これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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48.心からの願い

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どうやって宮まで戻って来たのか記憶がない。
気がついたら、庭に一人でいた。

精霊たちが私の気も知らずに楽しそうに周りを飛び回る。
この国に来た時は連れて来た精霊しかいなかった。
今ではこの国で生まれた精霊の方が多い。

私とアルフレッド様とアズで造り上げた庭。
最初は何もなかった場所に花や木を植えてもらって、
自分で種を植えて、毎日水やりをして、育てて来た庭。

その思い出のすべてにアルフレッド様がいる。

どうしよう。
こんなに好きって思っているなんて知らなかった。
私はもうアルフレッド様がいなかったら、どうしていいかわからない。

食事をする時も眠る時も、ずっとそばにいた。
一緒にいることが当たり前すぎて、ちゃんと見えていなかった。

このまま流されるようにベルコヴァで過ごしていれば、
二人の未来は手に入ると思っていたのに。

本当はとても危うい場所で手をつないでいただけ。
アントシュの王女になれば、結婚相手を選ぶことはできない。

会う前に時間を戻して、
アルフレッド様のことを知らなかった私になって、
アントシュに帰ることはできるんだろうか。

……できるわけがない。
ベルコヴァに来てから一日たりとも離れたことは無いのに、
どうして一人になれるっていうの。

「……ルーチェ様、大丈夫ですか?」

振り返ったら心配そうなアズがいた。
アルフレッド様がいないことに、めずらしくほっとした。

「大丈夫……だと思いたいわ」

「それは大丈夫ではないですよねぇ」

「大丈夫じゃなくても王族は大丈夫と言わなくちゃいけないのよ」

「王族ならそれはそうでしょうけど、
 今ここにいるのは王族であるルーチェ様ではないでしょう」

「……どういうこと?」

いったいアズは何を言っているんだろう。
私はずっと王族で、王族以外の私はいないのに。

「この宮にいる間はルーチェ様は一人の女性でいていいんですよ」

「そんなことが許されるわけないわ」

「いいえ、今はまだルーチェ様はベルコヴァの第一王女です。
 アントシュの王族に戻ったわけではない。
 ならば、臣下として申し上げます。
 成人したわけでもないのに、無理しなくていいんですよ」

「……無理なんて」

「もっとわがまま言っていいんです。
 泣きそうじゃないですか、さっきからずっと」

ずっと耐えていたのに、アズに指摘されてしまって崩壊する。
手でふれなくたって、涙が頬を伝っているのがわかる。

泣いてもどうにもならないのに。
アズはどうして私を泣かせるんだろう。

「ルーチェ様、どちらにしても後悔するのであれば、
 言いたいことを言ってから後悔しましょう?」

「後悔することは決まっているの?」

「二つの国をどちらも選ぶことはできないでしょう?」

「……それもそうね」

このままでいたいという私の願いは絶対に叶うことはない。
だって、アントシュを継ぐのは私しかいないから。

「アズ、私が言いたいことを言ってしまって本当にいいの?
 私はアズの人生も変えてしまうかもしれないわ」

「……覚悟の上ですよ。
 それだけ、私もルーチェ様のそばに居過ぎたのでしょう。
 ベルコヴァの未来よりも大事になってしまうくらいには」

「ふふふ。ダメな宰相候補ね。
 ……ありがとう。
 どちらにせよ後悔するなら、ぶつかってみるわ」

「お供しますよ」

「エッカルト様に謁見を申し込むわ」

庭から部屋に戻ると、アルフレッド様はいなかった。
今、顔を見たら何か言ってしまいそうだったから、いなくてよかったかもしれない。

「ジルとルウイが来ました。
 化粧を直したらすぐに行きましょう」

「もう二人が来たの?謁見の許可は出てないでしょう?」

「大丈夫ですよ、行きましょう」

謁見を申し込んでもいないのに大丈夫なんだろうか。
だけど、今行かなかったら言えない気がする。

リマに急いで化粧を直してもらい、宮から外に出る。
そこにはジルとルウイがいつも通りの笑顔で待っていた。

「ジル、ルウイ、謁見室まで行くわ」

「ええ、どこまでもお供しますよ」

「俺もです」

「ついでに私も行きますよ」

「ありがとう」

三人をお供にして謁見室まで向かう。
扉を開けてもらおうとしたら、扉の向こう側からアルフレッド様の声が聞こえた。

「さ、開けますよ」

「アズ、アルフレッド様が中にいるんじゃないの?」

「ええ、だからこそ、行くんですよ」

「え?」

聞き返したのにアズが扉を開けてしまう。
中にいたエッカルト様とアルフレッド様が驚いた顔で振り返る。

「ルーチェ、どうしてここに。アズ、なんで連れて来たんだ」

「ルーチェ様がエッカルト様に話があるっていうから」

「ルーチェが兄上に?」

注目されて、動けなくなったらアルフレッド様が手を差し出す。
その手に吸い込まれるように自然に足が動く。

ああ、ダメだ。
一国の王女に許される願いじゃないと思うのに、
どうしてもこの手を離したくない。

「エッカルト様、私にアルフレッド様をください」

「は?」




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