継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 アベルとフローレンス 〜

番外編 〜 スピードアスレチック3 〜 アベル5歳、イーニアス11歳



『アスかっこいー!』
「アス殿下、頑張って。でも、優勝はそう簡単に渡しません」
『ノアがゆーしょー!!』
「うむ。ウォルト殿にも、ノアにも負けぬよう、好タイムをたたき出そう」

イーニアス殿下はそう言って太陽のように暖かな笑みをノアへと向ける。
最近ますます凛々しくなられた殿下は、多分あの笑顔で令嬢たちを陥落しているに違いない。

「11歳だというのに、末恐ろしいですわね」
「イーニアス殿下は、通常成人と同時に学び終えるはずの帝王学もすでに終え、今はより学びを深める為の勉学を進めている。ノアも才のある子だが……殿下は飛び抜けているな」

天才を超越するようなテオ様にこう言われるイーニアス殿下は、本当にすごい方なのね。


「───前回はたった10歳にして猛者たちを倒し、3位に輝いたその実力は本物です! 優勝候補でもあるイーニアス殿下が今、スタート地点に立ちました!! ロープの感触を確かめ……そして……っ、スタートォォォ!!」

イーニアス殿下は人間とは思えないジャンプ力で、あっという間に三分の一まで到達する。

「何という跳躍力でしょうか!! そして腕だけでなく足も使い、するすると登っていくー!!」
「キャーッ! イーニアス頑張るのだー!!」
「イーニアスいけー!!」
「アスおにいさまがんばれー!!」

皇帝陛下と皇后様の悲鳴のような応援と、姉弟たち、そしてアベルの応援を受けて、すごいスピードで登っていく。
お猿さんのように軽やかだ。

そして、あっという間にてっぺんへと辿り着いたのだった。

「これはー!! すごいタイムが出ました!! まさかのウォルト執事長超えです!!」
「「キャー!!」」

皇帝陛下と皇后様が抱き合って喜んでおりますわ。

「負けてしまいましたか。残念です」

ウォルトがそう呟きながら、テオ様のそばへとやってくる。

「鈍ったのではないか……」
「申し訳ございません、旦那様。身体を鍛え直す必要があるようです」

あらあら、こちらはとても冷静な会話ですわね。

「おかあさま! アスおにいさま、すごい!!」
「そうね。本当に絵本の主人公のようでしたわ」

拍手をしているアベルの頭を撫でながら、「しゅぎょお」をすると言っていたノアとアス殿下を思い出す。

一体どんな修行をすればああなれるのかしら……。

ノアを見れば、にこにことてっぺんのイーニアス殿下を見ているではないか。

「アベル、今度はお兄様の番よ。たくさん応援してあげましょう」
「はーい! ノアおにいさまー! がんばってー!!」
「ノアー! 頑張って!!」

もちろんわたくしも、声を張り上げて応援しましたわ!

「優勝できるかどうかは、跳躍力次第かもしれんな……」

テオ様の呟きに、イーニアス殿下の人間離れした跳躍力を見た後なので、あれ以上の跳躍力が必要!? とぎょっとしてしまう。

「さぁ! 我らの公子様がスタート地点に着きました!!」
「おにいさま、まけるなー!!」
「ぁう……にーっ」

アベルとミーシャが声を張り上げる。

「今…………っ、スタートだァァァ!!」

アス殿下と同じように、人間離れした跳躍力を見せる我が子に、「ノアー!!」とつい興奮してしまう。
イーニアス殿下と同じようなペースで上っていくノアだったが、最後の最後で足を滑らせ、ほんのちょっとだけ、遅れてしまったのだ。

「惜しいィィ!! 何という事でしょうか! イーニアス殿下とはたった0.3秒の差で、公子様は暫定2位!!」

本当に惜しかったですわ! 足を滑らさなければ、1位だったかも……っ

「去年よりもさらにスピードを増したな」
「お二人とも素晴らしいです。旦那様のタイムにはまだ追いつけませんが、来年にはわかりませんね」
「まだまだ負けるつもりはない」

テオ様ったら、ノアと張り合うなんて……大人げないお父様ですわね。

「───お母様!」

ファイナルステージを終えて、駆け寄って来た長男を抱きしめる。

「ノア! とっても格好良かったわ!!」
『ノア、ステキヨ~』
『ノア、かっこいー!!』
「ふふっ、負けてしまったけど、次は負けません」

そういえばノアは、負けず嫌いな所もあったわね。

「来年はお父様にだって勝てますわ」
「はい。お父様にも、アス殿下にも勝ちます」

ノアが決意表明をしていた時だった。

「イーニアス殿下のタイムが塗り替えられたァァァ!!」

え?

「何と、紅一点のフローレンス嬢っ、とんでもない速さでタワーの頂上に到着だァ!!」

エェ!?

「おかあさま、おにいさま、フロちゃん、ゆーしょーしたね」
「ぇ……ええ。そうね……?」
「私は、フロちゃんにも負けた……?」

準優勝かと思っていたノアは、予想だにしないダークホースの登場で3位となり、さすがに落ち込んでしまった。

「跳躍した後、通常はロープを少しずつ登っていくが、あの娘……跳躍しながら登っていた。どういう脚力をしているのか……」

なんですの。そのウサギさんのようなやり方は……。

テオ様すら呆然とする中、アベルがびっくりする事を教えてくれたのだ。

「あのね、フロちゃんとオレ、そろばんのあとに、“ジャンプのしゅぎょお”してるの! だからね、ジャンプとくい!」

エェェ!? 二人とも、ノアとイーニアス殿下のように修行していますの!?


「おもちゃカフェの食べ放題は、私のものだー! うぉー!!」
「フローレンスぅぅ!!」

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