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ベルゼブブワイン・テイスティング

第553話、ベルゼブブワインの試飲会(中編2)

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 試飲会の前日。
 俺たちは、前日にベルゼブブで一泊することにした。当日入りですぐ試飲会ってのも慌ただしいからな。
 ということで、ミュディが作った試飲会用の服をケースにしまい、転移魔法を使うため庭に出た。
 庭には、俺たちを見送るべくミュディたち。 
 そして、ウキウキしているブランとエルミナだ。

「じゃ、行ってくる。明後日には戻ってくるから」

 杖を構えて言うと、ミュディたちが手を振る。
 
「うん。気を付けてね」
「エルミナ、飲み過ぎないでねー」
「お土産もよろしく」
「お兄ちゃん、お菓子いっぱいお願いね!」

 シルメリアさんたち銀猫はぺこりと頭を下げる。
 俺は転移魔法を発動させ、ベルゼブブへと転移した。

 ◇◇◇◇◇◇

 魔界都市ベルゼブブ。
 来るのは久しぶりだ。転移した場所は、ルシファーの所有する邸宅で、執事っぽい悪魔族の男性がお出迎えしてくれた。
 執事さんは、一礼する。

「ようこそ。魔界都市ベルゼブブへ。ルシファー様より、皆様のお世話を仰せつかっております、バエルと申します」
「あ、どうも……ご丁寧に」

 執事のバエルさんと握手。
 エルミナとブランはキョロキョロしていた。
 転移した場所は、大きなダンスホールのようなところだ。だが、足下には立派な絨毯が敷かれ、天井には大きなシャンデリアがぶら下がっている。
 すると、メイドさんたちが俺たちの荷物を持つ。

「さっそくお部屋に案内したいのですが……ええと、四名様で間違いなかったですか?」
「え? いや、三名……」
「みゃあ」

 と、猫の鳴き声がした。 
 まさかと思い足下を見ると、なんとルミナがいた。
 ニコニコアザラシのリュックを背負い、足下にはニコニコアザラシのモフ助もいる。
 唖然としていると、ルミナが言う。

「みゃう。お前ばかりお出かけ、ずるいぞ」
「あのな……お出かけっていうか、仕事で」
「みゃう」
『もきゅ』
「…………はぁ」

 まぁ、砂漠の国ではお留守番だったし……でも、ワインの試飲会に参加なんてできないよな。
 すると、エルミナとブランが言う。

「ま、いいんじゃない? 一人くらい増えても問題ないでしょ」
「だな。それより、早くメシにしようぜ」
「お前らな……まぁ、いいか」

 後でルシファーに、ルミナを連れて行っていいか聞いておこう。

 ◇◇◇◇◇◇

 その日の夕方。
 ルシファーが市長の仕事を終えてやってきた。
 挨拶もそこそこに言う。

「この家、好きに使っていいよ。今ベルゼブブの宿はけっこう高いからね……ここはお風呂もあるし、地下にはバーもある。のんびりしたい時とか、いつでも来てくれ」
「ありがとう。あと、明日の試飲会だけど……一人増えてもいいかな?」
「ん?……ああ、ルミナちゃんか」

 俺は、ルミナの頭を撫でる。
 ルシファーはすぐに察したのか苦笑し、頷く。

「ま、大丈夫だと思うよ。ボクがなんとかしておく」
「ああ、悪い」
「試飲会と言っても、ブドウの果実水とかもあるし、ワインに合うデザートとかも準備されてるから」
「そっか。よかったな、ルミナ」
「みゃうー」

 すると、黙って聞いていたエルミナとブランが言う。

「ねぇねぇ、地下にバーあるってホント!?」
「酒、飲みたいぜ!」
「あはは。自由に飲んでいいよ」
「やった! ブラン、行くわよ!」
「おう! へへ、悪いなアシュト。エルミナ借りるぜ!」

 二人は部屋を出て行った……おいおい、明日大丈夫か?
 俺はルミナを撫でる。

「さーて。アシュト、少し外で飲まない? いい店あるんだ」
「お、いいね。でも……」
「あはは。大丈夫大丈夫。ルミナちゃんも一緒ね」
「みゃう。あたりまえ」
『もきゅう』

 俺たちは、ベルゼブブでの夜を満喫した。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。 
 いよいよ、ワインの試飲会だ。
 俺たちは正装する。ちなみに、ルミナのドレスはルシファーが手配。黒を基調とした可愛らしいドレスを着たルミナは、とても可愛かった。
 さらに、モフ助にもリボンを巻いた。たっぷりお風呂で洗ったので心配ない。意外なことに、試飲会の会場は動物を入れてもいいことになっている。
 
「へへーん。アシュト、どう?」
「おお、似合ってるな。さすがミュディ」
「ミュディもだけど、私を見なさいよー!」

 エルミナのドレスは、エルミナに合わせたエメラルドグリーンのドレスだ。胸元を少し開いているのが何とも色っぽい。

「アシュト、オレはどうよ」
「……俺の感想、欲しいか?」
「いや全然全く」

 ブランは灰色、俺は深緑の正装。どっちもベルゼブブでは一般的な『スーツ』という衣装だ。ミュディはベルゼブブでの試飲会と聞いて、ちゃんと場所に合わせた服を作ってくれた。 
 ミュディに感謝していると、漆黒のスーツを着たルシファーがやってくる。
 ルシファーの背後には、ピチピチしたスーツを着ているダイドさんがいた。

「な、なんじゃあのデーモンオーガは……旦那や親父にタメ張るデカさじゃねぇか」
「ダイドさんだ。お前、喧嘩売るなよ」
「売らねーし!」
「あはは。さ、そろそろ行こうか」

 ルシファーが指をパチンと鳴らすと、一瞬で転移。
 転移したのは、広々とした部屋だった。
 何もない。絨毯やシャンデリアはあるが、それだけの部屋だ。

「ここが試飲会会場の『転移室』……つまり、転移魔法で転移するだけの部屋さ」
「へぇ~……っと、受付しないと」
「大丈夫。秘書がやってくれてる。ボクらはこのまま会場入りすればいいよ」
「あ、ああ」
「お酒お酒~♪」
「へへへ。酒、メシの次は女だ! イイ女はいるかねぇ~♪」
「モフ助、ブドウいっぱい食べるぞ」
『もきゅ』

 みんな試飲会を楽しみにしているようだ。
 さっそく、ルシファーと一緒に会場へ。
 転移室を出て、通路を進み……大きなドアの前で立ち止まった。
 ドアがゆっくり開くと……。

『ベルゼブブ市長。ルシファー様のご到着です!』
「「「「「ワァァァァ~~~ッ!!」」」」」
「え」

 なんと……拍手喝采。
 会場内には、大勢のお客様が……しかも、全員すごく高貴そうな雰囲気。
 よく見ると、会場内には大きなトラやクマがいる。しかも動物たち、リボンやらアクセサリーやらで着飾ってるし……どういうことだよ?
 いきなりの大歓声に、俺は硬直。
 ブランは手を上げてニヤニヤし、エルミナもテンションが上がっていた。
 ルミナとモフ助は、特に気にせず歩いて行く。
 そして、ルシファーが言う。

「ほらアシュト、ちゃんと挨拶しなきゃ」
「おま、黙ってたな? こうなるってこと」
「あはは。サプライズ大成功!」
「…………」

 こ、この野郎……覚えておけよ!
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