大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ベルゼブブワイン・テイスティング

第552話、ベルゼブブワインの試飲会(中編1)

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 ベルゼブブへ持っていく樽ワインが完成した。
 この樽を、ディアーナのいる役場へウッドに運んでもらう。
 ディアーナに樽を見せ、試飲用に準備したワインをグラスに注いで渡すと、ディアーナはクイッと飲む。

「ん……美味しいですね。いつも飲んでいるワインとは違う。まろやかさ、風味、そして甘みの奥に隠れる豊潤な酸味……素晴らしいです」
「絶賛だな……」

 ディアーナは、さりげなくおかわりを注ぐ。
 
「試飲会には三名まで行けます。アシュト様、護衛、そしてもう一人ですね」
「わかった。護衛はデーモンオーガの中から、もう一人は……」

 ちょっと考え込む。
 試飲会……絶対、あいつが騒ぐよな。
 俺は、試飲用のワインをグラスに注ぐ。

「なぁ、ベルゼブブのワインって美味いのばかりだよな」
「ええ。特に、樹齢七千二百年のブドウの木から取れる『ビーナスドロップ』は、一本の末端価格八千万ベルゼの値が付きます」
「は、はっせん……ってか、ブドウの木が七千年も持つのかよ」
「ふふ。樹齢千年、二千年はザラですが……八千年の木は一本だけですね」
「とんでもないな……」

 うちは植えたばかりだから、樹齢三年くらいか。
 しかも、魔法を使って一気に成長させたから……まぁ、樹齢三十年くらいの木かも。
 それに、成長速度が普通のブドウの木の三倍くらい速い。一月も経てば立派なブドウが成る。
 俺は、ワインをグラス越しに見る。

「魔法で育てたブドウで作ったワイン、今さらだけど、ホントにいいのかね」
「問題ありません。問題は味です」

 ディアーナはワインを一気に飲み干し、三杯目のおかわりを注いだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、やはりというか、案の定というか……。

「私が行く!!!!!!」

 夕食後、試飲会の話をすると、エルミナが叫んだ。
 
「まぁ、そういうと思ったよ……みんな、どう?」

 一応、全員に確認する。

「わたしはエルミナに譲るね。お酒、大好きだし」とミュディ。
「あたしもいいよ。お酒は嫌いじゃないけど、エルミナだし」と、シェリー。
「私も構わないわ。でも……お土産は欲しいわね」と、ローレライ。
「わたしもいい。お酒よりジュースがいいなー」と、クララベル。

 みんな優しいな。というか、エルミナの気迫に押された感じか。
 俺は、膝に乗せている猫を撫でながら言う。

「エルミナ。あくまでも試飲会だからな。ガブ飲みして醜態晒すなよ」
「しないし! ふふ……私はね、大酒飲むのは宴会のとき。試飲は少しずつ、たくさんの種類を飲むのが好きなのよ」
「んー……まぁ、信用する」

 こいつ、酒が絡むととんでもないからな。
 さて、同行するのはエルミナに決まった。
 すると、ミュディがポンと手を合わせる。

「あ! じゃあ、ドレス仕立てないと。アシュト、試飲会っていろんな人が来るんでしょ?」
「うん。ベルゼブブのブドウ農家や、有力者、悪魔族以外の種族も集まるって」
「なら、エルミナとアシュトの服、作るね」
「そ、そこまでしなくても……いや、なんでもない」

 ミュディの眼がキラキラしてる……これは任せた方がいいな。
 
「さ、エルミナ。採寸するから部屋に来て」
「え~? これから一杯飲もうと思ったのにぃ。明日でいいよぉ」
「駄目! もう試飲会は始まってるんだから!」
「え、そうなの?」

 そう言って、ミュディはエルミナを連れて部屋へ行ってしまった。
 シェリーが、困惑したように言う。

「お兄ちゃん、試飲会ってもう始まってるの?」
「いや……そんなことないぞ」

 とりあえず……エルミナの次は、俺が採寸かな。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 試飲会へ連れて行く最後の一人は、デーモンオーガからということで。
 
「「オレが行こう……む」」

 やっぱりな。
 話をすると、バルギルドさんとディアムドさんが同時に同じことを言い、さらに顔を見合わせた。
 
「ディアムド。前回の護衛はお前だったな? 今回は譲れ」
「馬鹿を言うな。前回は特に戦いもなかった。お前はもう二度以上、村長の護衛で戦いをしているだろう?」
「それは関係ない。順番は順番だ」
「それを認めろと?」
「…………」
「…………」
「ちょ、まま、待った! 待ってください!」

 怖かったが、ちょっと険悪な二人の間に割り込む俺……俺も強くなったな。
 
「えっと。護衛は一人で、皆さんの中から決めたいんですけど……こんなこともあろうかと、くじを用意してきたんです!!」

 俺は、ポケットから棒を取り出す。
 一本だけ色を塗ってある棒だ。当たり棒を引いた人が護衛になる。
 ちなみに、エイラちゃんは除外。ごめんね、お土産にお菓子いっぱい買ってくるから。

「おれ、お酒とかよくわかんないや。おれが当たり引いたら父ちゃんにやるよ」
「シンハ。それはダメだ……飲めずとも、護衛という役目は果たさないと」
「キリンジ兄ちゃんが言うならいいかなー」
「はいはーい! あたしはお酒飲みたい!」
「アーモ、恨みっこなしよ」
「ええ。ふふ、ワインもいいわね」
「バルギルド……勝負だ」
「いいだろう。運勝負というのも面白い」

 デーモンオーガの皆さんが一斉に俺の持つ棒へ。
 というか、皆さんの圧がすごい。

「では……あたりは誰だ!」

 全員が、パパっと棒を抜く。

「ぬぅぅ!!」
「ちぃぃぃっ!!」
「あ、ハズレだ」
「……オレも」
「あたしもかぁー」
「あーあ。残念ね」
「ま、仕方ないわ」

 あれ? 
 バルギルドさん、ディアムドさん、シンハくん、キリンジくん、ノーマちゃん、アーモさん、ネマさん。全員が外れか? エイラちゃんは猫を撫でてるし。

「へへへ、オレが当たりだぜ! ヒャッホゥ!」
「……ああ、ブランか。お前、いたのな」
「なんだその冷たさ!?」

 すっかり忘れてた。
 デーモンオーガのブライジングことブラン。バシリスク族の仲間であるデーモンオーガ、ザオウガさんの息子で、緑龍の村で預かってるんだった。
 最近、めっきり見ないから帰ったのかと。

「あのな。オレはちゃんと仕事してるぜ? クジャタ便の護衛はオレがやってるんだっつーの」
「あ、そうなんだ」
「おまえ……オレも泣くぞ?」
「あはは。悪い悪い。じゃあ、護衛はブランに任せるよ。さっそくだけど製糸場行って、ミュディに寸法計ってもらってきてくれ」
「寸法?」
「ああ。試飲会は正装しないといけないからな」
「おっし! へへへ、悪いね旦那に姉御たち。今回はオレが楽しませてもらうぜ!」

 そう言って、ブランは製糸場へすっ飛んでいった。
 バルギルドさんとディアムドさん、めっちゃ悔しそうに歯ぎしりしてるし。

「さて。これでメンバーは揃ったな」

 俺、エルミナ、ブラン。
 魔界都市ベルゼブブでのワイン試飲会。すっごく楽しみになってきた!
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