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第六章 三つ巴
第五十九矢 崇孚の案
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駿府館では着々と戦の準備が進んでいた。
そんな中で、俺と崇孚は松平竹千代奪還の作戦を練っていた。
「とりあえず、三河から織田を撤退させるためにも安祥城は落としたいよね。」
安祥城。東三河にあるこの城は織田の三河における最重要拠点である。ここを落とせば、織田の三河攻略の野望は完全に潰える。
「う~ん、でもなぁ…」
俺は頭を抱えてしまった。
というのも、この竹千代奪還は普通に戦って勝ったとしても、織田が自ら竹千代を手放さない限り今川に勝利はないのだ。
部屋内がシーンと静まり返る。
すると崇孚が長考から抜け出して、ひらめいたかのように言った。
「そうだ、思いついたぞ…!」
「え、なになに?」
「ならば、織田に自ら手放させればよいのだ!」
「…どゆこと?」
俺が意味がわからずに首を傾げていると、崇孚は具体的に説明してくれた。
「安祥城の城主は織田信広だったな。」
「うん、そうだけど…」
「確か信広は嫡男ではないが、信秀の長子のはず。そうだな?」
「うん、そう。」
「では、仮に拙僧らが城を落として信広を捕らえれば織田はどうする?」
「そりゃあ、家族なんだし信広を取り戻そうとするんじゃ……あ。」
俺は崇孚が言いたいことに気が付いた。
「そう、城が落とされた上に自身の息子、しかも長子が敵に捕らわれるなど信秀にとって屈辱そのもの。どんな手段を選んでも息子を取り返さんとするだろう。」
「その時に織田さんと交渉すれば…」
「ああ、おそらく織田は竹千代を手放すだろう。」
俺は思わず崇孚に拍手を送っていた。
「よしっ目には目を、歯には歯を作戦。実行しましょ!」
俺が崇孚との話を終えて部屋の襖を開けると同時に、小学生くらいの子供が俺に勢いよくぶつかった。
「あだっ!!」
ぶつかった子供は尻もちをつく。
「ごめん…って福じゃん。」
俺はぶつかってきた子供が娘の福姫であることに気付いた。
「あっ、父上!やっと見つけました!」
福はすぐに立ち上がり、パアッと顔を輝かせる。
「なんか俺に用事あったの?」
「はい!」
福がコクリとうなずくと、
「福を駿府の町に連れて行ってもらえぬでしょうか!」
と言った。
「え~今?戦の準備中なのに?」
「はい!今すぐ駿府の町の饅頭なるものを食べてみとうございます!」
「饅頭って誰から聞いたの?」
「私が言いました。」
俺が福に聞くと、福の後方からそんな声が聞こえた。俺が見やると、福の後ろから侍女と共に多恵が来ていた。
「久しぶりにあの饅頭が恋しゅうなり、つい福の前で口に出してしまい申した。」
と言った。多恵は言葉を続ける。
「しかし近頃、殿も戦続きでお疲れのご様子。ここは一つ、少し休息をとってはいかがでしょう。」
多恵は俺にニコリと微笑んだ。
それを聞いて、俺は頭をポリポリとかいた。
「確かにここんとこ戦続き…」
俺は少しの間考えた後、決断を下した。
「じゃあ、皆で町に行こっか。」
ガヤガヤと大勢の人が行き来する駿府の町に二人の男が訪れていた。
「駿府はでかいと聞いていたが、ここまでとはなぁ。」
「………」
駿府の華やかさに驚嘆する大きな木製の箱を背負う男とそれに何の反応も示さない武士の格好を装った男。そう、行商人と岩屋八弥である。
ではなぜ、行商人たちが駿府にいるのか。
それには行商人の意向があった。
玄海の配下となった後、行商人は考えていた。
今、三河国で多大な影響を及ぼしているのはどの勢力か、と。
東三河を支配しているが、先の戦で今川・松平軍に大敗した織田?
それとも、西三河を支配しているが、当主が不在の松平?
いや、どちらとも否だ。
兵力や財力が他勢力もあり、かつ今までの損害が比較的少ない今川こそ最も警戒すべき勢力と行商人は判断したのだった。
そして、それを踏まえて今川の情報収集をしたいと玄海を説得したところ、玄海も快く許諾してくれた。
そんなわけで、行商人たちは現在その今川の膝元の駿府にて情報収集をしていたのだ。
すると、行商人たちの前方で何やらザワザワと人々がざわめいている。
行商人が人々の声に耳を傾けると、
「殿様がおられるぞ。」
「奥方様もおられる。」
という声が聞こえてきた。
(殿様が…?そんな馬鹿な…)
と思いながらも行商人は気になって、人々が騒がしくしている場所へと向かった。
そんな中で、俺と崇孚は松平竹千代奪還の作戦を練っていた。
「とりあえず、三河から織田を撤退させるためにも安祥城は落としたいよね。」
安祥城。東三河にあるこの城は織田の三河における最重要拠点である。ここを落とせば、織田の三河攻略の野望は完全に潰える。
「う~ん、でもなぁ…」
俺は頭を抱えてしまった。
というのも、この竹千代奪還は普通に戦って勝ったとしても、織田が自ら竹千代を手放さない限り今川に勝利はないのだ。
部屋内がシーンと静まり返る。
すると崇孚が長考から抜け出して、ひらめいたかのように言った。
「そうだ、思いついたぞ…!」
「え、なになに?」
「ならば、織田に自ら手放させればよいのだ!」
「…どゆこと?」
俺が意味がわからずに首を傾げていると、崇孚は具体的に説明してくれた。
「安祥城の城主は織田信広だったな。」
「うん、そうだけど…」
「確か信広は嫡男ではないが、信秀の長子のはず。そうだな?」
「うん、そう。」
「では、仮に拙僧らが城を落として信広を捕らえれば織田はどうする?」
「そりゃあ、家族なんだし信広を取り戻そうとするんじゃ……あ。」
俺は崇孚が言いたいことに気が付いた。
「そう、城が落とされた上に自身の息子、しかも長子が敵に捕らわれるなど信秀にとって屈辱そのもの。どんな手段を選んでも息子を取り返さんとするだろう。」
「その時に織田さんと交渉すれば…」
「ああ、おそらく織田は竹千代を手放すだろう。」
俺は思わず崇孚に拍手を送っていた。
「よしっ目には目を、歯には歯を作戦。実行しましょ!」
俺が崇孚との話を終えて部屋の襖を開けると同時に、小学生くらいの子供が俺に勢いよくぶつかった。
「あだっ!!」
ぶつかった子供は尻もちをつく。
「ごめん…って福じゃん。」
俺はぶつかってきた子供が娘の福姫であることに気付いた。
「あっ、父上!やっと見つけました!」
福はすぐに立ち上がり、パアッと顔を輝かせる。
「なんか俺に用事あったの?」
「はい!」
福がコクリとうなずくと、
「福を駿府の町に連れて行ってもらえぬでしょうか!」
と言った。
「え~今?戦の準備中なのに?」
「はい!今すぐ駿府の町の饅頭なるものを食べてみとうございます!」
「饅頭って誰から聞いたの?」
「私が言いました。」
俺が福に聞くと、福の後方からそんな声が聞こえた。俺が見やると、福の後ろから侍女と共に多恵が来ていた。
「久しぶりにあの饅頭が恋しゅうなり、つい福の前で口に出してしまい申した。」
と言った。多恵は言葉を続ける。
「しかし近頃、殿も戦続きでお疲れのご様子。ここは一つ、少し休息をとってはいかがでしょう。」
多恵は俺にニコリと微笑んだ。
それを聞いて、俺は頭をポリポリとかいた。
「確かにここんとこ戦続き…」
俺は少しの間考えた後、決断を下した。
「じゃあ、皆で町に行こっか。」
ガヤガヤと大勢の人が行き来する駿府の町に二人の男が訪れていた。
「駿府はでかいと聞いていたが、ここまでとはなぁ。」
「………」
駿府の華やかさに驚嘆する大きな木製の箱を背負う男とそれに何の反応も示さない武士の格好を装った男。そう、行商人と岩屋八弥である。
ではなぜ、行商人たちが駿府にいるのか。
それには行商人の意向があった。
玄海の配下となった後、行商人は考えていた。
今、三河国で多大な影響を及ぼしているのはどの勢力か、と。
東三河を支配しているが、先の戦で今川・松平軍に大敗した織田?
それとも、西三河を支配しているが、当主が不在の松平?
いや、どちらとも否だ。
兵力や財力が他勢力もあり、かつ今までの損害が比較的少ない今川こそ最も警戒すべき勢力と行商人は判断したのだった。
そして、それを踏まえて今川の情報収集をしたいと玄海を説得したところ、玄海も快く許諾してくれた。
そんなわけで、行商人たちは現在その今川の膝元の駿府にて情報収集をしていたのだ。
すると、行商人たちの前方で何やらザワザワと人々がざわめいている。
行商人が人々の声に耳を傾けると、
「殿様がおられるぞ。」
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