召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第二章

お出かけしましょう

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 アルフェンが寮に戻ると、サフィーは談話室で紅茶……ではなく、ホットミルクを飲んでいた。
 私服に着替えており、パジャマで猫のようにソファで丸まっていたのが嘘のようだ。髪も整え、表情もキリッとしている。さすが公爵家の令嬢だ。
 サフィーは、アルフェンを出迎えた。

「お帰りなさい。どちらへ行ってたのですか?」
「生徒会……まぁ、寝てたしな」

 行先は伝えたが、やはり聞いてなかったようだ。
 アルフェンはため息を吐き、ソファへ座る。

「……何かあったのですか?」
「ん、まぁ……その、生徒会に喧嘩売っちゃった」

 サフィーは「は?」みたいな顔になり、アルフェンの向かいに座る。
 ホットミルクはすでに空だった。

「あの、何をしてきたのですか?」
「呼び出された。んで、頭にくることばかり言うから、言いたいこと全部ぶちまけてきた」
「……生徒会ですよね?」
「ああ」
「……あの、アルフェン。生徒会がどのような場所だかご存じなのですか?」
「この学園、生徒たちの頂点だろ」
「そうです」

 アースガルズ召喚学園生徒会。
 この学園最強の八人。『アースガルズ・エイトラウンズ』は、教師と同等の権力を持っている。
 生徒会長リリーシャ
 男子副会長。
 女子副会長。
 生徒会書記。
 生徒会会計。
 生徒会庶務。
 生徒会広報
 生徒会風紀委員長ダオーム。
  
 この下に、生徒会補佐としてB級召喚士たちがいる。
 B級一期生、二期生、三期生、四期生から十人ずつ、成績上位から選ばれ所属するのが学園の決まりだ。
 アルフェンは、サフィーに聞く。

「そういえば、サフィーは一期生主席だろ? 生徒会補佐はいいのか?」
「私、入学式が終わってすぐに寝込んでたので……」
「あ、ああごめん。そうだった」

 ちょっと落ち込むサフィー。
 アルフェンは話を続ける。

「まぁ、俺たちはメテオール校長が決めて作った『S級』だ。生徒会だろうが何だろうが、俺たちの存在を認めないとか知ったことじゃない。言わせておけ」
「そうですね。権力差で私たちの勝ちですね!」
「お、おお……ちょっと意味わからんけど」

 サフィーはにっこり笑った。
 そして、思い出したように手をポンと合わせる。

「そうだ。今日の授業はお休みだそうです。おばあ様とダモクレス様、アースガルズ王城にご用があるみたいです」
「そっか。じゃあ寝るかな」
「待ってください!!」
「うおっ」

 サフィーはアルフェンに向かって右手を突き出した。
 いきなりだったので驚くアルフェン。

「あの、お暇でしたら、城下町に行きませんか? 私、城下町に出かけたことがあまりないので……」
「俺も殆どないぞ」
「え……で、でも、休日とか、お友達と出かけたり……」
「F級は十日に一度、五時間しか外出の許可が出ないんだよ。しかも私服外出は認められてないし、制服着用の上で、外出理由を学園に提出しないといけなかったからな」

 ちなみに、これだけ外出に縛りがあるのはF級だけ。まるで、学園の恥を外部に晒すのを拒むための規則のように感じられた。
 なので、基本的にF級の生徒は外出しなかった。お金もあまり持っていない生徒ばかりだったし、自室で本を読んだり、実家から持ってきたボードゲームやカードを使って寮で遊んでいた。
 
「じゃ、じゃあ!! 一緒にお出掛けしましょう!!」
「えー……」
「大丈夫です!! 私たちには強大なバックが付いています。書類とか許可とかすっ飛ばして外出しちゃいましょう!! 権力とは使える時に使うのです!!」
「お前黒いな……さすが公爵令嬢。裏の顔は真っ黒でした」
「ち、違います!! ああもう、町に行きましょう!!」
「わ、わかったよ」

 アルフェンは自室で私服に着替え、ポケットに財布を入れた。ちなみに、魔人討伐の報奨金という名目で、メテオール校長から少なくない金一封をもらった。
 寮の外には、すでにサフィーが待っていた。

「では参りましょう!! 馬車の手配を……」
「いや、歩きでいいだろ。お前も元気になったんだろ? 身体使え身体」
「なるほど……わかりました!! 歩きで行きましょう……ふふ、なんだかこういうの初めてでワクワクします!!」

 サフィーのテンションがいつもより高く、なんとなく疲れる予感がしたアルフェンだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 学園の門で、少しもめた。
 学園の正門には守衛がいるのだが、外出許可証を求められたのだ。
 もちろん、そんなものはない。
 そして、サフィーのキャラが変わった。

「外出許可証がない者を通すわけにはいかん」
「あら、そんなこと言っていいのかしら? 私と彼を知らないの?」
「何……?」
「|剛ストレングス』メテオール校長が設立したS級召喚士を知らないのかしら? そして、私と彼は『女教皇ハイプリエステス』ガーネット、『戦車チャリオッツ』ダモクレスの教え子よ? この国で最も偉大なる二十一人の教え子に、そんな態度でいいのかしら……? あなたの名前、あと守衛の責任者はいるかしら?」
「ちょちょ、ま、待った。待ってください!!」
「待つ……? 私と彼の外出を邪魔しなければ済むだけなのに、待つ?」
「わわ、わかりました!! お通りください!!」
「ふふ、ありがとう」

 サフィーはにっこり笑い、アルフェンは守衛に気の毒な視線を送り学園の敷地外へ。
 しばらく歩き、アルフェンは言う。

「腹黒だな」
「何のことでしょう?」

 サフィーはいたずらっぽく微笑んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 二人が向かったのは、城下町のメインストリートだ。
 様々な店が数多く並ぶ通りで、飲食店から召喚獣に着せる服まで何でも売っている。かなりの広さを誇る通りで、まともに回ると一日ではとても足りない。
 
「とりあえず、飯食おうぜ」
「はい。甘い物のお店ですね!」
「いや、飯って甘い物なのか……?」

 サフィーは、病気が治ってから元気になった。こちらが真の姿なのだろう。
 とりあえず、アルフェンはサフィーにしたいようにさせることにした。快気祝いということにして、一日付き合ってもいいかと思うアルフェン。

「美味しいケーキのお店を探しましょう。あと、お土産にも買いますよ!」
「だな。冷蔵庫を補充してくれるのは助かるけど、甘い物とか入れてくれないもんな」

 アルフェンとサフィーが授業に出ている間、メテオール校長が手配した業者が冷蔵庫に食材を入れてくれる。そして、最近は最低限の掃除などもしてくれる業者も入るようになった。

「ふふ。私……誰かとこうして出かけるの、初めてなんです」
「そうなのか?」
「はい! 同い年の、しかも男の子と……」

 アルフェンは、ようやく気が付いた。
 これは、俗に言う……『デート』なのでは、と。

 ◇◇◇◇◇◇

 とある飲食店。
 一人の少年が、串焼きを数本買って齧っていた。
 濃い緑色の髪は中途半端に長く、紐で括っている。
 串焼きを齧り、近くのベンチに座った。

「…………」

 ベンチには、古ぼけた新聞が。
 見出しには『召喚学園、魔人に襲われる! 魔人を討伐したのは一体誰なのか!』という文字が書かれており、それを見た少年はギリリと歯を食いしばる。
 
「魔人……」

 少年は、怒りに震えていた。
 そして、荒くなった呼吸を整える。
 少年には目的があった。そのためには、やるべきことがたくさんある。

「……待っていろ」

 少年は、自分自身に言い聞かせた。
 必ず、なさねばならないことを胸に刻み、左手を胸に当てる。
 そんな時だった。少年の隣のベンチに誰か座ったのだ。

「あ!! お休みのことですっかり忘れてました!! アルフェン、校長先生が今日の夜、お話があるそうです!!」
「いや、それ大事だろ。用事って?」
「はい。アルフェンのお話を聞きたいそうです」

 少年と同世代くらいのカップルだった。
 校長という単語から、二人は召喚学園の生徒。

アルフェンが・・・・・・倒した魔人・・・・・について・・・・話を聞かせてほしい・・・・・・・・・そうです・・・・

 少年の呼吸が、ピタリと止まった。
 魔人を、倒した?
 少年は、ゆっくりと隣を見た。

「───」

 黒髪、赤目の少年───アルフェンだった。
 同世代。魔人を倒した……少年の心に、火が付いた。
 そして……少年は言った。

「おい、お前……魔人を倒したの、お前なのか?」
「え、あ……おいサフィー、バレたぞ」
「き、機密でしたよね……あの、申し訳ありません。このことは内緒で……」
「お前が魔人を……そうか、じゃあ……聞かせてもらおうか」
「「え?」」

 少年は立ち上がり、アルフェンに左手を向けた。
 親指を立てて、人差し指を向ける。まるで銃のように。
 アルフェンの眼が、目の前にいる少年の《何か》を捕らえた瞬間だった。

「───っ!! サフィー、逃げろ!!」
「え?」
 
 アルフェンは見た。
 隣に座っていた少年の左腕・・が、変わっていくのを。
 少年の左腕は、ビキビキと鮫肌のように盛り上がっていく。色は濃い緑で、人差し指が大きくなり筒状へ───まるで『銃』のように。
 アルフェンは瞬間的に察した。
 
「まさか───『寄生型』!?」

 さらに、この『左手』は───何かを『発射』する力だ。
 アルフェンは右腕を変化させ、サフィーを突き飛ばし、右腕で自分の身体を隠す。
 衝撃がきた。

「ぐぅぅっ!?」
「なに……? お前、その右腕……は、オレと同類かよ」

 少年は、かぶっていた帽子を投げ捨てた。
 そして、変化した左腕をアルフェンに突きつける。

「なんだ、お前……その左腕」
「はっ、お前が魔人を殺った召喚士か。聞かせてもらうぜ……テメェがやった魔人の話をなぁ!!」
「……!?」

 ビキビキと、少年の左腕が脈動する。
 アルフェンは、戦いが避けられないと感じ構え、傍ですでにマルコシアスを召喚したサフィーに言う。

「サフィー、いけるか」
「は、はい!! よくわかりませんが……この方、正気じゃありません。鎮圧しないと!!」
「お、おお。なんかお前、強くなったな」
「さぁ、いきますよ!!……の、前に。あなた、何者ですか?」

 少年は、左腕を構えて名乗った。

「オレの名はウィリアム。魔人を殺すために来た!! テメェ、オレの魔人を勝手に殺しやがって……代わりにテメェをブチのめして、洗いざらい話してもらうぜ!!」
「…………よくわかんねーけど、やるなら相手してやる」

 アルフェンの右腕、ウィリアムの左腕が、今まさに激突しようとしていた。
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