王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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17.待つ間

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「リリー、もう少しだけ待ってて。
 この跡が消える前に迎えに来る。
 …逃げないで待ってて。」


そう言われてから、レオを待つ時間は長く感じた。
それでも、一昨日までのつらい時間とは全く違った。
レオが他の令嬢を抱いていない。
それがわかった今は、早くレオに会いたかった。

誤解して逃げた私が悪いのか、
誤解されるような真似をしたレオが悪いのかはわからない。
でも、誤解だった、そのことだけが大きかった。
レオに問いただしもせずに逃げてきたくせに、
早くレオの口から誤解だよって聞きたくて仕方がない。

レオは、今でも私の、私だけのレオ?
会って聞きたかった。
抱きしめて、そうだよって言ってほしかった。


時間はただ過ぎていくけど、今の私にできるのはお茶屋の準備だけ。
レオが好きだった具沢山のトマトスープ。
レオが好きだったスコーン。
レオが好きだったサンドイッチ。
作るたびに、レオとの思い出があふれ出てくる。
ここ2年は作ってあげる時間も無かった。

どれも、レオがすごく食べてくれたもの。
気が付かないうちに、レオが好きなメニューだらけだった。

逃げていたつもりだったけど、本当は待っていたんだろうか。
私が逃げても、迎えに来るって言ってくれていた。
だから、レオなら迎えに来れる魔女の森にきたのかもしれない。

側妃を迎えたって聞いて、悲しかったし寂しかった。
レオに裏切られた気持ちでいっぱいだったけど、
どこかで迎えに来てくれるんじゃないかって。


時間が過ぎるのが遅いな。
静かな部屋で、私が調理している音だけが響いてる。
午後のお茶の時間にもまだ早いし、
これが終わったら、何をしていればいいんだろう。


スコーンの生地をオーブンに入れて、焼き始める。
私にできるのは、いつも通りの作業をして待つこと。
もう王宮は出てきてしまっているし、私から戻ることはしたくない。
待つしかできないけど、その間にできることは限られていた。
気が散ってしまって、魔術の本を読んでも少しも頭に入ってこない。
会話する相手がいれば少しは気が紛れるのに、二人ともいなかった。
シオンは買い出しかしら。シーナもどこにいるのか見えない。
いつもなら必要以上にそばにいようとするのに…。
一人でいると暗いことばかりを考えてしまう。


あぁ、もう。泣きそう。
自分で逃げてきたのに。
こんなにも離れていることがつらい。

家の中だけにいるから?少し外に出たら気も晴れる?
気分を変えなきゃと思って、顔をあげようとした時、
後ろから、そっと抱きしめられた。


「待たせて、ごめん。リリー。」

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