心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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一目惚れの出会い編

17 初めてのお酒飲み。

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 高速のサービスエリアで、トイレ休憩。グッと背伸びをして軽いストレッチをして、お手洗いへ歩いていけば、足元に緑の物体。
 葉っぱかと思えば、その形が、バッタだと気付いて、仰天した。

「ひやあっ!」

 思わず、すぐ横にいた数斗さんの右腕にしがみ付く。


『む、胸ッッッ!!!』


 革ジャケットの下の胸を押し付けてしまったようで、数斗さんの強い心の声を聞いて、それにもビクッと慌てて離れた。

「あ、ごめ、なさい」
『胸、ある。胸、ある。胸』
「いいよ。虫怖いんだ?」

 心の中で荒ぶる数斗さんは動揺を隠して、気遣ってくれる。

「バッタは、ちょっと、きやあっ!!」

 ぴょんっと、バッタが飛び跳ねてきたので、数斗さんにまた引っ付く。
 すると、ぐいっと腰を掴まれて、軽く持ち上げられて、数斗さんの左側へと移動させられた。


『かっるッ!?』


 また数斗さんの強い心の声が、響く。

『え、軽い。現実にこんな軽いって、ある? あるんだ……。ウエスト、細。身体、薄い。え? これ、俺は、どうしたら? どうしたらいいの?』

 え、ええぇっ……? 逆に、どうしたいんですか……。
 さり気ないけれど、ウエストに手を添えて、細さと薄さに困惑している数斗さん。

『女性の魅力がありすぎて……困る…………脱いだら、すご』
「あ、ありがとうございます!」
「あー、ううん。ほら、もういない」

 いけない思考に行こうとしたから、慌てて遮った。
 私の腰を押して、数斗さんは笑って安心させる。

「とりあえず、七羽ちゃん」
「はい?」
「ご飯、いっぱい食べようか?」

 にっこりと、数斗さんはそう、よくわからない圧をかけてきた。

『抱き壊したくないから、もっと太ってもらわないと』
「え、ええぇと……はい」

 抱き壊す……。
 どういう意味か、深く考えないように堪えて、曖昧な笑みを返しておいた。



 高速を下りたあとは、新一さんの家から近いオススメの飲み屋へ、数斗さんが車を走らせる。

 明るくて小さなシャンデリアがぶら下がる洒落た飲み屋は、数斗さんが私にたくさん食べてほしいと言い出してから変更した店だ。
 中央寄りの四人テーブルに着く。
 私は数斗さんと肩を並べ、目の前は真樹さんで、その隣が新一さんという位置だ。
 もうすっかり、私の隣に数斗さんがいることが定着した。

「こういうお店、初めてです」と、ちょっとそわっとする。

「いつもは、居酒屋の座敷ですので、こんな洋風なお洒落でいいですねぇ」

 と、店内を見回してから、数斗さんから差し出されたメニューを見た。

「でも、飲むのは、カシオレとかなんだよね?」
「ビールとか飲まなそうなイメージ。お酒は強くない?」
「飲んではいるんだから、ちゃんと自分のペース配分はわかってるよな?」
「あっ。今おれ達、めっちゃ過保護なお兄ちゃんっぽくない?」

 別にメニューを持ちながら、真樹さんはへらりと笑う。
 ザ・居酒屋に行っても、飲むのはカシスオレンジとか、甘いお酒の類だ。

「把握しているつもりはありますよ? 職場の忘年会だって、一人で歩いて帰れるくらいですからね」
『えっ! 夜、一人で帰ってたの? あぶなっ……!』

 ちゃんと自分のお酒の許容は、わかっているつもり。
 忘年会だとすれば、当然夜の飲み会なわけで、遅い夜道を歩く私を心配する数斗さん。

「あと、限界まで飲んだことがあります」
「限界まで? 潰れたことがあるってこと?」
「どしたどした。なんで潰れた?」

 頬杖をついて、首を傾げる数斗さんはキョトンをする。
 ケラケラと、真樹さんがその話を問う。


「初めてのお酒チャレンジで、ラブホで飲み明かしたんですよ」
『『『ラブホッ!!?』』』


 ギョッとする三人の強い心の声に、軽く震え上がりそうになった。

「あっ! あのっ! 友だちの恋人である男の先輩の提案で、限界を知るために飲もうってことでして」
『その先輩はいい人だったのか!?』『悪い先輩では!?』『ラブホに連れて行くとか、下心ありありだったろ!!』
「そのカップル一組と、私ともう一人女友だちの四人で思う存分騒いで飲み明かすには、ラブホの部屋を借りるのがいいってことで、雨の中、四人で行っておつまみを食べながら、わいわいと飲んでみたんですよ」

 内心慌てつつも、変なことなんてなかったと、平気に笑って見せて語る。

『ホッ……何もなかったならいいが』『いい先輩、なのか……? だ、大丈夫か……』

 新一さんと真樹さん……過保護なお兄ちゃんだ……。

「初めてのお酒って……楽しかったの?」
『本当に大丈夫? 大丈夫だったのか? 何もなかった?』

 平然を装って笑みを保っているけれど、数斗さんはかなり焦りながら、探ってくる。

「ええっと……楽しかったことは覚えてますけど」
『記憶がない!?』
『大丈夫じゃなくない!?』
「えへへ。気持ち悪くて、トイレにこもっちゃいました。ここで話すことじゃないですね」
『あっ……マジで限界まで飲んだのか』
『何もなかったんだな……』

 あからさまに、ホッとする真樹さんと新一さん。

「つらかった? 何飲んだの?」
「ビールは一口で嫌になって、チューハイと、あとカシオレ、ウォッカとジンも一通り試して……後悔しましたねぇ」

 数斗さんに向かって、苦笑してしまう。
「まぁ、通過儀礼だな」と、新一さんは笑った。

「じゃあ、カクテル系がいいんだね?」
「そうですね……。あっ。洋画で観たりして、ジントニックやモヒートも試したりしました。あと、バーボンをロックでカッコつけたりも」
「何それ、しぶい!」
「ククッ! バーボンをロックで? 好きになったのか?」
「ビーフジャーキーとか食べながら、一人、家でまったりしたりしますね」
「しぶい! ちょっ! 似合わないって! いやでも、ギャップがいいかも!」

 ケラケラとする真樹さんがツボったもよう。ぺしぺしと、テーブルを叩く。
 新一さんも、おかしそうに喉を鳴らして笑う。

『家でも、飲むんだ……。一人じゃなくていいなら、俺と一緒に飲んでくれるかな』と、数斗さんがメニューをぼんやり見ながら考えている。

「んで? 今日は何を飲むんだ?」
「カクテルも豊富だね」
「えっと……先ずは、カシオレにしますね」
「無難だね。料理の方は?」
『いっぱい食べてもらわないと』

 数斗さん、本気で私を太らせるために、食べさせる気だ……。

 新一さんも店員を呼び付けると、自分達のお酒を注文。
 料理より先に、お酒が並ぶ。
 もちろん、運転手の数斗さんだけは、ジュース。オレンジジュースだ。
 新一さんと真樹さんは、ジョッキーのハイボール。カシオレ。オレンジジュース。

「はい、じゃあ~……ん~?」

 カンパーイをしようとしたが、真樹さんは名目を悩み考え込む。
 遊園地を楽しんだ。というには、マイナス要素が大きい。
 初メンバーでの飲み会を祝うには、数斗さんだけがお酒を飲まない。

「お疲れ祝杯で」

 色々込めてのお疲れ様祝杯にしておこう、と私は提案。


「じゃあ、お疲れ祝杯! カンパーイ!」
「カンパーイ!」「はい、カンパーイ」「カンパーイ」


 コツン、と重ねた。
 一口、口に含んだけれど、記念に写真を撮っておきたいと、もう一度、カップを重ねてほしいと頼む。
 快く、三人はまたやってくれた。それを自分に送ってほしいとも言う。

「この写真を添えて、何を書くの~? 優しいお兄ちゃんにおごってもらった♡って?」
「からかわないでください……あっ」

 ちょびっと、もう一口飲んで、三人に写真を一斉送信していると。
 ピコン、とメッセージが届いた。

「どした?」

 ぐびぐびと飲む新一さんは、もう半分近く減ってる。

「……沢田さんから、メッセージが……」
「は?」「えっ」
『んー? 脅したりなかったか?』

 オレンジジュースを片手に持つ数斗さんから、冷気を感じた。

「なんて?」
「ごめん、見せて」

 顔をしかめた新一さんに問われると、数斗さんがそっと私の手から携帯電話を取ってみる。

「……【数斗くんから酷いことを言われたよ。七羽ちゃんはなんて言ったの? どうしてわたし達の仲を裂くの? 嫉妬したってこと? 酷いよ! わたしは応援してたのに!】って……ハハッ。心にもないことを」
「まだ猫被りかよ? 何がしたいんだ?」
「あっ! ツブヤキに書いてある! めっちゃイラついたツブヤキのあとに……うわあ、七羽ちゃんから、不利な言葉を引き出して、晒す気だぁ」
「はぁ? 無理だろ、アホめ。そーだなぁ……古川がいいなら、ネタバラシ役をやってみるか?」

 数斗さんが読み上げて、笑っていない目で乾いた声で笑う。

 腹黒の裏アカを読んで、真樹さんがゲッとした顔をする。

 猫被りのメッセージで、私から攻撃的な言葉を得ようとする作戦らしい。

 真樹さんは全部言わなかったけれど、どうやら、さっきの数斗さんのツブヤキを見たらしく、すでに私のアカウントはカギをつけられて直接の攻撃が出来ないが、繋がっている友人達に、数斗さんの想い人が、嫌な子だと言う証拠を得たいのだとか。
 それを隣で覗き込んで察した新一さんが、ネタバラシ役とやらを持ちかけた。
 沢田さんの正体を暴露する手筈を整えてから、私が彼女の裏アカを送りつけて、バレていることを教える。

 彼女が慌てて裏アカを消そうとも、手遅れ。すでに全員が知ったあと。

「……強いですね」
「強い?」
「私はいっぱいいっぱいだったのに、反撃がスムーズで……」
「要領が悪いんだよ、古川は」
「そうですね…………皆さんを見習って、もっと強くなります!」
「やめろ、早まるな」「だめだよ、落ち着いて」

 坂田さんの時も、スムーズに反撃。
 今回も、ちゃんと追い込むのだ。
 強い。見習って強くなりたいと言ったのに、新一さんと数斗さんに即座に止められた。

「いんだよ、古川は。こんなやり方で反撃することを覚えなくても。お前も強いよ。でも、限界は来るんだから、溜め込みすぎるなよ」
「その通り。そっちの努力をするんじゃなくて……そうだなぁ、もっと頼ることを覚えよう」
「そうそう。てか、七羽ちゃんは、今のままでいてほしい……おれ達の妹ちゃん天使でいて? 癒して」

 むぅ~。まぁ、数斗さん達のやり方が向いていないのは、そうなんだろう……。
 一人だと無理だろうし……要領よくないものなぁ。
 数斗さんみたいに、誘導尋問の話術とか、欲しいけど。

 …………ところで、妹ちゃん天使って、なんぞ。真樹さん。

「とりあえず、今日の鬱憤を愚痴って、飲め飲め」
「酔い潰れない程度にね」
「うんうん! おれ達が気付かなかった分を愚痴っていいよ! おれも愚痴るんで!」

 新一さんは聞き手をこなし、真樹さんは一緒に愚痴る。

 数斗さんはお守り役に徹しながらも、次から次へと運ばれる料理を取り皿に盛っては私の元に運んだ。
 そんな……食べれませんよ……。

 いやでも、ここのから揚げ、美味しいですね? もぐもぐ。


 
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