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47.お父様の到着
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そして、夜会から一か月半。
ようやくリーガリア国からお父様が到着した。
お父様が城に到着したと知らせを受け、
思わず走り出しそうになったらアルフレッド様に止められる。
「ちょっと待って。ダニエル国王は長旅だったんだ。
湯あみをして、食事と休憩をとってもらってから、
謁見室で会うことになるだろう」
「え……あ、そうですよね。
リーガリア国は遠いんですよね……。
ごめんなさい……焦ってしまって」
「いや、いい。仕方ないよ。
もう四年近く会えなかったんだ。
心配で、すぐにでも無事を確かめたくなるだろう」
「……はい」
「準備ができたら、すぐに呼んでもらう。
それまでルーチェも食事を取って待っていよう」
言われたことには納得したし、
私も食事を取らなくてはいけない時間だ。
わかっているけれど、少しも落ち着かない。
食事もほとんど進まなかったけれど、
アルフレッド様もアズもリマも何も言わないでくれた。
ようやくお父様の準備が終わり、
謁見室に向かったと連絡が入る。
本当は走って向かいたかったけれど、
深呼吸してアルフレッド様の手を取る。
謁見室の扉を開けると、そこには懐かしい笑顔が待っていた。
耐えきれずに走り出し、お父様に抱き着く。
思っていたのと感触が違ったのは、
お父様が痩せてしまっていたことと、
私の背が大きくなったからだった。
「ルーチェ……大きくなったな。
一人で苦労させてしまって、申し訳なかった」
「お父様のせいじゃないわ!」
「いや、シブリアンがクーデターを狙っていたことに気づけなかった。
あいつの性格がゆがんでいることはわかっていたのに」
叔父様がクーデターを起こしたことを、
お父様は自分の責任だと感じているらしい。
それを聞いたエッカルト様が口を挟んだ。
「ダニエル殿、それは仕方ないことです。
まさか、実の弟がクーデターを起こすとは思わないでしょう」
「エッカルト、本当に助かった……。
ルーチェを救ってくれてありがとう」
「いいえ、私は自分が受けた恩を返そうと思っただけです。
ですが、ルーチェ姫を救えたのは本当に運が良かった」
「ああ、シブリアンならルーチェも奴隷として売ったとしてもおかしくない。
そうならなかったのは本当に運がよかった……。
それで、シブリアン一家は奴隷として?」
「それはそこにいるアルフレッドが」
アントシュについて指示を出したのはアルフレッド様だ。
私を助け出した後、一緒にベルコヴァへ戻って来たけれど、
ここからずっとアントシュについて指示を出していたらしい。
「王弟一家は奴隷にしてバラバラに売りました。
よけいなことを言わせないために薬で声が出ないようにしてから売ったので、
王族だということは知られてないでしょう」
「なるほど、声を封じたのか」
「肌や髪の色で元貴族だというのはわかっているでしょうから、
愛玩用として買われたと思いますが、
アントシュとベルコヴァには縁のない場所に行きました。
もう関わることはないでしょう」
叔父様たちの行方を聞くのは初めてだった。
奴隷として売るように言ったのは私だ。
だけど、その行方を聞いたら私の責任になってしまいそうで、
怖くて聞けなかった。
愛玩用の奴隷が何をするのか、具体的には知らない。
他の奴隷よりはいい扱われ方をするのかもしれないけれど、
贅沢に育った従姉妹たちにはつらいことに違いない。
「それで、ダニエル殿、王太子についてはやはり戻るのは難しいのでしょうか」
「アルマンは……帰してはもらえないだろう。
子ができてしまったこともあるが、アルマン自身が王女と生きる道を選んだ。
ルーチェ、大変だとは思うが、お前が私の跡を継ぐしかない」
「え?」
「ルーチェが女王になるんだ」
「……私が女王に?」
考えもしなかったことを言われ、頭が真っ白になる。
ついこの間まで、お父様とお兄様のことはあきらめて、
ここでアルフレッド様の妃になるしかないと思っていた。
なのに、アントシュに戻って、女王になるなんて。
「ダニエル殿……実は、ルーチェ姫はアルフレッドと婚約していて」
「ルーチェが婚約?」
「ルーチェ姫をこの国で守るためにも、
一時的に私の養女として、アルフレッドと婚約させました」
「ああ、そういうことか。いろいろとすまなかったな。
アルフレッド殿は女性嫌いだと聞いている。
形だけの婚約であっても大変なことだっただろう。
申し訳ない。ルーチェはアントシュに連れて帰るから、
安心してくれていい」
「いえ、俺は」
「ルーチェ、アルフレッド殿に迷惑をかけていなかったか?
本当にエッカルトには迷惑ばかりかけて申し訳なかった。
アントシュが安定するまで、もうしばらく力を貸してくれ」
「ええ、もちろんですとも」
アントシュに私を連れて帰る?
もしかして、アルフレッド様との婚約は白紙に?
呆然としていたら、アルフレッド様がお父様の前に出る。
「ダニエル国王、話したいことがあるのですが」
「おお、何かな……ああ、すまん。少しめまいが」
「大丈夫ですか、ダニエル殿、やはりもう少し休んだ方が。
長旅の疲れが残っているのでしょう。
アルフレッド、話は後だ。ダニエル殿を休ませないと」
「あ、はい。わかりました……」
やはり疲れが残っていたのか、ふらついたお父様を、
エッカルト様が支えるようにして謁見室から出て行った。
「……ルーチェ、宮に戻ろう」
「はい……」
ようやくリーガリア国からお父様が到着した。
お父様が城に到着したと知らせを受け、
思わず走り出しそうになったらアルフレッド様に止められる。
「ちょっと待って。ダニエル国王は長旅だったんだ。
湯あみをして、食事と休憩をとってもらってから、
謁見室で会うことになるだろう」
「え……あ、そうですよね。
リーガリア国は遠いんですよね……。
ごめんなさい……焦ってしまって」
「いや、いい。仕方ないよ。
もう四年近く会えなかったんだ。
心配で、すぐにでも無事を確かめたくなるだろう」
「……はい」
「準備ができたら、すぐに呼んでもらう。
それまでルーチェも食事を取って待っていよう」
言われたことには納得したし、
私も食事を取らなくてはいけない時間だ。
わかっているけれど、少しも落ち着かない。
食事もほとんど進まなかったけれど、
アルフレッド様もアズもリマも何も言わないでくれた。
ようやくお父様の準備が終わり、
謁見室に向かったと連絡が入る。
本当は走って向かいたかったけれど、
深呼吸してアルフレッド様の手を取る。
謁見室の扉を開けると、そこには懐かしい笑顔が待っていた。
耐えきれずに走り出し、お父様に抱き着く。
思っていたのと感触が違ったのは、
お父様が痩せてしまっていたことと、
私の背が大きくなったからだった。
「ルーチェ……大きくなったな。
一人で苦労させてしまって、申し訳なかった」
「お父様のせいじゃないわ!」
「いや、シブリアンがクーデターを狙っていたことに気づけなかった。
あいつの性格がゆがんでいることはわかっていたのに」
叔父様がクーデターを起こしたことを、
お父様は自分の責任だと感じているらしい。
それを聞いたエッカルト様が口を挟んだ。
「ダニエル殿、それは仕方ないことです。
まさか、実の弟がクーデターを起こすとは思わないでしょう」
「エッカルト、本当に助かった……。
ルーチェを救ってくれてありがとう」
「いいえ、私は自分が受けた恩を返そうと思っただけです。
ですが、ルーチェ姫を救えたのは本当に運が良かった」
「ああ、シブリアンならルーチェも奴隷として売ったとしてもおかしくない。
そうならなかったのは本当に運がよかった……。
それで、シブリアン一家は奴隷として?」
「それはそこにいるアルフレッドが」
アントシュについて指示を出したのはアルフレッド様だ。
私を助け出した後、一緒にベルコヴァへ戻って来たけれど、
ここからずっとアントシュについて指示を出していたらしい。
「王弟一家は奴隷にしてバラバラに売りました。
よけいなことを言わせないために薬で声が出ないようにしてから売ったので、
王族だということは知られてないでしょう」
「なるほど、声を封じたのか」
「肌や髪の色で元貴族だというのはわかっているでしょうから、
愛玩用として買われたと思いますが、
アントシュとベルコヴァには縁のない場所に行きました。
もう関わることはないでしょう」
叔父様たちの行方を聞くのは初めてだった。
奴隷として売るように言ったのは私だ。
だけど、その行方を聞いたら私の責任になってしまいそうで、
怖くて聞けなかった。
愛玩用の奴隷が何をするのか、具体的には知らない。
他の奴隷よりはいい扱われ方をするのかもしれないけれど、
贅沢に育った従姉妹たちにはつらいことに違いない。
「それで、ダニエル殿、王太子についてはやはり戻るのは難しいのでしょうか」
「アルマンは……帰してはもらえないだろう。
子ができてしまったこともあるが、アルマン自身が王女と生きる道を選んだ。
ルーチェ、大変だとは思うが、お前が私の跡を継ぐしかない」
「え?」
「ルーチェが女王になるんだ」
「……私が女王に?」
考えもしなかったことを言われ、頭が真っ白になる。
ついこの間まで、お父様とお兄様のことはあきらめて、
ここでアルフレッド様の妃になるしかないと思っていた。
なのに、アントシュに戻って、女王になるなんて。
「ダニエル殿……実は、ルーチェ姫はアルフレッドと婚約していて」
「ルーチェが婚約?」
「ルーチェ姫をこの国で守るためにも、
一時的に私の養女として、アルフレッドと婚約させました」
「ああ、そういうことか。いろいろとすまなかったな。
アルフレッド殿は女性嫌いだと聞いている。
形だけの婚約であっても大変なことだっただろう。
申し訳ない。ルーチェはアントシュに連れて帰るから、
安心してくれていい」
「いえ、俺は」
「ルーチェ、アルフレッド殿に迷惑をかけていなかったか?
本当にエッカルトには迷惑ばかりかけて申し訳なかった。
アントシュが安定するまで、もうしばらく力を貸してくれ」
「ええ、もちろんですとも」
アントシュに私を連れて帰る?
もしかして、アルフレッド様との婚約は白紙に?
呆然としていたら、アルフレッド様がお父様の前に出る。
「ダニエル国王、話したいことがあるのですが」
「おお、何かな……ああ、すまん。少しめまいが」
「大丈夫ですか、ダニエル殿、やはりもう少し休んだ方が。
長旅の疲れが残っているのでしょう。
アルフレッド、話は後だ。ダニエル殿を休ませないと」
「あ、はい。わかりました……」
やはり疲れが残っていたのか、ふらついたお父様を、
エッカルト様が支えるようにして謁見室から出て行った。
「……ルーチェ、宮に戻ろう」
「はい……」
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