継母の心得

トール

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第二部 第3章

440.天才キッズたち

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「───ノア、そのドラゴンさんは、そらをとべるのだろうか?」
「あっ、しょれ、きいてないの。わしゅれてた」
「そうか。もしとべるのなら、あかいとりさんと、いっしょにとべるのだが」
「しょうね! いっちょ、おしょらとびたい! おさかなさんも、いっちょ、のりたいの!」
「おさかなさんか!」

神殿に行った翌日、あまりお話が出来なかったのか、イーニアス殿下がやって来て、ノアと二人、話が盛り上がっている。

冒険の楽しい話は、尽きる事がありませんわね。

「そうだ。ノア、あかいとりさんは、ちちうえといっしょに、『フィニ』という、なまえを、つけたのだぞ」
「ふぃに! かっこいーの。わたちも、どりゃごんさんと、ももんがー、おなまえ、ちゅけたい!」

あら、イーニアス殿下は珍獣に名前を付けてあげたみたい。珍獣って名前がないのかしら?

「にょあ、あちゅ、ぺぇちゃ、みょ」

ぺーちゃんが、構ってほしいと二人に抱きつきに行きましたわ。お兄ちゃんたちが、自分の知らない話をしていて、疎外感を感じたのかしら。

「ぺーちゃんも、あわしぇて、あげたいの」
「にゃ?」
「どりゃごんさんと、ももんがーよ」
「ぅあ、ちゃ? もぉも?」
「どりゃごんさんはおっきくて、ももんがーは、とってもちっちゃいのよ」

ノアの話に、ぺーちゃんは目をまん丸くし、キョトンとしている。

わたくしもノアから、神殿にはドラゴンとモモンガの珍獣がいたと聞き、同じ反応になりましたわ。

「ぺぇちゃ、ぅあ、ちゃ、こあい……」
「ぺーちゃんは、どりゃごんさん、こわいの?」
「こぁい……」
「だいじょぶ。どりゃごんさん、やさちぃのよ」
「ぅあ、ちゃ……ぺぇちゃ、ぁっくん」
「どりゃごんさん、ぺーちゃん、ぱっくんちないの」
「ちにゃぃ?」

ぺーちゃんはどうやら、ドラゴンに食べられてしまうと思ったようだ。ノアやイーニアス殿下は子供らしく、怖い物知らずで、楽しみながら突き進んでいく、勇者のようなタイプだけれど、ぺーちゃんは慎重なタイプですものね。

「ぺーちゃん、フィニも、ドラゴンさんも、モモンガも、おしゃべりするのだぞ」

イーニアス殿下の話に、ぺーちゃんのおめめが、こぼれ落ちるんじゃないかっていうくらい、大きく開いたのだ。

「!? ぅちゃ!? もぉも、ぅちゃ!」
「しょうよ。ぺーちゃんは、ちいさなどうぶちゅ、だいしゅきよね。おちゃべり、しゅるのも、だいしゅきでちょ?」
「ぺぇちゃ、うーっ、ちゅっき!」

まぁっ、もふもふ好きのぺーちゃんが、大興奮していますわ。あら? ぺーちゃん、モモンガ見たことあるのかしら……? 普通、赤ちゃんはモモンガって何? って反応、するはずですわよね? ドラゴンは、ノアがぬいぐるみを見せてあげたから知っているのだろうけど……

「奥様、どうかされましたか?」

カミラがリスのような仕草で首を傾げ、聞いてくるので、「ぺーちゃんはいつ、モモンガを知ったのかしら?」となんとなしに口にする。

「きっと、絵本で見たんですよ」
「絵本……」

モモンガが出てくるような絵本なんて、あったかしら?

「絵本でなければ、クレオ大司教様がぺーちゃん様に教えたのかもしれませんし」
「……そう、よね。それしか考えられませんわよね」

ぺーちゃんに視線を移すと、親指を咥え、ちゅっちゅと吸っているのが目に入った。やっぱり、普通の赤ちゃんですわよね。いえ、天才キッズたちの中の一人ですわね。

「ねぇ、カミラ」
「何でしょうか? 奥様」
「ウチの子たちって、天才ですわよね」
「はい。間違いありません」

カミラと頷き合っていれば、ぺーちゃんを抱っこしたイーニアス殿下と、ノアがこちらへやって来て、「おかぁさま」と、天使の笑みを浮かべながら言うのだ。

「あのね、わたちと、かぜとみじゅの、ちんでん、いきまちょ」

え?

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