王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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16.回想 レオの決意

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「15歳になると、結婚できるだろう?あと半年だ。
 だから俺に婚約の申込みがひっきりなしに来ているんだ。
 女王には好きな相手を選んでいいと言われているんだけど、
 実は…リリーのうちからも婚約の申込みが来たんだ。」

「え?うち?お父様が??」

知らなかった。
シーナやシオンからレオの話は聞いていると思ってたけど、
私に何も言わずに婚約を申し込んでいるなんて。

「そう。シーナとシオンに聞いたら、リリーは知らないって言うから。
 俺が侯爵に返事を出したら、そのまま婚約しちゃうだろ?
 リリーが俺の事好きなのか、確かめてから返事をしようと思って。
 断られなくて良かった…最初、なかなか答えてくれないから…。
 ねぇ、何を困っていたの?」

そうか…私が好きだってわかったなら、もう婚約の話になるんだ。
なんだか安心したけど、もう一つの心配はまだあった。

「あのね、婚約できるかもわからないのに、好きって言って、
 そのあと婚約者がお互いにできたら困るって思ったの。
 あと、やっぱりレオは王子だから、他にも娶るのかと思って。
 私はそういうの耐えられそうにないな…って。」

レオの顔が一瞬で青ざめたのがわかった。
今、まずいこと言ってしまった?

「リリー。ちゃんと説明してなくてごめんね。
 俺は名ばかりの王子って言うのは本当。王家の血が入っていないんだ。
 女王の王配だった父と、その父の公妾だった母との子なんだ。」

知らなかった。
あまり社交界に詳しくないのもあるし、
噂話を聞くような相手もいない。
名ばかりの王子って言ってたのは、こういう意味だったんだ。

「父上と母上は、幼いころから愛し合って婚約していた。
 そろそろ結婚をと考えていたころ、
 当時の第一王子が事故死して、第一王女が女王になることが決まった。
 議会で選ばれた王配が父上だったんだ。仕方なかった。

 女王が第一王子を産んだ後、俺が母上から産まれた。
 公妾から産まれても、一応は王籍に入ることになる。
 第一王子とは異母兄弟になるからね。
 成人するまで王子で、成人したら公爵になる。」

「そうだったんだ。じゃあ、18歳になったら、公爵になるの?」

「そう。だから俺はリリーと結婚したら、他を娶る必要はないよ。
 それに…俺自身リリー以外は無理だと思うんだ。」

「無理?」

「女王が第一王子を産んだ後、何度も流産した。
 子は産まれなかったけど、それは父上が女王を抱いた証拠でもある。
 ある日、父上が閨に呼ばれている間に、
 母上は耐えきれなくなり死を選んでしまった。
 手紙には、帰ってきた貴方に笑顔を見せることができそうにない、
 ごめんなさいと。」

そんなことがあったなんて。
愛する人が女王を抱いているのを認められない、
そんなレオのお母様の気持ちがわかってしまうのがつらい。
つらいのはレオなのに、涙がとまらない。

「泣かないで?リリー。
 俺は父上のつらさもわかるんだ。
 女王とは子どもが三人産まれたら、
 王配の仕事をやめていい約束をしていたらしい。
 結果として第一王子しか生まれなかったし、母上は死んでしまって、
 愛している母上を失った父上は絶望した。

 俺は何があってもリリーを悲しませたりしない。
 だから、15歳になるのと同時に結婚したいんだ。」

「15歳で?」

「そう。王家の血が入っていなくても、政略結婚の話はくるかもしれない。
 婚約じゃいつ邪魔されてもおかしくない。父上と母上のように。
 だから、すぐに結婚したいんだ。
 準備は半年あれば間に合う。
 急がせたくないけど、俺はどうしてもリリーと結婚したい。」

「絶対に私だけ?」

「もちろん。」

「裏切ったら逃げるかもしれないよ?」

「わかった。そんなことは無いけど、もし裏切ったら逃げてもいいよ。
 それでも俺にはリリーだけだから、すぐに迎えに行くと思うけど。」

頬の涙をぬぐってくれる。
そうか、この人は王子でいたくないんだ。
おそらく王家に対して、恨みのような気持ちを持っているんだろう。
貴族でいたくない私と似ているのかもしれない。

「もし、私たちの仲を引き裂こうとする人が現れたら?」

「その時は、一緒に逃げよう?
 俺ら魔術師だろう。どこに行っても大丈夫だよ。」







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