継母の心得

トール

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第二部 第3章

441.名付け



息子からの、散歩のお誘いの場所が、水の中でした。

「───水族館……?」

大きな一枚ガラスの外には、青く美しい水の中を気持ちよさそうに泳ぐ小魚たち。そのそばには普通車くらいありそうな、巨大な魚が何匹もいて、魚たちの奥に見えるのは水中都市……とまではいかないが、石でできた建造物がいくつもあるのだ。上を見上げると、かなり遠くに見える湖面を太陽の光が照らし、キラキラと輝いて、なんとも幻想的な世界が広がっていた。

ノアが風と水の神殿に、転移で連れてきてくれると言うので、それは行きたいわ! とやってきたのだけど、ノアが転移した場所は、ノア曰く水の神殿で、湖の底にあるのだとか。

「ここは、湖の底だというのに、水の中に光が届いておりますのね」

湖の底だというのに、湖面が見えるほどの透明感と、ノアの瞳のように綺麗な青。不思議ですわ……

カミラとミランダ、マディソンもいるのだけれど、三人も周りを見て驚いた顔をしている。
マディソンが一番早く我に返って、ノアやぺーちゃん、イーニアス殿下の様子を確認していたのはさすがだ。

『幼き子、友人を連れてきたのですか』

そして、本当にドラゴン……いいえ、この姿は龍ね。白龍ですわ! が、今、わたくしの目の前にいるのだ。

「わたちの。おかぁさまと、アスでんかと、おとうとの、ぺーちゃんよ」

はじめまして、と挨拶すれば、

『幼き子の、母……っ、まさか、あなた様は……』

白龍が、わたくしを見て固まっている。

どうしたのかしら? わたくし、何かした?

「すごい! ほんとうに、ドラゴンさんだ」
「ふぇ……っ、にょあ……っ、かぁちゃ……」

あらあら、ぺーちゃんが泣き出してしまいましたわ。

白龍を見て驚いたぺーちゃんを抱き上げ、何故か頭を下げている白龍に首を傾げる。

『幼き子は……そういう事でしたか。悪魔に運命を捻じ曲げられ……。本来ならば───』

え、なんて?

白龍の呟きは小さくて、よく聞こえないのだ。

「おかぁさまの、おなか、あかちゃんいるのよ。わたちの、きょうだい!」
『そのようですね。よろしければ、別室に人間用の部屋があります。そちらへ移動するとよいでしょう。お茶の用意をしましょう』

白龍って、人間に対してこんなに腰が低く、気を遣ってくれますのね。

「先日は、息子がお世話になりまして、ありがとう存じます。さらに本日は突然お邪魔してしまい、申し訳ございませんわ」
『幼き子……ノアは、この神殿の管理者。つまりこの神殿はノアのものでもあるのです。いつ来ても構いませんし、ノアが招待すると決めた者は歓迎いたしますよ』

管理者って、神殿の主みたいなものって事ですの?

「そ、そうですのね。お気遣い、感謝いたしますわ」
「どりゃごんさん、わたち、おはなち、あるのよ」
『お話、ですか……?』

お話って、もしかして、さっきイーニアス殿下と話していた、名前を付ける、付けないの事かしら?

別室に移動してから話しを聞くと、白龍はわたくしたちをソファがある部屋に案内してくれたのだ。

この部屋も、壁はガラスになっていて、美しい湖の中を見る事が出来るようになっている。
明るいからか、圧迫感もなく、景色を楽しむ事ができるのは、この神殿の魔法なのだろうか。

『それでノア、先程の話とはなんなのでしょうか?』

白龍の言葉に、ノアはイーニアス殿下と顔を合わせ、頷き合ってから口を開くと、

「あのね、わたち、どりゃごんさんと、ももんがーのおなまえ、ちゅけたいの」
『おや、ノアが名付けをしてくれるのですか』

これはまさか、ファンタジー定番の、『名付け』ですの!?

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