継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 アベルとフローレンス 〜

番外編 〜 聖者コンビの冒険 〜 アベル5歳、フローレンス8歳

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エビッ、エビッ、エビエビエビエビエビフラーイ! 今エビ何回言ったのエビフラーイ! ふふふふふーライ!」
「そのうたなーに? へんなうたー」
『変じゃないよ!! フローレンスは音楽の才能があるんだからね!』
『アベルは正直なの。許してあげて』

そこらで拾った木の棒を振り回しながら、上機嫌に歌を歌うフローレンスの後ろを、アベルがちょこちょことついていく。
周りには光の妖精王であるナサニエルと、光の精霊ウィルも飛んでいるようだ。

「ふふふふふーライ! のところは、ななかいいったよエビフーライ! のほうが、いいとおもうな」
『そこ!? アベルそこなの!?』
『フローレンスの考えた歌詞の方が断然良いよね!』

今聖者二人と人外二人がどこにいるのかというと、公爵邸の広い裏庭の迷路だ。
ノアの4歳の誕生日にウォルトたち執事チームが作ったあの迷路である。

「ねぇ、フロちゃん。ほんとーにこっちであってる?」
「あってる、あってる! まちがいない!」
『フローレンスの言う事は全部正しいのさ!』
『でも、あっちの方からベルたちの声が聞こえるけど……』

迷路に入ってすでに30分、普通なら10分で抜け出せるところを、その3倍の時間をかけてもまだ抜け出せないでいる聖者コンビに、精霊ウィルは若干目が泳いでいる。

「だいじょぶ、だいじょぶ!」
「だいじょぶ、だいじょぶ~!」

何の根拠もないが、二人はそう歌いながら、途中で木の実や石を拾ったり、木の棒を拾ったりして進んでいる。
ポケットの中はすでにいっぱいで、木の実があふれ、迷路に転々と落ち、偶然にも目印をつけているのだが、二人は気付かない。

「ぜんぽーに、虫型モンスターはっけん! ただちにげーげきする!!」
「フロたいちょー、まりょくが、もぉありません!」
「なんだと!? くそぉっ、ここで終わりなのか……っ」
『フローレンス! 諦めないで!!』
『え、え、虫型モンスター!?』

たまたま飛んできたカナブンにそんな事を言いながら近付いていくと、カナブンは驚いて逃げていく。

「飛んだぞ!!」
「にげていく! フロたいちょー、われわれの、しょーりだ!」
「「うぉ~!!」」
『さすがフローレンスだね!』
『えー……』

しかし勝利の雄叫びを上げているその時、聖者コンビの後方から怪しい影が近付いて来たのだ。

「これは、これは、可愛らしい迷子たちですなぁ」
「あ、庭しのおじいちゃま! こんにちは」
「こんにちは、にわしちょー!」
『フローレンスは挨拶もきちんとできるんだね!』
『庭師長、私たちを、出口に案内して』

迷路の生垣よりも背の高い庭師長は、上から生垣の中にいる子供たちを覗き込むと、ニコニコと笑って二人が転々と落としている木の実に気付き、笑みを深めた。

「まるで絵本の妖精のようですなぁ」
『ボクは本物の妖精だよ!』
「そうそう、お二人とも、奥様が探しておられますよ」
『大変! ベルが心配しているかも!』

この場で慌てているのはウィルだけで、他は焦る事もなく「ならば、このダンジョンから、はやくぬけ出さねば!」「おー!!」という会話をしている。

「庭しのおじいちゃま、われわれは先を急ぐので、これにてしつれいする!」
「しつれいする!」
『バイバーイ』
『ちょっと!? 庭師長に道を聞いた方が良いと思うよ!?』

こうして、ダンジョン(生垣迷路)にて虫型モンスター(カナブン)と戦い、ダンジョンマスター(庭師長)に遭遇した聖者コンビは、妖精女王を目指さしてダンジョンを突き進むのであった。


「アベルー! フロちゃーん、おやつのアイスクリーム、溶けちゃいますわよー!!」


「なーたん、転移せよ!!」
「ウィル、てんい!」
『『はーい!』』

妖精女王の声に、秒でダンジョンを抜け出し、無事アイスクリームを食べられたのだ。


「まったく。二人とも同じ所をぐるぐる回って出てこないんだから。よっぽどあの生垣迷路がお気に入りなのね」

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