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49.お互いに、一緒に
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「エッカルト様、私にアルフレッド様をください」
「は?」
時間が止まった気がした。
エッカルト様からの返事が怖くて目をぎゅっと閉じた。
一瞬の静寂の後、エッカルト様の笑い声が響いた。
「……え?」
「ふははははは。お前たちは本当にそっくりだな。
ずっと一緒にいたからか?」
「……何がですか?」
言われている意味がわからなくて、首をかしげた。
「私の許可はいらない。後はお前たちで話し合いなさい」
「それはどういう」
「……ルーチェ、抱き上げるぞ」
「え?」
振り返る間もなく、アルフレッド様に抱き上げられる。
胸に顔を押しつけられるように抱き上げられたせいで、何も見えない。
謁見室の扉から出る前にアズの笑い声がして、
廊下に出たらジルとルウイのがんばってくださいという声が聞こえた。
いったいどうしてと聞いてもアルフレッド様は答えてくれない。
気がつけば宮に戻っていた。
小さな庭に出て、ようやくアルフレッド様がおろしてくれる。
なぜかアルフレッド様の顔が赤い。
もしかして、怒っている?
あんな勝手なお願いをエッカルト様にしてしまったから、
怒らせてしまったのかもしれない。
「ルーチェ……」
「ご、ごめんなさい」
「何を謝っているんだ?」
「勝手なことをお願いしたから、怒っているのでしょう?」
「怒ってはいないが、驚きはした……」
「ですよね……」
エッカルト様を慕っているアルフレッド様が、他国の婿になんてなるわけがない。
考えたこともなかったことを言われて、さぞ驚いたはず。
「……さっきルーチェをこの宮に連れて帰った後、
俺は謁見室に戻って兄上に相談していたんだ」
「相談?」
「ああ」
アルフレッド様の顔が下がって来ると思ったら、私の前にひざまずいた。
私を見上げるようなアルフレッド様の目。
こんな顔は見たことがない。
見惚れていたら、両手を取られた。
指先に唇がふれて、動けなくなる。
「ルーチェ」
「はい」
「俺をアントシュに連れて帰ってくれないか?」
「え……」
顔をあげたアルフレッド様と目が合う。
今のは聞き間違いじゃない?
「今、なんて」
「俺を女王の、ルーチェの王配にしてほしい」
「……どうして」
「好きだから。ルーチェが。
俺はこんなことでルーチェをあきらめたくはないんだ」
すぐ近くにいるはずのアルフレッド様の顔がぼやけていく。
今、聞いたのは私に都合のいい幻聴ではないよね?
「泣かないで……返事をしてくれないか?」
「……ほんとうに、アルフレッド様はそれでいいの?」
「さっきは驚いたよ。兄上に許可を得ようとしていたんだ。
アントシュに婿入りしてもいいか、って」
「だから、エッカルト様がそっくりだって……」
「そういうこと。俺が求婚するよりも前に求婚されてしまった」
「あれはっ」
求婚なんかじゃないって言う前に唇がふさがれた。
くちづけの合間に何度も好きだって聞こえてくる。
熱い熱い唇に一緒に溶けてしまいそうになるのに、
少しして唇が離れてしまう。
「……好き。アルフレッド様が好き。他の人じゃ嫌なの。
ずっとアルフレッド様と一緒にいたい」
「ああ、わかってる。俺もルーチェを他の男に渡すことはできない。
一緒にアントシュに行くよ。俺を婿にしてくれるか?」
「ええ、もちろん!」
抱き着いたら、そのまま抱きあげられた。
さっきまで少しだけ遠慮がちだった精霊たちが、
私たちを囲むように踊って喜んでくれている。
「アントシュの国王が落ち着いたら許可をもらいに行こう」
「お父様は許してくれるでしょうか」
「大丈夫、俺が説得するから」
「はい」
私たちで決めてもお父様が許さなかったらダメかもしれないけれど、
アルフレッド様がそう言うなら大丈夫だと思える。
庭から部屋に戻ると、そこにはアズとジルとルウイがいた。
「決めたんですね、アルフレッド様」
「ああ、アントシュに行く。お前には悪いが」
「何を言っているんですか、私はアルフレッド様の侍従ですよ。
アントシュまで一緒に行くに決まっているでしょう?」
「は?お前、宰相候補だろう」
「父親にはもう言ってきました。お二人についていくと。
好きにしていいと言われましたよ」
「宰相が……本当にいいのか?」
「ええ。ついでにジルとルウイもついてくるそうですよ」
「え?二人も!?本当にいいの?」
アズだけでも申し訳ないのに、
ジルとルウイまで連れて行っていいのだろうか。
「俺たちはルーチェ様の護衛ですからね。
アントシュにだってついていきますよ」
「地方貴族の二男なんていなくてもかまいませんからね。
最後までお供します」
「ありがとう、二人とも」
「ああ、ジルとルウイもいてくれると助かる。
信用できない者にルーチェの護衛は任せられないからな」
今までアルフレッド様に褒められたことがないのか、
ジルとルウイが泣きそうになっている。
「え……アルフレッド様にそんなこと言ってもらえるなんて」
「……俺、思いっきり自慢するわ」
小さな声でつぶやいている二人をアズが肩をたたいて笑っている。
そっか……アントシュに行ってもみんな一緒なんだ。
「アントシュの国王が回復次第、話をしに行こう」
「はい」
「は?」
時間が止まった気がした。
エッカルト様からの返事が怖くて目をぎゅっと閉じた。
一瞬の静寂の後、エッカルト様の笑い声が響いた。
「……え?」
「ふははははは。お前たちは本当にそっくりだな。
ずっと一緒にいたからか?」
「……何がですか?」
言われている意味がわからなくて、首をかしげた。
「私の許可はいらない。後はお前たちで話し合いなさい」
「それはどういう」
「……ルーチェ、抱き上げるぞ」
「え?」
振り返る間もなく、アルフレッド様に抱き上げられる。
胸に顔を押しつけられるように抱き上げられたせいで、何も見えない。
謁見室の扉から出る前にアズの笑い声がして、
廊下に出たらジルとルウイのがんばってくださいという声が聞こえた。
いったいどうしてと聞いてもアルフレッド様は答えてくれない。
気がつけば宮に戻っていた。
小さな庭に出て、ようやくアルフレッド様がおろしてくれる。
なぜかアルフレッド様の顔が赤い。
もしかして、怒っている?
あんな勝手なお願いをエッカルト様にしてしまったから、
怒らせてしまったのかもしれない。
「ルーチェ……」
「ご、ごめんなさい」
「何を謝っているんだ?」
「勝手なことをお願いしたから、怒っているのでしょう?」
「怒ってはいないが、驚きはした……」
「ですよね……」
エッカルト様を慕っているアルフレッド様が、他国の婿になんてなるわけがない。
考えたこともなかったことを言われて、さぞ驚いたはず。
「……さっきルーチェをこの宮に連れて帰った後、
俺は謁見室に戻って兄上に相談していたんだ」
「相談?」
「ああ」
アルフレッド様の顔が下がって来ると思ったら、私の前にひざまずいた。
私を見上げるようなアルフレッド様の目。
こんな顔は見たことがない。
見惚れていたら、両手を取られた。
指先に唇がふれて、動けなくなる。
「ルーチェ」
「はい」
「俺をアントシュに連れて帰ってくれないか?」
「え……」
顔をあげたアルフレッド様と目が合う。
今のは聞き間違いじゃない?
「今、なんて」
「俺を女王の、ルーチェの王配にしてほしい」
「……どうして」
「好きだから。ルーチェが。
俺はこんなことでルーチェをあきらめたくはないんだ」
すぐ近くにいるはずのアルフレッド様の顔がぼやけていく。
今、聞いたのは私に都合のいい幻聴ではないよね?
「泣かないで……返事をしてくれないか?」
「……ほんとうに、アルフレッド様はそれでいいの?」
「さっきは驚いたよ。兄上に許可を得ようとしていたんだ。
アントシュに婿入りしてもいいか、って」
「だから、エッカルト様がそっくりだって……」
「そういうこと。俺が求婚するよりも前に求婚されてしまった」
「あれはっ」
求婚なんかじゃないって言う前に唇がふさがれた。
くちづけの合間に何度も好きだって聞こえてくる。
熱い熱い唇に一緒に溶けてしまいそうになるのに、
少しして唇が離れてしまう。
「……好き。アルフレッド様が好き。他の人じゃ嫌なの。
ずっとアルフレッド様と一緒にいたい」
「ああ、わかってる。俺もルーチェを他の男に渡すことはできない。
一緒にアントシュに行くよ。俺を婿にしてくれるか?」
「ええ、もちろん!」
抱き着いたら、そのまま抱きあげられた。
さっきまで少しだけ遠慮がちだった精霊たちが、
私たちを囲むように踊って喜んでくれている。
「アントシュの国王が落ち着いたら許可をもらいに行こう」
「お父様は許してくれるでしょうか」
「大丈夫、俺が説得するから」
「はい」
私たちで決めてもお父様が許さなかったらダメかもしれないけれど、
アルフレッド様がそう言うなら大丈夫だと思える。
庭から部屋に戻ると、そこにはアズとジルとルウイがいた。
「決めたんですね、アルフレッド様」
「ああ、アントシュに行く。お前には悪いが」
「何を言っているんですか、私はアルフレッド様の侍従ですよ。
アントシュまで一緒に行くに決まっているでしょう?」
「は?お前、宰相候補だろう」
「父親にはもう言ってきました。お二人についていくと。
好きにしていいと言われましたよ」
「宰相が……本当にいいのか?」
「ええ。ついでにジルとルウイもついてくるそうですよ」
「え?二人も!?本当にいいの?」
アズだけでも申し訳ないのに、
ジルとルウイまで連れて行っていいのだろうか。
「俺たちはルーチェ様の護衛ですからね。
アントシュにだってついていきますよ」
「地方貴族の二男なんていなくてもかまいませんからね。
最後までお供します」
「ありがとう、二人とも」
「ああ、ジルとルウイもいてくれると助かる。
信用できない者にルーチェの護衛は任せられないからな」
今までアルフレッド様に褒められたことがないのか、
ジルとルウイが泣きそうになっている。
「え……アルフレッド様にそんなこと言ってもらえるなんて」
「……俺、思いっきり自慢するわ」
小さな声でつぶやいている二人をアズが肩をたたいて笑っている。
そっか……アントシュに行ってもみんな一緒なんだ。
「アントシュの国王が回復次第、話をしに行こう」
「はい」
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