エッカルト国王の養女になるという話は初めて聞いたけれど、
よく考えてみれば、お父様の許可がなくては婚約できない。
それを補うための策なのだろう。
「私はアルフレッド様にお任せしております」
「そうか。わかった。
それでは今からルーチェがこの国の第一王女だ。
この城にいる間は義父と呼んでくれ」
「ありがとうございます」
エッカルト国王が認めてくれたことで、
私は第一王女となり、アルフレッド様の婚約者となった。
「それではルーチェは人見知りをするので、
俺の宮で預かります」
「アルフレッドの宮でか?」
「ええ、俺の妃の部屋を使わせるつもりです。
婚約したのですから問題ないでしょう。
旅の間も一緒のテントにいましたし」
「そこまで深い仲になっているのならいいが……。
シンディにどう説明したらいいものか」
「それは父親である兄上に任せますよ。
俺は一度もシンディと約束していませんから」
「そうか。悪かったな……」
「いえ、それではルーチェを早く休ませたいので」
「ああ。ルーチェ、また後でゆっくり話そう」
「はい」
二週間の旅を終えたばかりだし、身体を早く清めて休みたい。
謁見室を出ると、またアルフレッド様は私を抱き上げた。
「……またですか」
「この方が早く移動できるし……。
身体が痛むんだろう?」
「……気づいていたんですか」
「よく二週間も何も言わずに頑張ったと思うよ。
王宮の外に出るのが初めての人間が、二週間も馬車に揺られて無事でいるわけがない。
本当は一歩だって歩きたくないくらい、どこもかしこも痛むだろう」
「はい……」
何も言われないから気づいていないのだと思っていた。
だけど、ずっと一緒にいたのだから、気づいてもおかしくない。
「部屋についたらまずは休め。
湯につかりたいだろうけど、今は無理だ。
とにかく身体を休めてからだ」
「ありがとうございます……」
気を緩めたら意識を失ってしまいそう。
アルフレッド様の肩に頬を乗せて力を抜くと、
このまま寝てしまいそうになる。
「俺の宮までもうすぐだ。あと少しだからがんばれ」
返事はせず、少しだけ身じろいだ。
それでうなずいたのがわかったのか、アルフレッド様の足が早まる。
部屋に着いた時にはもう目が開けられなくなっていて、
アルフレッド様にされるがままだった。
「よくがんばったよ……ゆっくり、おやすみ」
目を覚ますと、隣にはアルフレッド様が寝ていた。
一瞬、テントの中なのかと思ったけれど、ふかふかのベッドの上だった。
「あ……ベルコヴァに着いたんだった」
起き上がろうとしたら、ドレスを着ていないのに気づく。
下着姿を隠すように毛布にもぐりこんだ。
「ど、どうして……!?」
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