召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第二章

ウィリアム、そして左腕

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 ウィリアムと名乗った少年は、人差し指が銃身となり親指を立てて照準を付けていた。
 狙いはアルフェン。アルフェンは、右腕を巨大化させ盾のように構える。
 そして───衝撃がきた。

「っぐぅ───嘘だろ、なんで……!?」
「それはこっちのセリフだ。テメェ、なんだその腕……オレの弾丸を弾くだと?」

 驚きは、ウィリアムもだ。
 アルフェンの能力『硬化』は、魔人の炎だろうと銃弾だろうとびくともしないはず。それなのに、ウィリアムの撃った翡翠の弾丸は違った。
 アルフェンの『硬化』が揺らいだのである。

「まぁ、撃ちまくればいい」
「くっ……」

 ウィリアムは左手を構え、人差し指から翡翠の弾丸を撃ちまくる。
 アルフェンは防戦一方で近づけなかった……が、アルフェンは一人じゃない。

「マルコシアス、『フリーズ』!!」
『ウォウ!!』
「チッ……仲間か。悪いがテメェに用はねえ」

 マルコシアスの足元が凍り、ウィリアムに向かって地面が一直線に凍り付く。
 ウィリアムは射撃を中断し、跳躍した。
 そして、民家の屋根の上から左手を向ける。

「『狙撃銃スナイパー』」

 ウィリアムの左腕が、銃身が細長く伸びた。
 アルフェンの腕と同じ形状変化。アルフェンは、近くの木陰に飛び込んだ。
 そして、隠れた木の真上。銃弾が貫通した。

「じょ、冗談だろ!?」

 遠距離攻撃。
 さすがのアルフェンも反撃手段がない。
 隠れた木を硬化させ、ウィリアムのスナイプからなんとか隠れていた。
 そこに、マルコシアスに乗ったサフィーが屋根に飛び移る。

「マルコシアス、『ハウリング』!!」
『ウォォーーーーーンッ!!』
「っく……うぜぇ!!」

 マルコシアスの雄たけびを間近で聞いたウィリアムは耳を押さえ、銃身をサフィーに向けた。
 だが、マルコシアスは一瞬で離脱───そこに。

「『獣の拘束ジャガーバイト』!!」
「チッ」

 木陰から飛び出したアルフェンが腕を伸ばし、ウィリアムの左腕の銃身を掴んだのだ。
 距離は二十メートルほど。アルフェンは踏ん張り、掴んだ腕を思い切り握りしめた。

「せぇぇ、のぉぉぉぉりゃぁぁぁぁっ!!」
「なにっ!?」

 パワーは、アルフェンが上だ。
 伊達にタイタンをぶん投げていない。ウィリアムは屋根から引きずり降ろされるが、空中で身体を捻り着地。だが、アルフェンに腕は掴まれたままだ。
 さらに、背後からマルコシアスに乗ったサフィーがいる。氷の剣をいくつも生み出し、全ての切っ先をウィリアムに向けていた。

「やるじゃねぇか……学園なんぞに通ってる世間知らずのガキのくせに。でも、この程度でオレが負けるとでも?」
「はい。あなたの負けです……周りを見て何も思わないのですか?」
「あぁ? ……ッチ、そういうことか」

 周り。
 そう、ここは公園だ。ウィリアムが暴走した瞬間はもちろん、アルフェンとサフィーが襲われる瞬間も目撃されていた。住人が通報したのか、鎧を着た兵士や召喚士たちが集まってきた。
 そして、見知った顔が一人。

「全員動くな!! がっはっは!! 動いたらワシの拳骨……おお? なんじゃお前たちか」
「ダモクレス先生!!」
「アルフェン、サフィー。公園で召喚獣が暴れていると聞いてきたんじゃが……ふむ」
「あの、ダモクレス先生。こちらの方が」
「ふむ」

 ダモクレスたちの登場で、アルフェンはようやくウィリアムの左腕を解放した。
 ウィリアムも、暴れるのはやめたのか左腕が元に戻る。

「どうやら、三人に話を聞く必要がありそうじゃのぉ。おいアルノー、部下に指示をして公園の清掃を頼むぞい。お前はワシと来い」
「はっ」

 アルノーと呼ばれた若い騎士は、部下に公園の清掃を命じた。
 そして、手元に一本の剣……『装備型』の召喚獣を呼び出し、ウィリアムに向ける。

「妙な真似をしたら斬る」
「ふん、好きにしな」
「それと、貴様ら二人もだ。ダモクレス殿の知り合いかどうか知らんが、召喚獣を使っての暴徒鎮圧はB級以上の召喚士しか許されていない」
「それなら心配ないわい。こいつらはS級じゃからの!」
「……S級。そうか、お前たちが……」

 アルノーの視線は厳しくなり、剣を収めた。
 ダモクレスは苦笑し、アルフェンに言う。

「とりあえず、S級寮で話すかの。メテオールも話があると言っておったしのぅ」

 ◇◇◇◇◇◇

 ウィリアムは大人しかった。
 ダモクレスとアルノーが目を光らせていたせいかもしれない。だが、空気が重かった。
 寮に着くと、ウィリアムは談話室のソファに座る。

「おいお前、なんでこんなことしたんだよ。俺に話を聞きたいんだろ?」
「…………そうだな」

 やけに落ち着いていた。
 アルフェンはウィリアムの対面に座り、サフィーもアルフェンの隣に座る。
 アルノーはウィリアムの背後、ダモクレスは大きな欠伸をして椅子に座った。
 すると、寮のドアが開き二人の男女が。アルノーがすかさず敬礼をする。

「いやいや、遅れてすまんな」
「会議が長引いてね……おいダモクレス、何度も言ってるけど会議をサボんじゃないよ」

 メテオールとガーネットだ。
 ダモクレスは『がっはっは!!』と笑ってごまかした。
 
「さて、アルフェンとサフィー嬢に話があったんじゃが……何やら、とんでもないことになったようじゃの」

 メテオールの視線はウィリアムへ。
 ガーネットは、興味津々といった感じだ。

「報告は受けた。あんた、寄生型召喚獣を持ってるそうだね。くふふ、アルフェンが右腕、あんたが左腕……これは偶然かねぇ」
「お偉いさんがこんなに集まるとはな。ちょうどいい……オレの質問に答えろ」

 ウィリアムは、全員を見渡しながら言った。

「この学園に魔人がやってきた。その魔人はどんな奴だった」

 その質問に答えたのはアルフェンだ。

「男の、二十歳くらいの魔人だ。暴食の魔人アベルってやつだよ」
「……アベルか。クソ、外れだ」
「はずれ? お前、何を探しているんだ?」
「……お偉いさん、他の魔人がどこにいるとか、情報はないか?」

 ウィリアムはアルフェンを無視。メテオールに質問する。
 メテオールは頬をポリポリ掻き、にっこり笑った。

「もちろんある。だが、タダでは教えられんのぉ」
「そうかい───じゃあ、弾丸でいいか?」

 ウィリアムは左手をメテオールに向けた。
 同時に、アルノーが剣をウィリアムに突きつけ、アルフェンも右手を、サフィーも氷の剣をウィリアムに向ける。
 ダモクレスは笑顔を浮かべ、ガーネットは目を閉じていた。
 メテオールは、銃口を向けられても笑顔だった。

「きみが何を求めているのか、その理由を聞かせてくれんかね?」
「……」
「悪いようにはしない。きみの事情にも深入りしない。欲しい情報は提供するし、多少なら支援してやってもかまわん。きみがなぜ魔人を探すのか、その理由を聞かせておくれ」
「……ッチ。クソが」

 ウィリアムは銃口を下ろし、ソファに座った。
 アルフェンたちも武装を解除。ウィリアムは渋々話し出す。

「オレが探している魔人は女だ。名前はフロレンティア……オレの村を滅ぼした魔人だ」
「フロレンティア……『色欲』の魔人の名前だね」

 ガーネットは目を細める。
 ウィリアムを見て納得したようにうなずいた。

「そういうことか……あんた、フロレンティアに『生かされた』んだね?」
「……知ってんのか?」
「ああ。やつの性癖さね。フロレンティアは町や村を襲う場合、必ず一人だけ残す。しかも……その町や村で一番の男前をね。そいつの前で家族や大事なモンを全部壊し、復讐心を植え付け、自分に復讐しに来た男を嬲り殺しにするのが趣味のゲスさ」
「そうだ。家も家族もみんな失った……オレだけ残された。オレの目の前で父さん、母さん……妹も殺された」

 アルフェンとサフィーは、何も言えなかった。
 だが、アルフェンにはその気持ちがわかった。ウィリアムもまた、失ったのだ。

「オレも、オレの召喚獣も死にかけて……ヘンリーがオレを生かしてくれた。その身と引き換えに、この左腕を残してな……」
「あ……」

 アルフェンは反射的に右腕を掴む。

「この力があれば、フロレンティアを殺せる。だから教えろ……奴はどこにいる!!」
「……残念ながら、わしらが掴んだ魔人の情報はフロレンティアではない。だが……その魔人を狩れば、フロレンティアにたどり着けるやもしれん」
「…………」
「ウィリアムくん、だったな? どうかね、この学園に入学しないか? きみもアルフェンと同じ寄生型。それに……境遇もよく似ておる」
「なに?」

 アルフェンは右腕を押さえて俯き、ウィリアムはアルフェンを見て何かに気付いた……不思議と、自分と似たような雰囲気を察したのかもしれない。
 ウィリアムは、考えこむ。

「わしが掴んだ情報は断片的なものじゃ。その魔人を相手にするにはまだ時間が必要……どうじゃ? その間にでも、この学園を拠点にして学ぶというのは?」
「……いいぜ。乗ってやるよ」
「よし! では今日からきみはS級召喚士じゃ! アルフェン、サフィー嬢、それでいいかな?」
「……私は、構いません」
「……俺も」
「……ふん」

 こうして、S級召喚士にウィリアムが加わった。
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